2026年4月20日月曜日

『ナイアガラトライアングル vol.1』と『Ring-a-Bell』の両デラックスエディションは同日に届いちゃったら必然的に一日中大瀧漬け

 3/21同日発売となった『ナイアガラトライアングル vol.1』と大瀧詠一プロデュースの大名盤、渡辺満里奈『Ring-a-Bell』の両デラックスエディションは当然同日に届く訳で、必然的に一日中大瀧漬けである。




『ナイアガラトライアングル vol.1』には、一人でカラオケスナックに行くと、この曲を歌う頻度がもっとも高い伊藤銀次先生の『幸せにさよなら』が収録されている。
やっぱりいい曲だ。
ミュージシャンの先輩に教えてもらって愛聴盤となった渡辺満里奈さんの『Ring-a-Bell』は発売30周年、渡辺満里奈デビュー40周年の記念盤。
オリジナル盤には収録されていなかった大貫妙子作『高い空遠い街』が追加されていて、これがまた名曲だったり、佐野元春作の『ダンスが終わる前に』もやっぱりいい曲で、どう聴いても名盤なんだが、ブックレットに当時の写真がかなり追加されていて、本当に買ってよかったと思わせる企画だ。






ミスチルとコールドプレイと古い心の傷跡と

ミスチルの新譜は、一度集中して全編を聴くことにしている。もちろん今回の『産声』も。

画像クリックでAmazon商品ページにLinkします


『Again』で聴ける小林武史渾身のピアノが嬉しい。
原点回帰的な楽曲『Nowhere Man』でも小林らしい推進力あるピアノが聴けて、古いファンにはたまらんプレゼントだ。
珍しく『Saturday』という楽曲で、シカゴの『Saturday in the Park』によく似たイントロを添えるという洒落を効かせている。
5曲目に配された『Glastonbury』は、「2002年のグラストンベリー / YouTubeでチラ見 / クリスは絶好調」というなんとも気になるフレーズで始まる。
調べてみるとやはりコールドプレイのクリス・マーティンのことであった。
まだ東京で働いていた頃、コールドプレイを録音したMDをウォークマンでよく聴いていた。
札幌に移住して古い友人と再会した時、コールドプレイが好きなんてセンス悪いな、と言われて深く傷ついたことは一生忘れないと思うが、『Glastonbury』を聴いて少し救われたような気がした。

どう作っても「カッコよく」なってしまうCharの古希記念ライブが凄かった

 Charの古希記念ライブ〈Char Nippon Budokan Live 2025 - Purple Phase Jam〉をCD2枚とBlu-rayで収録したパッケージが届いた。

画像クリックでAmazon商品ページにLinkします


福原みほさんの元気そうなお姿に、それだけでもホッとしてしまうが、春畑道哉(TUBE)やら野村義男、山内総一郎(フジファブリック)やら、大物然とはしていないが界隈では極めて評価の高いギタリストたちが出てきて夢のようなセッションが延々と続く。
Jesse、金子ノブアキ、KenKenといった、Charファミリーの息子たちや、山岸竜之介、並木瑠璃という新世代の超絶ギタリストたちにも(当然ながら)強い影響を与えながら日本のロックシーンを牽引している様子がわかるが、ラスト近く、大物中の大物、布袋寅泰がめちゃくちゃ恐縮しながらセッションしている様子がすべてを物語っていた。

今回の案件での掘り出し物は山岸竜之介という若者で、マーク・ノップラーそっくりにスライドギター弾くのを見てひっくり返った。
今度真似してみよ。
こうして彼の芸歴を振り返ってみると、どう作っても「カッコよく」なってしまうのがCharなんだな、と。
いいもん見せてもらいました!

