2015年8月24日月曜日

Mr.Children 2015「未完ツアー」を札幌ドームで観てきたよ【ちょいネタバレ】

Mr.Children 2015未完ツアーを札幌ドームで観てきた。
相変わらず最高のパフォーマンスだった。
新作「REFLECTION」からの楽曲を中心に据えながらも、重要な言葉をもった曲を随所に配置して、まるで物語を構成するようにステージが進行していく。

いつもそうだが、映像がそれを完璧にサポートしている。
演奏の様子を追うだけでなく、楽曲の持つメッセージを写真やアニメーション、そして言葉そのもので補っていく。
今回はエフェクティブな仕掛けも用意されており思わず見入ってしまった。
これからコンサートに参加される方はお楽しみに。

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はじめてMr.Childrenのライブを観たのは、95年のレグレス・プログレス・ツアーで、東京ドームで観た。


まだ電話がつながるかどうかがチケット確保の決定的な分水嶺だった時代。幸運にも電話がつながり、チケットを取ることができた。
アルバム「深海」全曲を曲順通り演奏し、その前後をヒットシングルで埋めるという意欲的なコンサート構成で、本当に素晴らしいステージだった。

その後、どうやってもチケットは取れなくなり、2001年のポップ・ザウルス・ツアーの時、福岡の同僚がチケットを取ってくれて福岡で観ることができた。
それまで、完成度の高いアレンジをステージでも再現するタイプのバンドだったが、この時は柔軟なアレンジで楽曲の新しい側面を見せてくれる成熟が感じられた。

彼らのライブは、本当に完成度の高いエンターテインメント性を備えながら、しかしロックバンドとしてのスポンテニアスな躍動感を失わない演奏力が保たれていて、いつも心打たれるものだから、チケットが取れない時も映像商品を買って彼らのステージを堪能していた。


しかしアルバム「HOME」以降の彼らの音楽には、僕には強い閉塞感とその中で弛緩していく感覚のようなものが感じられた。
ディスカバリー・アルバムからQアルバムにかけて、新しいギターサウンドの構築を土台にして、デジロックというカテゴリーの創造を目論んでいるような、そんな気概が感じられたが、シフクノオトでそれを完成させて以降、少しづつだがその「緩み」が彼らの音楽を侵食していたように感じられた。

それが、ある日ネットで流れてきた新曲「足音」のPVを観た時、なにかそういう緩みが払拭されて、本来彼らが持っていた「バンド」の音が聴こえてきたように思った。
現在の彼らの音を聴いてみたいと思った。


しかしそう思って簡単にチケットが取れるほど甘くはない。
最初のリフレクションツアーのチケット争奪戦に5秒で敗れた僕は、またDVD買うかと諦めていたが、東京の友人が抽選に当たったから一緒に行こうと言ってくれて今回の「未完ツアー」参戦となった。

ここ2年位はツアービデオも買っていなかったので、昔のDVDを見なおして懐かしいなあ、イノセント・ワールドみんなで歌うんだよなあ、とか思い出していた。

で、ここからちょっとだけ【ネタバレ】だが、終わりなき旅がシンガロングだった。
会場全体に響く大合唱。
ゾクッとした。
札幌も捨てたもんじゃない。

こりゃイノセントもすごいぞ、と思っていたら豈図らんや、桜井くんが一番の頭から歌い出すではないか。
おお、今回は歌ってくれるんだな、と油断していたら、最後のリフレインで、
「お待たせ、札幌!」とキタ!
でも油断してるから憶えてたはずの歌詞が出てこない。
まいったなあ。せっかく準備してきたのに。
しかし、やはりこの曲の最後の畳み掛けていくところの創意に富んだメロディの変形はやはり見事で、この曲の紹介で桜井くんが「バンドの歴史をこめて」と言った意味がよくわかる。
名曲は他にもたくさんあるが、やはり音楽的に見た時の代表曲はこのイノセント・ワールドということになるだろう。

2015年8月18日火曜日

フューチャーメンのタイムトラベル~キャプテン・フューチャー第八巻「時のロストワールド」

いよいよ第八巻「時のロストワールド」である。
なにがいよいよかと言うと、タイムトラベルものがついにキャプテン・フューチャー・シリーズに登場なのである。

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前巻で、最大の敵ウル・クォルンを斃してしまい、太陽系に完全な平和をもたらしてしまったキャプテン・フューチャー。こともあろうにその平和に退屈している。
そこに、遙か一億年の過去から救助を求める声が!
そして喜色満面にフューチャーメンは過去への冒険に旅立つというわけです。

