2024年3月20日水曜日

『DUNE 砂の惑星 PART2』を観てきたよ

『DUNE 砂の惑星 PART 2』
公開日に駆けつけたかったが叶わず、本日観てまいりました。 
 

 
今回『PART 1』もアマプラで観直して準備万端で臨んだ。
 
1・2とも2時間半を超える大作で、映画館で観るには少々しんどい尺だが、あの難解なドラマをよくぞここまで明快でスペクタクルに描いたものだ。
いい意味で『砂の惑星』マニアではない感じ。 
レベッカ・ファーガソン演じるポールの母レディ・ジェシカが美しすぎて、ちっとも魔女に見えないのと、フローレンス・ピューの皇女イルーランが上品すぎてちっとも高慢チキでも憎たらしくもなかったのも、今回の映画の「らしさ」のような気もする。
毎回出ればすべて攫っていくクリストファー・ウォーケンが今回あまりオーラが出ていなかったことは気になった。体調など崩していなければいいのですが。 
 
デヴィッド・リンチ版と比較してみれば物語の改変度は小さなもので、映像技術の進化の貢献度も大きいだろうが、ポール・アトレイデスが救世主になる過程に物語を絞りこめたところに勝因があったように思う。 
ダンカン・アイダホの描かれ方や、スパイスの宇宙航行での使われている様子とか、原作ファンなら、そこ大事なとこじゃん!と言いたくなってしまうこだわり要素を、わりとサラッと流すことで、リンチ版の二の舞を避けている(失礼!)のだろう。
 
時代的な変化もあるのかもしれない。
原作の新訳刊行時に再読した時は、キリスト教とイスラム教の歴史的軋轢を下敷きにしたものという認識だったが、今回はロシア的価値観と西欧との相剋に似たものを感じた。
ハルコンネン当主の名がウラディミールであったことも多少影響しているのだろうか。 
 
それにしてもあまりにもよくできた脚本故なのか、帰ってから酒井先生の新訳をパラパラめくっていくと、あんなに難解だと思っていた原作がスーッと頭に入ってくるではないか。 
新訳がよくできているというのもあるが、やはり映像の力は大きい。

現在原作の新訳化も順調に進んでおり、映画公開に合わせて、第3巻『砂丘の子供たち』も無事刊行された。
 
画像クリックでAmazonの商品ページにリンクします

 今回の映像化で、『スター・ウォーズ』も『風の谷のナウシカ』も、この作品世界から非常に大きな影響を受けたんだなあと改めて認識できた。
今回の新訳シリーズは、できればフランク・ハーバートの原作全作品を刊行してもらいたいものだ。

2024年3月10日日曜日

NHK-BS版『舟を編む』と『新明解国語辞典』の語釈について

NHK-BSで現在放送中の『舟を編む』がとても良い。
 
エライザ好きということもあるが、『舟を編む』原作が持つ「言語」と「世界」との関係への深い洞察が、今回の映像化にも貫かれているところに好感を持っている。
 
アニメ化、実写映画化と映像化が続いた作品だが、NHKドラマ版がもっとも原作改変度が大きいようだ。もっとも原作に忠実な映像化の(だと思う)アニメ版を再見してみると、改めてアニメ的文脈での巧みな表現に溢れていて、結局一気見してしまった。
今回改めて感じたのは香具矢役の声優坂本真綾さんの相変わらずの天才ぶりだ。
香具矢という人はある種の変人である馬締を実社会に繋ぎ止めるアンカーである。そのために必要な重心を維持しながら彼に好感を持っていく微妙な心風景を声の温度感だけで表現している。数々の名人芸を堪能してきた真綾様だが、本作でのそれも格別だ。

原作からの改変度をリードするのはどの映像化においても岸辺みどりが担う。
今回のNHK版でも副詞の「ーなんて」を素材に、繰り返し繰り返し言葉が先行して人の行動を制御する様を描いて、まさにこのシーンのためのエライザ起用だろう。
感心して、ふと思い立って家にある三省堂の 「新明解」で「ーなんて」を引いてみて、ドラマより一段突っ込んだ語形変化からの語釈にまた感心してしまった。
 
昨年亡くなった父も辞書には思い入れのある人だった。
中学生になる春に、学校推奨の英和辞典とは異なる三省堂の「コンサイス英和辞典」を買ってきた。僕は他の誰よりも父のことを信頼していたし、本革装のこの辞書の存在感が一目で気に入ったので、みんなと辞書が違うことはまったく気にならなかった。
 
だから自分の娘が中学に入るときには、国語辞典にその当時話題になっていた同じ三省堂の 「新明解」を買い与えたのだが、今になってその判断が間違っていなかったことを確認できた。
 
この二つの辞書は今も僕の書棚の端っこで、困ったときにインターネット検索とは異なる答えをくれる。 信頼とはこういうことを言うのだと思う。
 


2024年3月9日土曜日

視聴会で出会った名盤:ALMA / ALMA NAIDU

少し前のことになるが、札幌のオーディオ視聴会で出会った女性ボーカルのCDを購入して、最近よく聴いている。 
アルマ・ナイドゥーというミュンヘンを拠点に活動するシンガーソングライターのデビュー盤です。
プレイボタンを押すと、美しいピアノに導かれ繊細だが存在感のある声が響く。その歌声に続いてこれまたなんとも滋味深いトロンボーンのソロが!
よくオーディオマニアを指して、音を聴いて音楽を聴かないと揶揄されるが、この楽器の「実体感」を味わう悦楽は、コンサートホールのような極度に大きいエアボリュームの中で、しかも演奏者との距離が離れている状態ではなかなか味わえないものだと思う。
 
真空管アンプと古いイギリスのスピーカーの組み合わせは、このようなアコースティック楽器を再生してこそ、その真価がわかるというものだ。
そしてそのために良い録音も求められる。
この音盤は、その二つの条件を満たすもので、視聴会でよく使われるのがわかる。
 
4曲目にはビリージョエル「ストーム・フロント」収録の美しいバラード「And So It Goes」がカバーされ、オリジナルに忠実なアレンジが好ましい。
中盤ではドミニク・ミラーのギターもフィーチャーされ飽きさせない。 

良い楽曲、良い演奏、良い歌唱、良い録音。
地味だが、名盤。