2026年4月28日火曜日

【映画考察】『プロジェクト・ヘイル・メアリー』|原作ファンの私が思う魅力、見どころを語るよ!

2026年公開の映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、アンディ・ウィアー原作の大ヒットSF小説を映像化した話題作です。



TBSラジオ「アフター6ジャンクション」で宇多丸さん・宇垣美里さんが原作発刊時に絶賛しているのを聴いて、それ以来映画化をずっと待っていたわけで、いやが上にも盛り上がっておりました。

本記事では、

  • 映画としての完成度
  • 特に印象に残ったシーン
  • 音楽・演出の魅力

を、ネタバレ最小限で丁寧にレビューします。


映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』とは

原作はアンディ・ウィアーの傑作SF

原作小説は『オデッセイ』で知られるアンディ・ウィアーの作品で、科学的なリアリティと人間ドラマが高く評価されています。

映画化発表時から大きな注目を集め、公開前から「映像化困難」と言われていた作品でもあります。


映画版の制作背景

映画版はライアン・ゴズリング主演で制作され、原作の複雑な科学描写をどのように映像化するかが大きな焦点でした。


映画を観た感想(ネタバレなし)

原作ファンとしての満足度が高い

原作の“語り口”や主人公のユーモアが、ライアン・ゴズリングの演技によって見事に再現されていました。

特に、主人公の孤独・恐怖・希望が丁寧に描かれており、原作の魅力を損なわない仕上がりです。


映像化が難しい要素をSFXで見事に表現

原作では科学的な説明が多く、映像化が難しいとされていましたが、映画ではSFXを駆使して“理解しやすく、かつ美しい”形で表現されています。




印象に残ったシーンと演出

宇宙空間の孤独と緊張感

映画序盤の“孤独な宇宙空間”の描写は圧巻で、観客を一気に物語へ引き込みます。


葛藤と希望を描くクライマックス

鬼指揮官エヴァ・ストラット(サンドラ・ヒュラー)がハリー・スタイルズ(ワン・ダイレクション)の「Sign of the Times」を独唱するシーンは個人的ベストワンの名シーン。

現場でライアン・ゴズリングが思いついたという、このシーン。宇宙への旅立ちの前夜催された壮行会の中で人類のために非情を貫く指揮官が唄うその歌が、歌詞の意味もわからないのに胸に響く名演でした。

この映画は必ずBlu-rayでも入手するつもりで、それはこのシーンを何度でも観たいからなんです。

ハリー・スタイルズ
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まさに英雄を讃える歌。
この作品は栄誉の影にある犠牲についての物語でもある、と僕は思います。

原作の紹介(は、訳あってしていないのですが)はこちらです。

2026年4月26日日曜日

Dave Mason追悼 ― “Alone Together”から始まった旅

















2026年4月19日、Dave Masonが79歳でこの世を去った。

Trafficの共同創設者として、“Feelin’ Alright?” を書き上げ、ソロとしても “Only You Know and I Know” や “We Just Disagree” など数々の名曲を残した彼の訃報は、誰にとっても大きな悲しみだったと思う。

私にとってのことを言えば、Dave Masonは“歴史上の偉大なギタリスト”ではなく、一枚のアルバムを通して静かに人生に入り込んできた存在だった。


■ Alone Toghterとの出会い


私がDave Masonを知ったのは、1970年のソロデビュー作 『Alone Together』 だった。

あの独特のマーブル模様のジャケット、そして“Only You Know and I Know”の軽やかな疾走感。

当時の私にとって、このアルバムは“70年代ロックの深部へと続く扉”のような存在だった。

そこから自然と遡るようにTrafficへ辿り着き、“Hole in My Shoe” や “Feelin’ Alright?” の瑞々しいサイケデリック感に触れた。Trafficの音楽は、Masonのソロとはまた違う、英国ロック特有の湿度と自由さに満ちていた。


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■ 私が所有してきたDave Mason作品


長年聴き続けてきたアルバムを並べてみると、私自身の音楽遍歴そのもののようにも思える。
Alone Together (1970)
Headkeeper (1972)
It’s Like You Never Left (1973)
Dave Mason (1974)
26 Letters 12 Notes (2008)
Alone Together Again (2020)
Dave Mason & Cass Elliot (1971)
特に“Headkeeper”や“It’s Like You Never Left”の温かいアコースティック感は、Traffic時代のサイケデリックさとは異なる、成熟したソングライティングの妙味を感じさせてくれる。
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■ ロック史の“交差点”として


