2026年5月9日土曜日

レコード棚を総浚い #139『Journey / Raised on Radio〜時を駆けて〜』



前作『Frontiers』から3年。全米チャート2位に9週間も君臨し、向かうところ敵なしだったジャーニーが、長い沈黙を破ってリリースしたのが本作『Raised on Radio』です。

個人的には、このアルバムを聴くと「一つの時代」の終わりを感じて少し切ない気持ちになりますが、聴いてみれば完成度はなかなか。

削ぎ落とされた編成と「スティーヴ・ペリーの美学」


本作の最大の特徴は、バンド形態の変容です。ロス・ヴァロリー(B)とスティーヴ・スミス(Ds)が制作途中で離脱。実質的にスティーヴ・ペリー、ニール・ショーン、ジョナサン・ケインの3名体制で作り上げられた一枚です。
  • 洗練を極めたプロダクション: 前作までのスタジアム・ロック的な「熱さ」は少し影を潜め、非常にクリアでタイトなサウンドに。
  • スティーヴ・ペリーの主導: 彼のソウルフルな歌唱がこれまで以上に前面に押し出され、どこか彼のソロ作品に近い、都会的なAORの香りが漂います。

アルバムを彩る至極の楽曲たち

  • 「Girl Can't Help It」: 幕開けを飾るこの曲の瑞々しさ!ジョナサン・ケインのメロディセンスが爆発しています。複雑なことはせず、ただただ「良い曲」を届けるという潔さを感じます。
  • 「Be Good to Yourself」: 先行シングルとして大ヒットした、アルバム中最も「ジャーニーらしい」ポジティブなロックナンバー。ニール・ショーンのギターが唸りを上げ、沈んでいた気分を強引に引き上げてくれるような力強さがあります。
  • 「I'll Be Alright Without You」: 切ない。とにかく切ないです。スティーヴ・ペリーのボーカルの「泣き」が頂点に達しており、夜のドライブで聴くと胸に刺さります。
  • 「Suzanne」: 軽快なリズムに乗せたキャッチーなメロディ。80年代中盤の空気感をそのままパッケージしたような、非常に質の高いポップ・ロックです。

ラジオ世代に捧げた誠実なる音楽


モンスターバンドを維持し続けていくことは、とてつもなく難しいことなのでしょう。この後にバンドが長い休止期間に入ることを考えると、まさに「燃え尽きる直前の美しい閃光」のようなアルバムだったのかも。

「ラジオを聴いて育った世代(Raised on Radio)」というタイトルを纏った本作は、そのど真ん中にいた自分にとって、とても誠実な音楽に思えるのです。

2026年5月8日金曜日

ヨハン・ヨハンソン:ピアノ作品集 | アリス=紗良・オット



札幌は雨が続くようだ。こんな日にはアリスのピアノがいい。
選んだのはこのアルバム。

『ヨハン・ヨハンソン:ピアノ作品集』

ヨハン・ヨハンソンの代表曲(映画『博士と彼女のセオリー』やアルバム『エングラボルン』などから選曲)を、アリス=紗良・オットがソロ・ピアノで世界初録音した全30曲のアルバム。

騒がしい日常に、内省的で親密な時間をもたらしてくれる一枚。
アリスはヨハンソンの音楽を「自然と心を集中させ、内面へと導いてくれる」と評している。

静謐で美しい旋律がソロ・ピアノによって新たな命を得た。

関連リンク

2026年5月7日木曜日

村上春樹・新作出版に寄せて:これまでの「物語」が描いてきたもの、そして巡礼の軌跡





村上春樹の新作予約がスタートしましたね。

いくつかの作品について、その時々の気持ちを記録してきた当ブログ。ここで一度、これまでのレビューを振り返って、村上作品が問いかけてきたものを整理してみたいと思います。



1. 運命への冷徹な視線と、その「相剋」


初期の短編「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」『国境の南、太陽の西』において、作者は、運命というものに対してきわめて冷徹な視線を注いでいました。
人はすれ違い、運命は成就しない。

しかし、その冷徹さは『1Q84』において大きな転換を迎えます。
独立した一人称が自分自身の強さで時間と戦い、勝利する。
近作においても繰り返し語られる「運命に抗うこと」が、新作においてどう描かれるのか、注目したいところです。