世にタイムトラベルSFはその黎明期から数多く発表されています。

最も代表的なものはもちろん、ウェルズの「タイムマシン」でしょう。
主人公の科学者「タイムトラヴェラー」は、
一次元は点、二次元は線、三次元は空間。
しかし物体が存在し続けている限り、精確な事物の特定には「時間」を変数として考えることが必要になる。つまり時間は4つ目の次元であり、だから我々はその中を移動することができると、強弁した上に、普通では移動できない次元の中を移動可能にする技術的背景に関しては特に説明しないまま、実際に移動するためのマシンを作ってしまいました。

その他のSF作品も大同小異ですが、さすがハミルトンはひと味違います。
時間の流れは原子の中の電子の軌道速度が作っているから、これを速めれば未来に行けるし、逆回転すれば過去に行けるという科学的背景を「創造」してしまいました。
無茶苦茶ですが、SF作品としては不思議な説得力があります。堅固な虚構の科学です。

ある時期までのタイムトラベルSFは、わりと自由にオリジナリティのある時間旅行の方法を考えてきたのですが、アインシュタインが光速で飛ぶと時間が遅くなるなんてことを言い出したもので、多くのSFが相対性理論をベースによりリアリティのあるSF作品を作るようになっていきますが、そんなある日、本当に自分はタイムトラヴェラーである、と宣言する男まで現れました。
ご存知ジョン・タイター(詳しくはリンク先のwikiを)です。

このジョン・タイター騒動を素材として取り込んだのがゲーム作品シュタインズ・ゲートで、アニメ化もされたこの作品が最も手っ取り早く、今人類が実際に取り組んでいる、実現可能性のゼロでないタイムトラベルの全体像にアクセスできる経路だと思います。

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またタイムトラベルはラブロマンスと相性がいいというのが定説ですが、本作ではオットーまでが一億年前の地球娘と恋に落ちちゃうんですから、間違いないです。
カーティスについても、物語進行の都合上ジョオン・ランドールは今回お休みですが、その代わり依頼主のお嬢さんといい感じになってました。
一億年前の太陽系に恋に落ちる対象の人類がいる、というところにもずいぶん前の巻から科学的伏線を施してあってここがまた物語の盛り上がりどころになってます。


本当に盛り上がりどころ満載の本作のテーマは、滅亡に瀕した科学の星「カタイン」が、生き残るために火星を滅ぼして移住するか、コールドスリープで遠い別の惑星を目指すかという政治闘争になってます。
近年では「翠星のガルガンティア」で虚淵玄が採用した基本構造ですね。いつか人類もこのようなことを考える日が来るのでしょうか。


2015年8月17日月曜日

2015年のDisney Girls(1957)

今朝、ラジオから聴き覚えのあるメロディが。
でもどうしても誰の歌か思い出せなかった。
女性ボーカルで歌われているが、記憶の中の歌声は男性のものだった。

歌詞の中に、断片的に聞き取れる部分がある。
テネシー・ワルツ、ファンタシー・ワールド、ディズニー・ガールズ・・

あ、ディズニー・ガールズ。きっとこれがタイトルだと思い当たる。
歌が終わり、DJのタック・ハーシーが「アン・サリーのディズニー・ガールズ」でしたと教えてくれた。

それでもまだ誰の歌か思い出せない。
印象的なコードチェンジ。メロディにも大きな起伏があって、これ歌えたら楽しいだろうなと思ったなんてところまで思い出すのに、肝心のアーティスト名が出てこない。

さっさと降参してGoogle検索すると、すぐにビーチ・ボーイズのサーフズ・アップ収録の曲とわかった。

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そこまでわかっていろんなことを思い出す。
村上春樹さんの「村上ソングス」でこの曲を知ったこと。

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それで、ビーチ・ボーイズの中期作品がいっせいにリマスターされたとき、まとめて買っておいたのにちっとも聴いていなかったサーフズ・アップを引っ張りだして聴いてみて、こんないい曲がはいっていたのか、とびっくりしたこと。