Masonはしばしば「ロック界のフォレスト・ガンプ」と呼ばれる(とAIさんが言ってた)。
確かに彼はJimi Hendrix、George Harrison、Rolling Stones、Paul McCartneyなど、時代を象徴するアーティストたちと交流してきた。
特にHendrixの“All Along the Watchtower”でのアコースティックギター参加は、彼の職人的な存在感を象徴している。
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■ “静かに寄り添う音楽”として

Dave Masonの音楽は、派手に主張するタイプではない。
むしろ、人生のある瞬間にふと寄り添ってくれるような、そんな温度を持っている。
彼が亡くなった今、改めて“Alone Together”を聴き返すと、
あの頃と同じ風景が静かに立ち上がってくる。
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■ 最後に

Dave Mason、あなたの音楽はこれからも私の生活のどこかで鳴り続けます。
Trafficからソロ作まで、あなたが残した音の軌跡は、ロック史だけでなく、
一人のリスナーの人生にも確かに刻まれました。
心からの感謝とともに、どうか安らかに。

2026年4月24日金曜日

【映画考察】『昼下がりの情事』|ヘプバーン作品の魅力とおすすめ作品も紹介

オードリー・ヘプバーンとゲイリー・クーパーが共演した名作『昼下がりの情事』を、NHK の録画で久しぶりに鑑賞しました。

ロマンティックな展開と軽妙なコメディ要素が絶妙に混ざり合い、改めて“ヘプバーン映画の魅力”を感じさせてくれる一本です。

本記事では、
  • 映画の魅力
  • 印象に残ったポイント
  • ヘプバーン作品の中での位置づけ
  • 個人的におすすめしたい関連作品

をまとめてみます!




映画『昼下がりの情事』とは?

オードリー・ヘプバーン × ゲイリー・クーパーの名コンビ


1957年公開のロマンティック・コメディで、ビリー・ワイルダー監督による軽やかな語り口が特徴。

ヘプバーンの可憐さと、クーパーの渋い魅力がたまらん作品です。
ロマンティックでありながらユーモアも豊富

タイトルから想像するよりも、物語は軽快でユーモラス。

恋愛映画でありながら、コメディとしても楽しめますね。

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実際に観て感じた魅力

ヘプバーンの“キレッキレのコメディエンヌ”っぷり


ヘプバーン作品はどれも魅力的ですが、本作では特にコメディエンヌとしての才能が光ります。

持って生まれたものなんだろうなあ・・・・
テンポの良い展開で最後まで飽きない

ロマンティックな雰囲気を保ちながらも、テンポよく物語が進むため、古い映画にありがちな“間延び感”がありません。

ビリー・ワイルダー監督らしい軽快さが全編に漂っています。

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ヘプバーン作品の中での位置づけ

個人的に好きなヘプバーン作品


ヘプバーン映画はどれも魅力的ですが、特に好きなのは以下の3作です。
  • 『麗しのサブリナ』:ファッションが素晴らしく、物語も軽やか
  • 『おしゃれ泥棒』:コンパクトで文句なく楽しめる名コメディ
  • 『シャレード』:ミステリーとしてもよくできている

あえて本稿では触れないが…


映画史に残る大傑作『ティファニーで朝食を』は別格として、今回はあえて触れません。

逆に世評は高くないかもしれませんが、今回どうしてもご紹介したいのが『暗くなるまで待って』 です。

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『暗くなるまで待って』との個人的なつながり

北海道で出会った“特別な映画”


北海道出身のロックバンド HAN-NA が、かつて「暗くなるまで待って」というタイトルでデビューシングルを出していました。

自分も関わった北海道のロックシーンを取り上げたNHKの番組でこの曲を知り、「いい曲だな」とずっと思っていたところ、後にヘプバーンの同名映画に出会ったという経緯があります。