2. 「父性」と「歴史」の継承


『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』『騎士団長殺し』の考察で重視してきたのが「父性」というテーマです。

多崎つくる: 経済成長を驀進した父の世代から、息子たちが何を引き継ぎ、何を「なかったこと」にしようとしているのか。


騎士団長殺し: 現代の父親が何を犠牲に捧げ、どのような未来を手に入れるのか。

村上作品が描く「父の視点」は、単なる家族の物語ではなく、日本の戦後史や暴力の記憶と密接に結びついています。

3. 21世紀的な「暴力」と「恐怖」


『1Q84』のレビューで触れた通り、オーウェルが描いた国家的な「ビッグ・ブラザー」に対し、物語は個人と地下世界を結ぶ「リトル・ピープル」を対置させました。
これは誰しもの内側に潜む不可解な恐怖や暴力のメタファーでしょう。
  『騎士団長殺し』での南京大虐殺や震災への言及も、フィクションという武器で現実と向き合おうとする試みなのかもしれません。

4. 喪失のあとの「希望」


短編集『女のいない男たち』や、映画化された『トニー滝谷』に通底していたのは、激しい喪失のあとに残るわずかな「希望」の光です。 「人生には、たまにはいいことだって起こっていいんじゃないか」という<祈り>にも似た通奏低音が、村上作品を追いかけ続けるモチーフになっています。

結びに代えて:新しい「巡礼」へ


村上作品を読むことは、私たち自身の心に棲む「リトル・ピープル」と対峙し、自分自身の「巡礼の年」を歩むことでもあります。

新作では、どのような「企み」で、この世界を書き換えようとするのか。心静かに待ちたいと思います。

2026年4月28日火曜日

映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』レビュー|原作ファンの私が思う魅力、見どころを語るよ!












2026年公開の映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、アンディ・ウィアー原作の大ヒットSF小説を映像化した話題作です。

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」で宇多丸さん・宇垣美里さんが原作発刊時に絶賛しているのを聴いて、それ以来映画化をずっと待っていたわけで、いやが上にも盛り上がっておりました。

本記事では、

  • 映画としての完成度
  • 特に印象に残ったシーン
  • 音楽・演出の魅力

を、ネタバレ最小限で丁寧にレビューします。


映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』とは

原作はアンディ・ウィアーの傑作SF

原作小説は『オデッセイ』で知られるアンディ・ウィアーの作品で、科学的なリアリティと人間ドラマが高く評価されています。

映画化発表時から大きな注目を集め、公開前から「映像化困難」と言われていた作品でもあります。


映画版の制作背景

映画版はライアン・ゴズリング主演で制作され、原作の複雑な科学描写をどのように映像化するかが大きな焦点でした。


映画を観た感想(ネタバレなし)

原作ファンとしての満足度が高い

原作の“語り口”や主人公のユーモアが、ライアン・ゴズリングの演技によって見事に再現されていました。

特に、主人公の孤独・恐怖・希望が丁寧に描かれており、原作の魅力を損なわない仕上がりです。


映像化が難しい要素をSFXで見事に表現

原作では科学的な説明が多く、映像化が難しいとされていましたが、映画ではSFXを駆使して“理解しやすく、かつ美しい”形で表現されています。




印象に残ったシーンと演出

宇宙空間の孤独と緊張感

映画序盤の“孤独な宇宙空間”の描写は圧巻で、観客を一気に物語へ引き込みます。


葛藤と希望を描くクライマックス

鬼指揮官エヴァ・ストラット(サンドラ・ヒュラー)がワン・ダイレクションの「Sign of the Times」を独唱するシーンは個人的ベストワンの名シーン。

宇宙への旅立ちの前夜催された壮行会の中で人類のために非情を貫く指揮官が唄うその歌が素晴らしいですね。

この映画は必ずBlu-rayでも入手するつもりで、それはこのシーンを何度でも観たいからなんです。



画像クリックで収録CDにリンクします



まさに英雄を讃える歌。
この作品は栄誉の影にある犠牲についての物語でもある、と僕は思います。

2026年4月26日日曜日

Dave Mason追悼 ― “Alone Together”から始まった旅

















2026年4月19日、Dave Masonが79歳でこの世を去った。

Trafficの共同創設者として、“Feelin’ Alright?” を書き上げ、ソロとしても “Only You Know and I Know” や “We Just Disagree” など数々の名曲を残した彼の訃報は、誰にとっても大きな悲しみだったと思う。