精神的にまいっていたブライアン・ウィルソンのかわりに加入したブルース・ジョンストンが作った曲ですが本当にいい曲だと思います。
改めて調べてみるといろんな人がカバーしているようですが、ラジオで聴いたアン・サリーのカバーは本当に良かったです。

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リアリティーなんてどうでもいいさ / そんなのつまらないじゃないか / おとぎ話とディーズニー・ガール / 僕はそんな世界に帰っていこう
この曲が書かれた1968年は、キング牧師が暗殺され、公民権運動が大きなうねりになり、またヴェトナム戦争が泥沼化していく「テト攻勢」でアメリカ国内の反戦運動に火がついた年。

僕は捧げるべき愛情を見つけ / 生きていくべき場所をみつけた / 僕はもうどこにもいかないだろう 
このような当たり前の日常を、お伽話と対置しなくてはならない現実とはなんだろうか。
心のなかにある夢の様な平穏を、 どうして僕らの長い歴史が作り出してきた知恵や技術が実現してくれないのだろうか。
1968年に書かれたこの曲にはDisney Girls(1957)と古き良き時代の年号が付記されている。
2015年に生きる僕らは、この時ブルース・ジョンストンが感じた矛盾を解決するどころか、より深刻なものにしているように思われてならない。

2015年8月15日土曜日

歴史ミステリの新しい傑作~ポール・アダム「ヴァイオリン職人の探求と推理」

1999年のクリスマスはクレモナで過ごした。


この「ヴァイオリン職人の探求と推理」には、その時の記憶を呼び覚ます精緻な描写が溢れている。
見事な筆力だ。

バイオリンの裏面史も実にイキイキと書かれていて引き込まれる。
ただ殺人事件についてのプロットには不十分なところがあると思う。事件自体の複雑さや意外さに不足はないが、探偵の作法には習 熟していないようだ。

素人探偵だから、ということを言っているのではない。
犯人を思いつきで追い詰めることは、どうせ物語なんだからなんだって作者の思い通りになるもんねと、作品から読者を閉めだしてしまうことになる。
読者との共同作業でなくてはならない。
そのための伏線なのだ。

それでもこの本の読後感の幸せは一級品のそれだ。
舞台が大好きなクレモナだったから、ということだけではないと思う。


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ミュージック・ライフ誌選定ロックベスト100の看板に偽りなしの名盤〜ボズ・スキャッグス「マイ・タイム」

中古レコード店でボズ・スキャッグスのサード「マイ・タイム」を買ってきた。
帯には、ミュージック・ライフ誌が選定したロックベスト100の一枚と書いてあった。
A1に収録されたダイナ・フローはベスト盤にも収録されている有名曲だが、あとは落ち着いたR&B系の曲が多い。

カバーでは、アル・グリーンの大ヒットアルバム「LET'S STAY TOGETHER」収録のOLD TIME LOVINが。
原曲と聴き比べると、ボズの声で歌われるとなんでも洗練されてしまうというマジックを体感できるが、この頃はまだサウンドがAOR的ではなく、そこがまたいいと思う。


さらにB面には一曲目にC.Toussaint、二曲目にA.Toussaintのクレジットが。

クレジットはこのレーベル面にしか書いてない。こういう時はライナーで補ってほしいよね

二曲目のFREEDOM FOR THE STALLIONは、エルヴィス・コステロとトゥーサンのデュエットアルバム「THE RIVER IN REVERSE」 に収録されていたので知っていたが、

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もとはリー・ドーシーというニュー・オーリンズのシンガーに提供された曲だそうです。


 

これはまたずいぶん違いますな。
Youtube検索してたら、スリー・ドッグ・ナイトがカバーしてるのも見つけた。
これもなかなか。

 

アラン・トゥーサンはいい曲書くなあ。

で、一曲目にあったC.Toussaintのクレジットですが、英語版のwikipedia見てたら、お父さんのクラレンスとお母さんのナンシーの名前を時々自分の作品にクレジットしてたらしいです。(英語力が拙く、自信はないのですが)
wikiにも、このHello My Loverという曲は1972年にクラレンスにクレジットしたと書いてありました。

自作曲も全体にこういうトーンですが、ボズらしいアツさを湛えた曲もあり、全体に渋カッコいい感じ。
長く愛聴できるアルバムと見た。
ミュージック・ライフ誌のロックベスト100の看板に偽りはなかったようです。 

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