映画と音楽が結びついた瞬間


映画を観たことで、タイトルの意味合いが深まり、音楽と映画が自分の中で自然につながっていきました。

こうした“偶然の出会い”が、映画鑑賞の楽しさをより豊かにしてくれますね。

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まとめ|ヘプバーン作品の魅力を再確認できる一本


『昼下がりの情事』は、ロマンティックでありながら軽快なコメディとして楽しめる名作です。

ヘプバーンの魅力を再確認したい人にも、クラシック映画を気軽に観たい人にもおすすめできる一本です。

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関連リンク

【映画考察】『ニュー・シネマ・パラダイス インターナショナル版』|映画史に残る名ラストシーンへのタペストリー

1988年公開のイタリア映画(ジュゼッペ・トルナトーレ監督)。

中年を迎えた映画監督が、故郷の映写技師の訃報をきっかけに、映画に魅せられた少年時代と青年期の切ない恋を回想する物語。

エンニオ・モリコーネによる郷愁を誘う音楽とともに、「映画への愛」を描いた不朽の名作として世界中で愛されている。

 

鑑賞レポ:インターナショナル版と完全版


NHK-BSで今回放映された『ニュー・シネマ・パラダイス』は、最初の劇場公開版と同じ123分の「インターナショナル版」だった。

DVDで観た「完全版」では、追加された彼女のその後と再会のシーンに激しく心が揺さぶられたが、その感情と「あの」ラストシーンとの整合が自分の中ではうまく処理できず、複雑な鑑賞となった。

今回改めて観たオリジナル版は、全てがラストシーンに向けて織り上げられた見事なタペスタリーのようで、最初から最後まで泣き通し、ラストでは大決壊、今これを書いていても泣けてくる。



関連リンク


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撮り溜め映画鑑賞レポ:『パピヨン』

 モンテ=クリスト伯(巌窟王)の影響で脱獄モノはかなり好きなジャンルなんだが、1973年の映画『パピヨン』はまだ観ていなかった。

スティーブ・マックィーンとダスティン・ホフマンの迫真の名演に引き摺り回され、ラストのダイブ一閃にまるで自分が脱獄に成功したような気分になった。
エンドロールで、映画の舞台になった漫画みたいな劣悪監獄が実際に存在したと知ってこれもびっくり。
欧州は法の精神の先進国だと思っていたが、やはり人間のやることはそう変わらない、ということか。
2019年にチャーリー・ハナムとラミ・マレックでリメイクされているらしい。



撮り溜め映画鑑賞レポ:『ひまわり』

 映画好きなら誰でも知ってる『ひまわり』ですが、あまりの「名画」感に気圧されてなんとなく観そびれていました。

NHK-BSで放送されたのを好機とみて鑑賞に至りました。
いやーまいった。
カメラによって切り取られたすべての瞬間が美しい。
会社員時代に何度か行ったイタリア旅行で、滞在地のフィレンツェからシエナに向かう電車から見えた一面のひまわり畑の印象が強かったせいか、この映画が紹介される度に使われるひまわり畑の壮大な光景もイタリアなんだとばかり(イタリア映画だしね)思い込んでいたが、実際はウクライナの風景で、それがこの映画のキーになっている。
マルチェロ・マストロヤンニは、『甘い生活』での役どころとほぼ同じ、優柔不断で弱い男を演じていた。
まったく他人事ではなく、芯の強さではソフィア・ローレン演じるナポリ娘ジョバンナといい勝負をするだろう我が賢妻を大事にしなくては、と強く心に誓った。



撮り溜め映画鑑賞レポ:『夜の大捜査線』

 NHKは番組編成において、時々気の利いた演出をする。

映画『夜の大捜査線』の放送に合わせて、クインシー・ジョーンズが音楽業界に与えた衝撃についてのドキュメンタリー(アメリカ製作)を放送した。
『夜の大捜査線』全編に流れるクインシー・ジョーンズの都会的なセンスが、この映画に描かれるアメリカ南部の黒人差別の苦々しさをペーソスに変換する役割を果たしていると感じられたのは、事前にこのドキュメンタリーを観ていたからだろう。
『踊る大捜査線』が、クライム・サスペンスの名作として知られるこの映画のタイトルからインスパイアされた(「踊る」は『踊る大紐育』から)ことはよく知られているが、今まで実際に観る機会はなかった。
対立する立場の警官たちが最後に友情を育んでいくラストの胸熱シーンは、多少ベタではあるがやはりエンタメはこうでなきゃ、という満足感がある。
続編もあるようなので楽しみ。