私にとってのことを言えば、Dave Masonは“歴史上の偉大なギタリスト”ではなく、一枚のアルバムを通して静かに人生に入り込んできた存在だった。


■ Alone Toghterとの出会い


私がDave Masonを知ったのは、1970年のソロデビュー作 『Alone Together』 だった。

あの独特のマーブル模様のジャケット、そして“Only You Know and I Know”の軽やかな疾走感。

当時の私にとって、このアルバムは“70年代ロックの深部へと続く扉”のような存在だった。

そこから自然と遡るようにTrafficへ辿り着き、“Hole in My Shoe” や “Feelin’ Alright?” の瑞々しいサイケデリック感に触れた。Trafficの音楽は、Masonのソロとはまた違う、英国ロック特有の湿度と自由さに満ちていた。


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■ 私が所有してきたDave Mason作品


長年聴き続けてきたアルバムを並べてみると、私自身の音楽遍歴そのもののようにも思える。
Alone Together (1970)
Headkeeper (1972)
It’s Like You Never Left (1973)
Dave Mason (1974)
26 Letters 12 Notes (2008)
Alone Together Again (2020)
Dave Mason & Cass Elliot (1971)
特に“Headkeeper”や“It’s Like You Never Left”の温かいアコースティック感は、Traffic時代のサイケデリックさとは異なる、成熟したソングライティングの妙味を感じさせてくれる。
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■ ロック史の“交差点”として


Masonはしばしば「ロック界のフォレスト・ガンプ」と呼ばれる(とAIさんが言ってた)。
確かに彼はJimi Hendrix、George Harrison、Rolling Stones、Paul McCartneyなど、時代を象徴するアーティストたちと交流してきた。
特にHendrixの“All Along the Watchtower”でのアコースティックギター参加は、彼の職人的な存在感を象徴している。
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■ “静かに寄り添う音楽”として

Dave Masonの音楽は、派手に主張するタイプではない。
むしろ、人生のある瞬間にふと寄り添ってくれるような、そんな温度を持っている。
彼が亡くなった今、改めて“Alone Together”を聴き返すと、
あの頃と同じ風景が静かに立ち上がってくる。
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■ 最後に

Dave Mason、あなたの音楽はこれからも私の生活のどこかで鳴り続けます。
Trafficからソロ作まで、あなたが残した音の軌跡は、ロック史だけでなく、
一人のリスナーの人生にも確かに刻まれました。
心からの感謝とともに、どうか安らかに。

2026年4月24日金曜日

映画『昼下がりの情事』レビュー|ヘプバーン作品の魅力とおすすめ作品も紹介

オードリー・ヘプバーンとゲイリー・クーパーが共演した名作『昼下がりの情事』を、NHK の録画で久しぶりに鑑賞しました。

ロマンティックな展開と軽妙なコメディ要素が絶妙に混ざり合い、改めて“ヘプバーン映画の魅力”を感じさせてくれる一本です。

本記事では、
  • 映画の魅力
  • 印象に残ったポイント
  • ヘプバーン作品の中での位置づけ
  • 個人的におすすめしたい関連作品

をまとめてみます!




映画『昼下がりの情事』とは?

オードリー・ヘプバーン × ゲイリー・クーパーの名コンビ


1957年公開のロマンティック・コメディで、ビリー・ワイルダー監督による軽やかな語り口が特徴。

ヘプバーンの可憐さと、クーパーの渋い魅力がたまらん作品です。
ロマンティックでありながらユーモアも豊富

タイトルから想像するよりも、物語は軽快でユーモラス。

恋愛映画でありながら、コメディとしても楽しめますね。

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実際に観て感じた魅力

ヘプバーンの“キレッキレのコメディエンヌ”っぷり


ヘプバーン作品はどれも魅力的ですが、本作では特にコメディエンヌとしての才能が光ります。

持って生まれたものなんだろうなあ・・・・
テンポの良い展開で最後まで飽きない

ロマンティックな雰囲気を保ちながらも、テンポよく物語が進むため、古い映画にありがちな“間延び感”がありません。

ビリー・ワイルダー監督らしい軽快さが全編に漂っています。

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ヘプバーン作品の中での位置づけ

個人的に好きなヘプバーン作品


ヘプバーン映画はどれも魅力的ですが、特に好きなのは以下の3作です。
  • 『麗しのサブリナ』:ファッションが素晴らしく、物語も軽やか
  • 『おしゃれ泥棒』:コンパクトで文句なく楽しめる名コメディ
  • 『シャレード』:ミステリーとしてもよくできている

