70年代のアメリカン・ポップ・ロック・シーンを語る上で欠かせないバンド、オーリアンズ(Orleans)。その中心人物であったジョン・ホール(John Hall)が1977年にバンドを脱退し、ソロアーティストとして新たな一歩を踏み出した。その記念すべきオープニングを飾るのが、1979年にリリースされたソロ・アルバム『Power』である。
本作は、一見すると洗練された極上のポップ・ミュージックでありながら、その内側には強い社会的メッセージを秘めた、ジョン・ホールの職人技が光る名盤だ。
甲斐バンド『ビューティフル・エネルギー』とギミックを共有する冒頭曲「Home at Last」
日本のロックやニューミュージックに親しんできた50〜60代のリスナーであれば、本作の幕開けを飾る「Home at Last」のイントロが流れた瞬間、思わずニヤリとしてしまうに違いない。そう、甲斐バンドが1980年に大ヒットさせた名曲『ビューティフル・エネルギー』(ドラムの松藤英男がボーカルを担当)のあの印象的なリフや楽曲全体の色彩感が、この曲の放つ空気感と見事にシンクロするのだ。
巧みに練られたコード進行、リスナーの耳を一瞬で捉えるキャッチーなフック、そして無駄のない洗練されたアレンジメント。「Home at Last」と『ビューティフル・エネルギー』の双方に共通するのは、ポップ・ミュージックとしての完成度の高さと、一度聴いたら忘れられない音楽的ギミックの妙である。ジョン・ホールのソングライティング能力には、脱帽するほかない。
オーリアンズ(Orleans)の成功と、ジョン・ホールのソロ転向
ジョン・ホールを語る上で、彼が率いたウエストコースト・ロック/ソフトロックの名バンド「オーリアンズ」の存在は外せない。
オーリアンズは1972年にニューヨークで結成され、爽快なツイン・ギターと美しいボーカル・ハーモニーを武器に、1970年代の音楽シーンを席巻した。彼らの代表曲である「Dance with Me」(1975年)や「Still the One」(1976年)は、今なおラジオから流れ続けるタイムレスな名曲だ。
しかし、バンドが商業的な絶頂期を迎える中、ジョン・ホールは1977年に脱退を決意する。その背景にあったのは、より個人的で、かつ社会性の高いメッセージを自身の音楽に込めたいという強い表現衝動であった。その明確なビジョンが形となって現れた最初の結晶が、本作『Power』なのである。
徹底解説:アルバム『Power』の楽曲分析と音楽的魅力
本作の最大の魅力は、「社会派」という硬派なテーマを掲げながらも、音楽的にはどこまでも耳に心地よいポップ・サウンドへと昇華されている点にある。
タイトルトラック「Power」に見る鋭い視点
アルバムの核心をなすタイトルトラック「Power」は、原子力発電への懸念やエネルギー問題という、当時のアメリカ社会が直面していたシリアスなテーマを歌った楽曲だ。
メッセージ自体は重厚だが、ファンキーで軽快なカッティングギターと、オーリアンズ時代を彷彿とさせるキャッチーなメロディラインによって、リスナーに拒絶反応を起こさせないポップ・ソングに仕上げている。
AORとしての洗練とギタリストとしての実力
また、レコードのB面1曲目に配された「Run Away With Me」も必聴の仕上がりだ。
都会的で洗練されたAORのグルーヴに乗せて展開されるジョン・ホールのギターソロは、メロディアスでありながらもテクニカルであり、彼がソングライターとしてだけでなく、超一流のギタリストでもあることがわかる。
アルバム全体を通じて、アコースティックな温かみと、洗練されたスタジオ・ワークが見事なバランスで同居していることも特筆すべきポイントだ。






