撮り溜め映画鑑賞レポ:『フォード VS フェラーリ』


『フォード VS フェラーリ』は、少年時代『サーキットの狼』に夢中になった自分にとっては、どうしても劇場で観たかった映画だが、ちょうど激務の渦中にいて観られなかった。
 NHK-BSで放送してくれたおかげで、やっと鑑賞できたが家の小さなテレビでもなかなかどうして楽しめる作品であった。
ドラマを象徴するシーンとして、経営者風を吹かせて現場をかき回すヘンリー・フォード2世をGT40に乗せて現実を見せつける場面があるが、子供のように泣き喚くトレイシー・レッツの熱演に溜飲を下げ、そしてこんなことに溜飲を下げた自分が少し恥ずかしくなった。
実際のヘンリー・フォード2世も毀誉褒貶ある人物であったが、個人的には好きな経営者の一人。伝統あるフォード社の姿を大きく変革した名経営者だったと思う。
そのうちの一手がフェラーリの買収であったが、その挫折に至る道筋がこの映画の本題。
僕は企業再生の映画として観た。



2026年4月22日水曜日

『フランケンシュタイン』光文社古典新訳文庫で再読

本棚の整理をしている。

あれも読みたい、これも読みたいと買い続けた本が本棚から溢れる度に、メルカリやらブックオフやらで処分してきたが、そもそも何列にも重ねて押し込んでいる奥の方の本はずっと手付かずのままだった。
またしても決壊した本棚に意を決して、奥の奥まで捜索対象を広げてみたところ、そうだこんな本もあんな本も持ってたなあと再読の誘惑が燎原の火のように襲いかかってきて、今回は『フランケンシュタイン』を再読することに。

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10年ほど前の古層からの掘り出し本である。
冒頭からまったく記憶になく、新鮮な驚きのままに最後まで駆け抜けた。
むしろ教訓的な要素はすでに心得ていたわけで、今回の読書では純粋な文学的喜びが心を占めていた。
再読の醍醐味です。






復刊ドットコムの大仕事『新・幻魔大戦<完全版>』がすごい!

 (たぶん)中学生の頃だったと思う。

小遣いを貰うと、近所にあった長内書店という小さな小さな書店に行って角川文庫の『幻魔大戦』(全20巻)を一冊づつ買うのが楽しみだった。

角川版が完結した後、徳間ノベルズおよび徳間文庫で『真幻魔大戦』として書き紡がれたものも、社会人になってからも引き続き読んでいた。
生活環境が幾度か変わるたびに、いろんなものをなくしてきたが、幻魔大戦の膨大なコレクションもその一つだった。
ふと思い出してAmazonを覗いてみると、『新・幻魔大戦<完全版>』と銘打って、何やら愛情たっぷりに編集されたものが出版されているではありませんか!

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1967年少年マガジン誌で連載開始された石ノ森版(当時は石森)の漫画はエンディングが描かれないまま突然の打ち切りとなり、別媒体で新規構想のもと続編が描かれていた。その続編パートと平井和正先生が別に書き続けた原作小説が時系列に沿って収録されているという資料性の高いもの。
当時の出版社事情も含め、興味深く読み進めている。




『DUNE/デューン 砂の惑星』映画で好きになった人、原作もぜひ!

 2021年、2024年と前後半に分けての映画公開となった『DUNE/デューン 砂の惑星』

この映画がヒットしたおかげで、入手困難だった続編『砂漠の救世主』が雰囲気のある装丁で復刊した。
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出版された23年に入手、多くの積読本に埋もれていたが、やっと順番が回ってきたぞ。
大学生の頃、古本屋で入手して読んでいたが、やはり今時の新訳はいい。
かつての直訳風のものは、それをやっているのが誰なのか迷子になることが多々あったが、充分に日本語の文脈に配慮された文体で、短い物語ではないがあっという間の読了となった。
新訳版では最終巻となる『砂丘の子供たち』も、もちろん入手済みである。


【音楽エッセイ】なぜ幾田りらの歌声は胸を打つのか?最新作『Laugh』と『ぷらそにか』の変遷から紐解く、唯一無比の表現力

2017年頃、YouTubeでよく『ぷらそにか』というユニットを観ていた。
若い人たちの歌のうまさというものが、我々の知っているそれとは少し意味合いの違うものになったんだな、と感じさせるユニットだった。
YOASOBIが出てきて、幾田りらという人の歌のうまさに驚いていたら、当時の『ぷらそにか』に参加していたと聞いて納得頻り。
ファーストソロは通勤時や入浴時の最愛聴盤であった。