あえて本稿では触れないが…


映画史に残る大傑作『ティファニーで朝食を』は別格として、今回はあえて触れません。

逆に世評は高くないかもしれませんが、今回どうしてもご紹介したいのが『暗くなるまで待って』 です。

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『暗くなるまで待って』との個人的なつながり

北海道で出会った“特別な映画”


北海道出身のロックバンド HAN-NA が、かつて「暗くなるまで待って」というタイトルでデビューシングルを出していました。

自分も関わった北海道のロックシーンを取り上げたNHKの番組でこの曲を知り、「いい曲だな」とずっと思っていたところ、後にヘプバーンの同名映画に出会ったという経緯があります。

映画と音楽が結びついた瞬間


映画を観たことで、タイトルの意味合いが深まり、音楽と映画が自分の中で自然につながっていきました。

こうした“偶然の出会い”が、映画鑑賞の楽しさをより豊かにしてくれますね。

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まとめ|ヘプバーン作品の魅力を再確認できる一本


『昼下がりの情事』は、ロマンティックでありながら軽快なコメディとして楽しめる名作です。

ヘプバーンの魅力を再確認したい人にも、クラシック映画を気軽に観たい人にもおすすめできる一本です。

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関連リンク

映画『ニュー・シネマ・パラダイス インターナショナル版』レビュー|映画史に残る名ラストシーンへのタペストリー

1988年公開のイタリア映画(ジュゼッペ・トルナトーレ監督)。

中年を迎えた映画監督が、故郷の映写技師の訃報をきっかけに、映画に魅せられた少年時代と青年期の切ない恋を回想する物語。

エンニオ・モリコーネによる郷愁を誘う音楽とともに、「映画への愛」を描いた不朽の名作として世界中で愛されている。

 

鑑賞レポ:インターナショナル版と完全版


NHK-BSで今回放映された『ニュー・シネマ・パラダイス』は、最初の劇場公開版と同じ123分の「インターナショナル版」だった。

DVDで観た「完全版」では、追加された彼女のその後と再会のシーンに激しく心が揺さぶられたが、その感情と「あの」ラストシーンとの整合が自分の中ではうまく処理できず、複雑な鑑賞となった。

今回改めて観たオリジナル版は、全てがラストシーンに向けて織り上げられた見事なタペスタリーのようで、最初から最後まで泣き通し、ラストでは大決壊、今これを書いていても泣けてくる。

撮り溜め映画鑑賞レポ:『パピヨン』

 モンテ=クリスト伯(巌窟王)の影響で脱獄モノはかなり好きなジャンルなんだが、1973年の映画『パピヨン』はまだ観ていなかった。

スティーブ・マックィーンとダスティン・ホフマンの迫真の名演に引き摺り回され、ラストのダイブ一閃にまるで自分が脱獄に成功したような気分になった。
エンドロールで、映画の舞台になった漫画みたいな劣悪監獄が実際に存在したと知ってこれもびっくり。
欧州は法の精神の先進国だと思っていたが、やはり人間のやることはそう変わらない、ということか。
2019年にチャーリー・ハナムとラミ・マレックでリメイクされているらしい。



撮り溜め映画鑑賞レポ:『ひまわり』

 映画好きなら誰でも知ってる『ひまわり』ですが、あまりの「名画」感に気圧されてなんとなく観そびれていました。

NHK-BSで放送されたのを好機とみて鑑賞に至りました。
いやーまいった。
カメラによって切り取られたすべての瞬間が美しい。
会社員時代に何度か行ったイタリア旅行で、滞在地のフィレンツェからシエナに向かう電車から見えた一面のひまわり畑の印象が強かったせいか、この映画が紹介される度に使われるひまわり畑の壮大な光景もイタリアなんだとばかり(イタリア映画だしね)思い込んでいたが、実際はウクライナの風景で、それがこの映画のキーになっている。
マルチェロ・マストロヤンニは、『甘い生活』での役どころとほぼ同じ、優柔不断で弱い男を演じていた。
まったく他人事ではなく、芯の強さではソフィア・ローレン演じるナポリ娘ジョバンナといい勝負をするだろう我が賢妻を大事にしなくては、と強く心に誓った。



