2026年4月22日水曜日

【音楽エッセイ】なぜ幾田りらの歌声は胸を打つのか?最新作『Laugh』と『ぷらそにか』の変遷から紐解く、唯一無比の表現力

2017年頃、YouTubeでよく『ぷらそにか』というユニットを観ていた。
若い人たちの歌のうまさというものが、我々の知っているそれとは少し意味合いの違うものになったんだな、と感じさせるユニットだった。
YOASOBIが出てきて、幾田りらという人の歌のうまさに驚いていたら、当時の『ぷらそにか』に参加していたと聞いて納得頻り。
ファーストソロは通勤時や入浴時の最愛聴盤であった。



1. 幾田りら のキャリアと『ぷらそにか』


幾田りらのキャリアを語る上で、シンガーソングライターとしての「個人の活動」と、YouTubeを主戦場とした「グループ活動」のシンクロは欠かせない要素だと思う。

音楽的ルーツとソロ始動


幼少期をアメリカで過ごし、音楽好きな家族の影響で物心ついた頃から歌手を志していた幾田。
中学1年生から本格的に作詞作曲を始め、路上ライブやライブハウスでの弾き語りなど、地道なインディーズ活動からキャリアをスタートさせている。

アコースティック・セッションユニット『ぷらそにか』への加入(2017年〜2021年)


ソニーミュージックの新人開発部門が関わる、若手シンガーソングライターたちによる個々の切磋琢磨を目的とした集団ぷらそにかに2017年7月から加入。

毎週金曜日にJ-POPのカバー動画などをYouTubeに投稿するスタイルで、若い世代を中心に大きな注目を集めていた。

YOASOBIでのアーティスト名「ikura」は、この『ぷらそにか』在籍時におふざけモードだった彼女に対して、メンバーのFoiさんが命名したあだ名が由来なんだそうで。

YOASOBIの結成と大ブレイク(2019年〜)


『ぷらそにか』でのカバー動画を見たコンポーザー・Ayaseさんから声をかけられ、小説を音楽にするユニット「YOASOBI」のボーカル “ikura” として活動を開始。
デビュー曲『夜に駆ける』の爆発的ヒットにより、一躍時代の寵児となった。

 2021年8月に惜しまれつつも『ぷらそにか』を卒業したが、今回のアルバム『Laugh』で古巣のメンバーと再び共演を果たしたことは、古くからのファンである自分にとって嬉しい驚きだった。

2. ミュージシャンとしての評価・歌声の強み


彼女がこれほどまでに多方面から評価される理由は、単に「高い声が出る」という技術的な話だけではもちろんない。
プロの音楽評論家やクリエイターからは、以下のような点が絶賛されている。

抜群の安定感と「言葉の立ち上がりの速さ」


YOASOBIの楽曲に代表されるような、BPM(テンポ)が速く、言葉が敷き詰められた難曲でも、ピッチ(音高)が全くブレない驚異的な体幹の強さを持っている。
子音と母音の発音が明瞭で、言葉がリスナーの耳にストレートかつ瞬時に届くのがすごいと思う。

感情を「隣で感じさせる」距離感のコントロール


近年の歌声分析でも指摘されているが、高音でもビブラートをあえて抑え、言葉の語尾に微細な揺らぎを含ませるテクニックに長けている。

感情を大げさにシンガー側が表象(熱唱)するのではなく、聴き手の隣にいるような歌唱は、近年のアーティストの中にも見受けられるが、その新しい音楽表現の嚆矢と言えるだろう。

「ikura」と「幾田りら」の表現の使い分け


YOASOBI(ikura)
: ボカロ文化の系譜を引く、楽器の一部として機能するような、正確無比でどこか無機質かつドラマチックなボーカル。 

ソロ(幾田りら): 自身がアコースティックギターを抱えて歌うシンガーソングライターとしての顔。等身大の言葉と、体温を感じさせるオーガニックな歌声。

3. 『DREAMER』


『DREAMER』とは?


2023年にフジテレビ系で放送された実写版ドラマ『パリピ孔明』にて、上白石萌歌さん演じる主人公の歌姫・月見英子のメイン楽曲として、幾田りらさんが書き下ろした楽曲。 

作中では「歌手を目指す少女の葛藤と夢」が描かれていたが、それはまさに幾田自身が『ぷらそにか』時代や路上ライブ時代に抱えていた想いそのもの。

それをセルフカバーし、さらにかつての戦友である『ぷらそにか』の面々と声を合わせたことで、楽曲の持つ「夢を追うエネルギー」が何倍にも膨れ上がったアレンジになっている。

そこにこの楽曲の真の姿を見た気がした。

Laugh (通常盤) - 幾田りら
B0G4M6SYDD

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