1. 幾田りら のキャリアと『ぷらそにか』


幾田りらのキャリアを語る上で、シンガーソングライターとしての「個人の活動」と、YouTubeを主戦場とした「グループ活動」のシンクロは欠かせない要素だと思う。

音楽的ルーツとソロ始動


幼少期をアメリカで過ごし、音楽好きな家族の影響で物心ついた頃から歌手を志していた幾田。
中学1年生から本格的に作詞作曲を始め、路上ライブやライブハウスでの弾き語りなど、地道なインディーズ活動からキャリアをスタートさせている。

アコースティック・セッションユニット『ぷらそにか』への加入(2017年〜2021年)


ソニーミュージックの新人開発部門が関わる、若手シンガーソングライターたちによる個々の切磋琢磨を目的とした集団ぷらそにかに2017年7月から加入。

毎週金曜日にJ-POPのカバー動画などをYouTubeに投稿するスタイルで、若い世代を中心に大きな注目を集めていた。

YOASOBIでのアーティスト名「ikura」は、この『ぷらそにか』在籍時におふざけモードだった彼女に対して、メンバーのFoiさんが命名したあだ名が由来なんだそうで。

YOASOBIの結成と大ブレイク(2019年〜)


『ぷらそにか』でのカバー動画を見たコンポーザー・Ayaseさんから声をかけられ、小説を音楽にするユニット「YOASOBI」のボーカル “ikura” として活動を開始。
デビュー曲『夜に駆ける』の爆発的ヒットにより、一躍時代の寵児となった。

 2021年8月に惜しまれつつも『ぷらそにか』を卒業したが、今回のアルバム『Laugh』で古巣のメンバーと再び共演を果たしたことは、古くからのファンである自分にとって嬉しい驚きだった。

2. ミュージシャンとしての評価・歌声の強み


彼女がこれほどまでに多方面から評価される理由は、単に「高い声が出る」という技術的な話だけではもちろんない。
プロの音楽評論家やクリエイターからは、以下のような点が絶賛されている。

抜群の安定感と「言葉の立ち上がりの速さ」


YOASOBIの楽曲に代表されるような、BPM(テンポ)が速く、言葉が敷き詰められた難曲でも、ピッチ(音高)が全くブレない驚異的な体幹の強さを持っている。
子音と母音の発音が明瞭で、言葉がリスナーの耳にストレートかつ瞬時に届くのがすごいと思う。

感情を「隣で感じさせる」距離感のコントロール


近年の歌声分析でも指摘されているが、高音でもビブラートをあえて抑え、言葉の語尾に微細な揺らぎを含ませるテクニックに長けている。

感情を大げさにシンガー側が表象(熱唱)するのではなく、聴き手の隣にいるような歌唱は、近年のアーティストの中にも見受けられるが、その新しい音楽表現の嚆矢と言えるだろう。

「ikura」と「幾田りら」の表現の使い分け


YOASOBI(ikura)
: ボカロ文化の系譜を引く、楽器の一部として機能するような、正確無比でどこか無機質かつドラマチックなボーカル。 

ソロ(幾田りら): 自身がアコースティックギターを抱えて歌うシンガーソングライターとしての顔。等身大の言葉と、体温を感じさせるオーガニックな歌声。

3. 『DREAMER』


『DREAMER』とは?


2023年にフジテレビ系で放送された実写版ドラマ『パリピ孔明』にて、上白石萌歌さん演じる主人公の歌姫・月見英子のメイン楽曲として、幾田りらさんが書き下ろした楽曲。 

作中では「歌手を目指す少女の葛藤と夢」が描かれていたが、それはまさに幾田自身が『ぷらそにか』時代や路上ライブ時代に抱えていた想いそのもの。

それをセルフカバーし、さらにかつての戦友である『ぷらそにか』の面々と声を合わせたことで、楽曲の持つ「夢を追うエネルギー」が何倍にも膨れ上がったアレンジになっている。

そこにこの楽曲の真の姿を見た気がした。

Laugh (通常盤) - 幾田りら
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光文社古典新訳文庫の『モンテ・クリスト伯』が素晴らしい

初めて『巌窟王』を読んだのは、小学校高学年の頃、父が買ってくれた「少年少女世界の名作」という子供向けの全集に収録されたものだった。

特に父自身が子供の頃感動した作品として、『あゝ無情(レ・ミゼラブル)』とともに勧めてくれた一編で、特別な思い入れのある作品だ。
その『巌窟王』が、昨年『モンテ・クリスト伯』として映画が公開され、光文社古典新訳文庫でも原典新訳版の刊行が進んでいる。
全6巻で最終巻の刊行は28年8月までかかるらしい。