撮り溜め映画鑑賞レポ:『夜の大捜査線』

 NHKは番組編成において、時々気の利いた演出をする。

映画『夜の大捜査線』の放送に合わせて、クインシー・ジョーンズが音楽業界に与えた衝撃についてのドキュメンタリー(アメリカ製作)を放送した。
『夜の大捜査線』全編に流れるクインシー・ジョーンズの都会的なセンスが、この映画に描かれるアメリカ南部の黒人差別の苦々しさをペーソスに変換する役割を果たしていると感じられたのは、事前にこのドキュメンタリーを観ていたからだろう。
『踊る大捜査線』が、クライム・サスペンスの名作として知られるこの映画のタイトルからインスパイアされた(「踊る」は『踊る大紐育』から)ことはよく知られているが、今まで実際に観る機会はなかった。
対立する立場の警官たちが最後に友情を育んでいくラストの胸熱シーンは、多少ベタではあるがやはりエンタメはこうでなきゃ、という満足感がある。
続編もあるようなので楽しみ。

撮り溜め映画鑑賞レポ:『フォード VS フェラーリ』


『フォード VS フェラーリ』は、少年時代『サーキットの狼』に夢中になった自分にとっては、どうしても劇場で観たかった映画だが、ちょうど激務の渦中にいて観られなかった。
 NHK-BSで放送してくれたおかげで、やっと鑑賞できたが家の小さなテレビでもなかなかどうして楽しめる作品であった。
ドラマを象徴するシーンとして、経営者風を吹かせて現場をかき回すヘンリー・フォード2世をGT40に乗せて現実を見せつける場面があるが、子供のように泣き喚くトレイシー・レッツの熱演に溜飲を下げ、そしてこんなことに溜飲を下げた自分が少し恥ずかしくなった。
実際のヘンリー・フォード2世も毀誉褒貶ある人物であったが、個人的には好きな経営者の一人。伝統あるフォード社の姿を大きく変革した名経営者だったと思う。
そのうちの一手がフェラーリの買収であったが、その挫折に至る道筋がこの映画の本題。
僕は企業再生の映画として観た。



2026年4月22日水曜日

『フランケンシュタイン』光文社古典新訳文庫で再読

本棚の整理をしている。

あれも読みたい、これも読みたいと買い続けた本が本棚から溢れる度に、メルカリやらブックオフやらで処分してきたが、そもそも何列にも重ねて押し込んでいる奥の方の本はずっと手付かずのままだった。
またしても決壊した本棚に意を決して、奥の奥まで捜索対象を広げてみたところ、そうだこんな本もあんな本も持ってたなあと再読の誘惑が燎原の火のように襲いかかってきて、今回は『フランケンシュタイン』を再読することに。

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10年ほど前の古層からの掘り出し本である。
冒頭からまったく記憶になく、新鮮な驚きのままに最後まで駆け抜けた。
むしろ教訓的な要素はすでに心得ていたわけで、今回の読書では純粋な文学的喜びが心を占めていた。
再読の醍醐味です。






復刊ドットコムの大仕事『新・幻魔大戦<完全版>』がすごい!

 (たぶん)中学生の頃だったと思う。

小遣いを貰うと、近所にあった長内書店という小さな小さな書店に行って角川文庫の『幻魔大戦』(全20巻)を一冊づつ買うのが楽しみだった。

角川版が完結した後、徳間ノベルズおよび徳間文庫で『真幻魔大戦』として書き紡がれたものも、社会人になってからも引き続き読んでいた。
生活環境が幾度か変わるたびに、いろんなものをなくしてきたが、幻魔大戦の膨大なコレクションもその一つだった。
ふと思い出してAmazonを覗いてみると、『新・幻魔大戦<完全版>』と銘打って、何やら愛情たっぷりに編集されたものが出版されているではありませんか!

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1967年少年マガジン誌で連載開始された石ノ森版(当時は石森)の漫画はエンディングが描かれないまま突然の打ち切りとなり、別媒体で新規構想のもと続編が描かれていた。その続編パートと平井和正先生が別に書き続けた原作小説が時系列に沿って収録されているという資料性の高いもの。
当時の出版社事情も含め、興味深く読み進めている。