1976年の『Destroyer(地獄の軍団)』の大ヒットにより、名実ともに世界的なトップスターへと上り詰めたKISS(キッス)。彼らの最大の武器は、レコードの溝には収まりきらない、スタジアムを揺るがす圧倒的なライブパフォーマンスであった。
その最高潮の熱気とスケール感をこれでもかと見せつけ、世界中にさらなるKISSマニア(キッス・アーミー)を増殖させたのが、1977年に発表された2枚組ライブアルバム『ALIVE II(邦題:地獄の狂獣・キッス・ライヴ II)』である。
前作『Alive!』の成功を踏襲しつつ、さらなる進化を遂げた本作の歴史的背景と、聴きどころである収録曲の魅力を解説する。
1. 『ALIVE II』の成り立ちと歴史:スタジアムロックの頂点と異例のアルバム構成
1975年の『Alive!(地獄の狂獣)』は、それまでセールスに苦しんでいたバンドを救った起死回生の1枚であった。しかし、そこからのわずか2年足らずの間で、彼らを取り巻く環境は激変する。
最も脂が乗った時期のドキュメント
KISSは『Destroyer』、そして続く『Rock and Roll Over(地獄のロック・ファイアー)』『Love Gun(地獄の深海)』と、またたく間にミリオンセラーを連発。ライブの規模はアリーナから巨大なスタジアムへと拡大していった。まさにバンドが最も脂が乗り、アメリカ中を熱狂させていた1977年のLAフォーラムなどの音源を収録したのが本作である。
2枚組LPの「4面目」に隠された仕掛け
本作の大きな特徴は、その変則的な構成にある。2枚組LPのA面・B面・C面(1〜3面)には、前作『Alive!』以降に発表された3枚のスタジオアルバムの楽曲を中心に、臨場感あふれるライブ音源がこれでもかと詰め込まれた。
一方で、D面(4面)には「スタジオ録音の新曲」が5曲収録された。 ライブの興奮を届けつつ、バンドの現在進行形のクリエイティビティも提示するという、ファンにとっては1枚で2度美味しい、非常に贅沢な企画盤として大ヒットを記録することとなる。
2. 『ALIVE II』収録曲に見る名曲・小ネタ解説
前作と重複する初期の代表曲をあえて外し、黄金期の新アンセムだけで固められたセットリストは、当時の彼らの勢いを何よりも物語っている。
Detroit Rock City(デトロイト・ロック・シティ)
アルバムの幕開けを飾る、地を這うような重低音と大歓声。スタジオ盤にあった車の効果音はなく、代わりに地鳴りのようなドラムから一気にあのツインギターのリフへと突入する。 スタジオ盤以上のスピード感と、スタジアム全体が揺れているかのような空気感は、まさに「ライブ仕様」の決定版である。
Shout It Out Loud(狂気の叫び)
ポール・スタンレーとジーン・シモンズが交互にボーカルをとる、KISS屈指のパーティー・アンセム。観客とのコール&レスポンスが完璧に決まっており、ライブバンドとしての彼らのエンターテインメント性が凝縮されている。
Love Gun(ラブ・ガン)
ポールのハイトーンボーカルと、躍動するドラムが心地よいハードロックナンバー。 イントロのキック一発で会場のボルテージが最高潮に達する様子が音を透かして伝わってくる。本作のライブ音源を聴けば、彼らがなぜ当時「世界最高のエンターテインメント」と呼ばれたかが一発で理解できるはずだ。
Rocket Ride(ロケット・ライド)※D面スタジオ新曲
D面のスタジオ録音曲の中で、唯一シングルカットされ全米トップ40入りを果たした、エース・フレーリー(G)の骨太なナンバー。 実のところ、当時のバンド内は多忙を極め人間関係も悪化し始めており、この曲以外のD面曲ではエースの代わりに別のギタリスト(ボブ・キューリック)が影武者としてギターを弾いていた。しかし、この「Rocket Ride」だけはエースがベースまで自ら演奏し、彼の不敵なロック・スピリットが炸裂した隠れた名曲となっている。
3. 現在入手するならこの1枚
当時の熱狂をそのままのスケールで体感するなら、やはり音質にこだわった現行盤がベストである。
『ALIVE II: SHM-CD(2枚組)』
黄金期のKISSのライブ特有の「爆音」と「スタジアムの残響」が、最新のリマスタリング技術によって鮮明に蘇っている。ベースの重低音や観客の声の分離感が向上しており、ステレオの前に座れば、1977年のLAフォーラムの最前列にタイムスリップしたかのような興奮を味わえる決定盤である。