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小学生の時に読んだものとはまるでボリュームが違うわけだが、どの一文も躍動していて、長い物語を読んでいる感じがしない。
翌日続きを読み始めても、それまでにエドモン・ダンテスの身に降りかかったあれやこれやが鮮やかに思い出され、すぐにその世界に没入させられる。
まさに文豪の名作。
色褪せない、生涯をともに歩む物語となりそうだ。

2026年4月20日月曜日

【音楽エッセイ】50周年記念『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』に集った3人の天才たちの軌跡

2026年3月21日の「ナイアガラ・デイ」、大滝詠一のナイアガラレーベルから企画アルバム、50周年記念盤『NIAGARA TRIANGLE Vol.1 50th Anniversary Edition』が発売された。



自ら作詞・作曲・編曲・プロデュースを手がける3人の若き才能が、ジャンルや常識に縛られない「自由なポップス作り」に挑んだ、まさに “スーパーセッションアルバム” 。

大瀧詠一プロデュースの大名盤、渡辺満里奈『Ring-a-Bell』のデラックスエディションも同日発売で、必然的に一日中大瀧漬けとなったが、今回は、『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』の奇跡のトライアングルを形成した3人のメンバーに焦点を当て、当時の立ち位置やその後の活躍を振り返る。





奇跡のトライアングル:3人の若き天才たち

 1. 山下達郎 ── シュガー・ベイブ解散直前、ソロ始動前夜のきらめき

1976年当時の立ち位置: 

当時は伝説のバンド「シュガー・ベイブ」の一員だったが、アルバム発売の直前(1976年3月末)にバンドは解散。まさにソロアーティストとして本格的に漕ぎ出す直前の「夜明け前」の時期だった。 

本作での存在感: 

本作には、後に代名詞的な名曲となる「パレード」や「ドリーミング・デイ」を提供。弾けるようなキャッチーさと、緻密なコーラスワーク、そして圧倒的なヴォーカルセンスは、すでに風格十分。 

その後の活躍: 

日本の「シティポップ」の王座に君臨し、「クリスマス・イブ」をはじめとする数々のメガヒットを連発。半世紀が過ぎた現在でも、現役のライブアーティストとして、また日本のポップス界の至宝としてトップランナーであり続けている。 

2. 伊藤銀次 ── ココナツ・バンクを経て、メロディメーカーとしての覚醒

 1976年当時の立ち位置: 

大滝詠一に見出されたバンド「ココナツ・バンク」のリーダーとして活動した後、シュガー・ベイブにも一時加入。当時はバンドマンからソロのソングライター・編曲家へと脱皮を図る過渡期。 

本作での存在感: 

山下達郎、大滝詠一と3人で歌い繋ぐシングル曲「幸せにさよなら」のほか、「日射病」や「ココナツ・ホリデイ'76」などを提供。
ビートルズ直系のキャッチーなメロディラインと、瑞々しくフォーキーなロック感覚をアルバムに吹き込み、トライアングルに絶妙な軽快さをもたらした。 

その後の活躍: 

ソロアーティストとして名盤を残す一方、プロデューサー・アレンジャーとして大活躍。佐野元春のプロデュースや、沢田研二への「おまえにチェックイン」などの楽曲提供、さらにはイカ天(『イカすバンド天国』)の審査員など、80年代以降の日本のロック・ポップスシーンを裏から、表から支え続ける重要人物となった。 

3. 大滝詠一 ── ナイアガラ・レコードを率いる、不世出のポップス音響監督

 1976年当時の立ち位置: 

「はっぴいえんど」解散後、自身の理想郷である「ナイアガラ・レコード」を設立。福生(45スタジオ)を拠点に、プロデューサー・エンジニア(変名:笛吹銅次)としても全権を握り、日本のポップスを次の次元へ進めようと実験を繰り返していたプロデューサー的立ち位置であった。 

本作での存在感: 

若き2人の才能をフックアップしつつ、自身は「夜明け前の浜辺」でロマンチックな世界観を描き、一方で「ナイアガラ音頭」(歌:布谷文夫)という、ポップスと音頭を融合させた前衛的すぎるノベルティ・ソングをぶち込むなど、アルバム全体のトリックスターであり、絶対的な羅針盤として活動を続けた。 

その後の活躍:

