偉大なソングライター、キャロル・キングの軌跡
キャロル・キングは、1960年代に夫のジェリー・ゴフィンとともに「ロコ・モーション」や「ナチュラル・ウーマン」など数々のヒット曲を量産した、ポップス界屈指の天才ソングライターである。1970年代に入るとシンガーソングライターとして独立し、1971年のアルバム『Tapestry(つづれおり)』でグラミー賞4部門を受賞、世界的な大ヒットを記録した。
彼女の音楽は、親しみやすいメロディと、ピアノの弾き語りを中心とした素朴で温かみのあるサウンドが特徴である。しかし、その成功に甘んじることなく、新たな音楽性を模索して生み出されたのが、通算5作目のアルバム『Fantasy』であった。

アルバム『Fantasy』の音楽的特徴:ニューソウルへのアプローチ
1973年にリリースされた『Fantasy』は、当時アメリカの音楽シーンを席巻していたマーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーらに通じる「ニューソウル」やファンクのエッセンスを大胆に取り入れた意欲作である。
本作の最大のプロットは、アルバム全体がひとつの物語のようにつながる「コンセプトアルバム」の形式をとっている点にある。従来の瑞々しいフォーク・ロック路線から一歩踏み出し、ホーンセクションや強固なリズム隊を導入した、グルーヴィーで都会的なサウンドを展開している。
主要楽曲の分析と名ギタリストの共演
『Fantasy Beginning』と『Fantasy End』
アルバムは『Fantasy Beginning』で幕を開け、『Fantasy End』で幕を閉じる。この冒頭と結びの楽曲がアルバム全体の輪郭を形作っている。特にオープニングの『Fantasy Beginning』は、キャロル・キングの原点ともいえるピアノの弾き語りから始まり、聴き手を一気に彼女の「幻想(ファンタジー)」の世界へと引き込んでいく。
『道(You've Been Around Too Long)』とデヴィッド・T・ウォーカーの魔法
弾き語りの導入部に続いて tour de force(力作)として流れるのが、ニューソウル色の強い『道(You've Been Around Too Long)』である。
この楽曲の聴きどころは、イントロから炸裂する名セッションギタリスト、デヴィッド・T・ウォーカーのプレイにある。彼のトレードマークである、まるで星屑が煌めくような繊細でエモーショナルなオブリガートは、楽曲に圧倒的な華やかさと深みを与えている。
ODE RECORDSから復刻されたデヴィッド・T・ウォーカーの作品を追いかけていた僕は、この共演をきっかけにキャロル・キングの音楽的な懐の深さを「再発見」したのだった。
総評:『Tapestry』の先にある「再発見」されるべき傑作
『Tapestry』が彼女のパーソナルな内面を紡いだ作品であるならば、『Fantasy』は外部の優れたミュージシャンたちの才能を吸収し、自らの音楽性を拡張した作品と言える。
デヴィッド・T・ウォーカーをはじめとする一流のプレイヤーたちが彩るサウンドは、今聴いても全く色褪せることがない。

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