2026年6月1日月曜日

『One Step Closer』は失敗作か?マイケル・マクドナルド時代のドゥービー・ブラザーズが残した隠れたAOR名盤を徹底解説

970年代のロック・シーンを牽引し、アメリカン・ロックの象徴として君臨したザ・ドゥービー・ブラザーズ(The Doobie Brothers)。彼らの歴史において、激動の過渡期に生まれた9枚目のオリジナル・アルバムが、1980年発表の『One Step Closer(ワン・ステップ・クローサー)』である。

本作は、グラミー賞を総なめにした前作『Minute by Minute(ミニット・バイ・ミニット)』の世界的大ヒットを受け、大きな期待の中でリリースされた。しかし、バンドはこの時期を境に解散への道を歩むことになる。一見するとバンドの終焉を予感させる影の薄い作品と捉えられがちだが、洗練された音楽性とAOR(Adult Contemporary)としての完成度は、いま改めて評価されるべき輝きがあると思う。



メンバー交代とマイケル・マクドナルド色の深化

本作を語る上で外せないのが、直前に敢行された大幅なメンバーチェンジである。バンドの黄金期を支えたギタリストのジェフ・バクスターと、創設メンバーであるドラマーのジョン・ハートマンが脱退。代わって実力派ギタリストのジョン・マクフィーらが加入した。

この変革により、バンドの主導権は完全にマイケル・マクドナルドへと移行する。初期の泥臭いサザン・ロックやツイン・ギターのドライブ感は影を潜め、マイケルのスモーキーな歌声と都会的なキーボード・サウンドを前面に押し出した、洗練されたブルー・アイド・ソウル/AOR路線へと完全にシフトした。

アルバムの音楽的特徴と前作との違い

プロデューサーには、黄金期を共に築いてきたテッド・テンプルマンを再び起用。さらに、前作に引き続き女性シンガーのニコレット・ラーソンがコーラスとして参加している。

しかし、前作『Minute by Minute』と本作との間には、楽曲の「魅せ方」において決定的な違いが存在する。前作ではニコレット・ラーソンとのデュエット風の掛け合いが楽曲のキャッチーなフックとなり、リスナーに強烈な印象を植え付けた。一方で、本作では徹底したバッキング・コーラスとしての起用となっている。

この職人的かつ抑制されたアプローチは、アルバム全体の仕上がりを非常にスマートなものとした反面、一聴したときの印象や、個々の楽曲が持つ「個性」をやや希薄にしてしまった感は否めない。アルバムとしてのクオリティは極めて高いものの、この緻密すぎる作り込みが、結果としてバンドを解散へと向かわせるクリエイティブの限界点を示していたとも言える。

主要楽曲の分析

「Real Love(リアル・ラブ)」 アルバムからのファースト・シングルであり、全米チャート5位を記録した本作のハイライト。マイケル・マクドナルド節が全開の洗練されたミディアム・ナンバーである。洗練されたコード進行と、バッキング・ボーカルの美しいレイヤーが重なり合う、AORの教科書とも言える名曲だ。

「One Step Closer(ワン・ステップ・クローサー)」 アルバムのタイトル曲。新加入のジョン・マクフィーとコーネル・デュプリーによる軽快なギター・カッティングが心地よい、軽快なファンキー・チューンである。ポップでありながらも、都会的な哀愁を帯びたメロディが耳に残る。

「Keep This Train Rollin'(キープ・ディス・トレイン・ローリン)」 初期のドゥービー・ブラザーズが持っていた「疾走する列車」のイメージを、マイケル・マクドナルド流の洗練されたファンク・ソウルへ昇華させた楽曲。ホーン・セクションを大胆にフィーチャーし、グルーヴィンなベースラインが全体を牽引する。

 

ワン・ステップ・クローサー
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