 1981年にアルバム『A LONG VACATION』を発表し、ミリオンセラーを記録。日本のポップス史における最高峰のメロディメーカーとして不動の地位を築く。2013年に急逝したが、彼が蒔いた「ナイアガライズム」の種は、現在の国内外におけるシティポップ・ブームの源流として、今もなお脈々と受け継がれている。

50年経っても色褪せない「自由なポップスの実験室」

『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』は、単なるオムニバスアルバムではなく、3人の異能がそれぞれの持ち味をぶつけ合い、化学反応を起こした「実験室」のような作品と言えるだろう。

今回のデラックス・エディションでその瑞々しい音に触れると、彼らが50年前に鳴らした「誰も聴いたことのないポップスを作ろう」という初期衝動が、今の時代にも全く色褪せていないことに驚かされる。

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【音楽エッセイ】Mr.Children『産声』レビュー:原点回帰のピアノと、過去の傷を癒やす「Glastonbury」

Mr.Children(ミスチル)の新譜がリリースされるたび、一度集中して全編を聴き込むのが私の長年の習慣である。もちろん、今回発表された『産声』も例外ではない。一通り耳を通した今、本作は往年のファンを唸らせる仕掛けと、今だからこそ響く深いメッセージ性に満ちた傑作であると確信している。



小林武史のピアノがもたらす推進力と「原点回帰」

本作における最大の聴きどころの一つは、やはり小林武史の手による卓越したピアノアレンジだろう。 象徴的なのが、収録曲『Again』である。ここで聴ける小林渾身のピアノは、楽曲に圧倒的な説得力を与えている。さらに、原点回帰的なアプローチが光る『Nowhere Man』でも、彼らしい推進力のあるピアノが全編を引っ張る。この瑞々しくも力強いサウンドは、初期からの古いファンにはたまらないプレゼントと言える。 また、今作では珍しい遊び心も散りばめられている。『Saturday』という楽曲のイントロに触れた時、思わずニヤリとしてしまった。シカゴの名曲『Saturday in the Park』を彷彿とさせるイントロを添えるという、実に洒落たオマージュが効いているのだ。こうした音楽的な仕掛けを見つけ出すのも、本作を聴く醍醐味である。

「Glastonbury」が描くクリス・マーティンと、古い心の傷跡

アルバムの5曲目に配された『Glastonbury』は、本作の中でも特に異彩を放ち、そして聴き手の心に深く刺さる一曲だ。 「2002年のグラストンベリー / YouTubeでチラ見 / クリスは絶好調」 なんとも好奇心をそそるこのフレーズで楽曲は幕を開ける。ここで歌われているのは、イギリスを代表するロックバンド・コールドプレイ(Coldplay)のフロントマン、クリス・マーティンのことである。 このフレーズを耳にした瞬間、私の中で個人的な記憶の蓋が開いた。
まだ東京で慌ただしく働いていた頃、私はコールドプレイの音楽に救われていた。彼らの楽曲を録音したMDをウォークマンに入れ、通勤電車の中で毎日のように聴いていたものである。 しかしその後、札幌へ移住して古い友人と再会した際、思いがけない言葉を投げかけられた。「コールドプレイが好きなんてセンス悪いな」――。 悪気のない一言だったのかもしれない。だが、当時の自分を支えていた音楽を否定されたその言葉は、私の心に深い傷跡を残した。
おそらくこの先も一生忘れることはないだろう。 だからこそ、ミスチルが新譜の中で「クリスは絶好調」と歌い、彼らの存在を肯定してくれたことに、私は言葉にできない救いを感じたのだ。

総評:誰かの傷に寄り添う、新たな名盤の誕生

Mr.Childrenの『産声』は、往年のファンを歓喜させる音楽的クオリティを担保しながらも、聴き手一人ひとりのパーソナルな記憶や傷跡にそっと触れてくる包容力を持ったアルバムである。 素晴らしいピアノサウンドに酔いしれたい人も、歌詞の世界観に深く浸りたい人も、まずは一度、じっくりと全編を通して聴いてみてほしい。そこにはきっと、あなた自身の物語と共鳴する瞬間が待っているはずだ。

産声 (通常盤) - Mr.Children (特典なし)
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どう作っても「カッコよく」なってしまうCharの古希記念ライブが凄かった

 Charの古希記念ライブ〈Char Nippon Budokan Live 2025 - Purple Phase Jam〉をCD2枚とBlu-rayで収録したパッケージが届いた。

