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「ジョンの息子」という宿命の重さとは比べ物にならないが、僕の父もその世界では名の知れた人だったので、子供の頃は、ああ、あなたが息子さんですか、と言われるたびに複雑な気持ちにはなった。
しかしどちらかというとその「特別な」感じが誇らしくもあったことをよく覚えている。
1984年にリリースされたジュリアン・レノンのデビュー作にして最高傑作、『Valotte』。
当時、針を落とした瞬間に誰もが「あの声だ……」と息を呑んだはず。僕は、自分の子供時代のことを思い出して、あの複雑で特別な気持ちを心の中で再生していた。
「レノンの血」を証明した鮮烈なデビュー
ジョン・レノンの長男として生まれたジュリアン。彼が満を持して発表したこのアルバムは、単なる「二世アーティスト」の話題性を超えた、一人の音楽家としての素晴らしい完成度の作品だと思う。
- フィル・ラモーンによる洗練されたプロデュース
80年代らしい煌びやかさと、タイムレスなシンガーソングライターとしての深みが絶妙なバランスで共存しているのは、ビリー・ジョエルをトップスターにしたフィル・ラモーンの力も大きいだろう。- 「あの声」の魔力
繊細で、少し鼻にかかったような独特の歌声。それは紛れもなく父親譲りだが、ジュリアン自身の持つ「優しさ」や「儚さ」のようなものが、ある種の叙情性を生んでいると思う。音楽的素養と深いコード理論の理解を滲ませる楽曲たち
- 「Valotte」
アルバムのタイトル曲。静かなピアノのイントロから始まり、複雑な転調構造によって構築された楽曲の大きさが、フランスのヴァロット城(the Manor de Valotte)で制作されたという背景を感じさせる。歴史に残るべき名曲。
- 「Too Late for Goodbyes」
軽快なリズムとハーモニカが印象的な、アルバム中最もキャッチーな曲。明るい曲調の裏側に、どこか切なさが同居しているのがジュリアンの音楽の本質なんだろう。
- 「Say Goodbye」
バラードとしての完成度が非常に高く、このアルバムを一貫して彩る音楽的素養、知識のレベルの高さが染み出している一曲。
比較される運命を越えて
声が声だけに、どうしてもジョンと比較されることは承知の上で、80年代らしいリスナー重視のジョン・レノン風ポップミュージックを提示してみせたこのデビュー作。ジュリアン・レノン、どう考えても只者ではない。
子供の頃からミュージシャンになりたくて、多分ジョンにおねだりして1974年のアルバム『心の壁、愛の橋』に収録の「ヤ・ヤ」でドラムを叩かかせてもらってたりするので、心を通わせあう瞬間もあったろう。
父君よりも長く、安定したミュージシャン稼業を続けているジュリアンの音楽を聴いていると、世界は思ったよりいいものなのかも知れない、と思う。本当に。