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福原みほさんの元気そうなお姿に、それだけでもホッとしてしまうが、春畑道哉(TUBE)やら野村義男、山内総一郎(フジファブリック)やら、大物然とはしていないが界隈では極めて評価の高いギタリストたちが出てきて夢のようなセッションが延々と続く。
Jesse、金子ノブアキ、KenKenといった、Charファミリーの息子たちや、山岸竜之介、並木瑠璃という新世代の超絶ギタリストたちにも(当然ながら)強い影響を与えながら日本のロックシーンを牽引している様子がわかるが、ラスト近く、大物中の大物、布袋寅泰がめちゃくちゃ恐縮しながらセッションしている様子がすべてを物語っていた。

今回の案件での掘り出し物は山岸竜之介という若者で、マーク・ノップラーそっくりにスライドギター弾くのを見てひっくり返った。
今度真似してみよ。
こうして彼の芸歴を振り返ってみると、どう作っても「カッコよく」なってしまうのがCharなんだな、と。
いいもん見せてもらいました!

わらしべ長者や風が吹けば桶屋が儲かる、の厄災版カタログ

 散歩の途中、気まぐれに立ち寄った小さな書店で激しく推していた本を買ってみた。

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少し皮肉めいた視点で書かれた人類史で、現在の世界がなぜこんな姿をしているのかを知るための、ある種のヒントを提示している。
ただし語り口は、ユーモラスの域を少し超えてアイロニカル。

毛沢東が害獣駆除を企図した際、「蚊」「鼠」「蠅」と考えて、四つの方がいいな、と考えて「雀」を追加したら、それがイナゴの大発生を呼び、1500万とも3000万とも言われる飢餓死者を出したというのは、著者曰く「わらしべ長者や風が吹けば桶屋が儲かる、の厄災版」と確かに言えなくもない。

ダグラス・アダムスの大ファンである私には抵抗がなかったが、万人向けではないかも知れないな。

【音楽エッセイ】山口ちなみ『ザ・ケルン・コンサート』全曲再現盤レビュー|クラシックとジャズの違いが際立つ一枚

クラシックの若手ピアニスト・山口ちなみが、キース・ジャレットの名盤『ザ・ケルン・コンサート』を“フル起こしの楽譜”から演奏するという、非常にユニークな企画盤を見つけた。





ジャズ史に残る即興演奏を、クラシックのタッチでどう再構築するのか。

聴いてみると、ジャズとクラシックの違いが鮮やかに浮かび上がる一枚だった。

山口ちなみさんのこと

本盤がデビュー盤というクラシックのピアニストが、新人でありながら、デビュー作でいきなり“ケルン・コンサートの全曲再現”という挑戦的な企画に抜擢されている。

この時点で、ただ者ではない。


『ケルン・コンサート』を“楽譜から弾く”という企画



即興の名盤をクラシックの手法で再構築

即興録音のキース・ジャレット『ザ・ケルン・コンサート』をフル起しの楽譜から弾く、という企画。

“楽譜化 → クラシックの環境で再現”という試みは、音楽的にも文化的にも興味深い。


いてわかる「ジャズとクラシックの違い」


聴いてみると、ああなるほど、ジャズとクラシックはこのように違うのか!という発見がある。確かに両者は、演奏の際、大切にしているものがずいぶん違う。
  • ジャズ:瞬間の呼吸、揺れ、間合い
  • クラシック:構造の美しさ、音色の純度、緊張感のコントロール
同じ音列でも、ジャンルの文法が違うと“別の音楽”になることがよくわかる。

改めて浮かび上がる『ザ・ケルン・コンサート』の奇跡


改めてキース・ジャレット『ザ・ケルン・コンサート』の奇跡の名盤ぶりが際立ちます。

再現盤を聴くことで、オリジナルの“即興の魔法”がどれほど唯一無二だったかが理解できる。


そして山口ちなみさんの魅力と将来性


ピュアな音色が美しい

行きすぎた演出気のないピュアな音色がどこまでも美しい。

クラシックの新人らしい“まっすぐな音”が印象的で、技巧よりも音色の美しさが際立つ。


本業のクラシックでリリースがあればぜひ聴いてみたいものです。

この再現盤は“企画もの”ではあるが、本来のクラシック作品でどんな表現をするのか非常に楽しみなピアニストだ。


関連リンク


The Koln Concert
B0FT7M5KK6



ケルン・コンサート (UHQCD)
B0FZGC7LS8