わらしべ長者や風が吹けば桶屋が儲かる、の厄災版カタログ

 散歩の途中、気まぐれに立ち寄った小さな書店で激しく推していた本を買ってみた。

画像クリックでAmazon商品ページにLinkします


少し皮肉めいた視点で書かれた人類史で、現在の世界がなぜこんな姿をしているのかを知るための、ある種のヒントを提示している。
ただし語り口は、ユーモラスの域を少し超えてアイロニカル。

毛沢東が害獣駆除を企図した際、「蚊」「鼠」「蠅」と考えて、四つの方がいいな、と考えて「雀」を追加したら、それがイナゴの大発生を呼び、1500万とも3000万とも言われる飢餓死者を出したというのは、著者曰く「わらしべ長者や風が吹けば桶屋が儲かる、の厄災版」と確かに言えなくもない。

ダグラス・アダムスの大ファンである私には抵抗がなかったが、万人向けではないかも知れないな。

クラシックピアニストが弾く『ザ・ケルン・コンサート』

ちょっと面白いCDを見つけたので買ってみました。 山口ちなみさん(本盤がデビュー盤)というクラシックのピアニストが、即興録音のキース・ジャレット『ザ・ケルン・コンサート』をフル起しの楽譜から弾く、という企画。
画像クリックでAmazonの商品ページにリンクします

しかもキース嫌いで有名な寺島さんのレーベルから発売されるという。 なかなか話題性のある、趣味性の高い凝った企画です。 

聴いてみると、ああなるほど、ジャズとクラシックはこのように違うのか!という発見がありますね。 
改めてキース・ジャレット『ザ・ケルン・コンサート』の奇跡の名盤ぶりが際立ちます。 

まあ企画が企画だけに、聴けばキースに軍配が上がるでしょうが、新人さんでこんな声が掛かるくらいの期待株。 
行きすぎた演出気のないピュアな音色がどこまでも美しい。 本業のクラシックでリリースがあればぜひ聴いてみたいものです。

怪奇趣味を湛えた異色のルパン作品『三十棺桶島』

 アルセーヌ・ルパン『三十棺桶島』面白かった!

画像クリックでAmazonの商品ページにリンクします


解説にもあるが、『獄門島』を思わせる怪奇趣味の一作で、金田一耕助シリーズをテレビで楽しんだ世代として格別な想いでページをめくった。
平成初期に熱中した『新本格』の諸作に通じる「怪奇だが美しい」謎の提示にも痺れるし、危機一髪のアクションシーンがこれでもかと続く後半では、どんでん返しの波状攻撃に脳がヘトヘトに。
光文社古典文庫お得意の、原作からの転載と思われる挿絵も嬉しい。

泣くことで救われたっていいじゃないか:『秒速5センチメートル』

 新海アニメの実写化『秒速5センチメートル』をBlu-rayで。

画像クリックでAmazonの商品ページにLinkします


正典であるところのアニメ版は、第1話「桜花抄」、第2話「コスモナウト」、第3話「秒速5センチメートル」の3部構成で、全編で63分のコンパクトな作品。
実写版では非常に魅力的な登場人物たちが、それぞれの葛藤をこれでもかと拗らせていく展開で、見どころ満載であったが、結果的には121分(現代映画の尺度では決して長くないが)の映画となり、重要な役どころを演じた木竜麻生の熱演が冒頭と終盤の泣き別れになったりして、印象が散漫になり少し残念なところもあった。
反面、種子島シーンに集中した森七菜は、役柄が本人のキャラクターそのまんまだったこともあって非常に良かった。
新海アニメ初期の大傑作『雲のむこう、約束の場所』で主役の声優を務めた吉岡秀隆も、本作で再登板、主人公貴樹の拗れを解きほぐす重要な役を演じ、貴樹のみならず、観ているこちらの涙も激しく誘った。
泣くことがこの映画を鑑賞する正しい姿勢なのだろう。
「泣く」ことが「救い」の装置として仕掛けてある物語なのだから。

2025年12月20日土曜日

さらば真空管、デジタルオーディオとアナログプレーヤー

 2007年から愛用してきたMcIntosh C2200 & MC275ペアは、またしても「ボンっ!!」という嫌な音を立てて真空管が飛んだ。


ここ最近の視聴会では、デジタルアンプの音が好印象で、しかも子供の頃憧れていたテクニクスが近年いい感じの復活を遂げている。

私ごとだが、還暦に届いたのを機に仕事から引退してみたので、この機にオーディオの入れ替えを目論んだ。

条件の最優先事項はSACDの再生環境だった。
ジャズ、クラシックでシングルレイヤーの盤を数枚持っていること、さらに不確かな情報だが海外ではあまりラインナップされていないSACDの再生装置の開発がいつ終了してもおかしくないことから、最後のSACDプレーヤーとしてテクニクス機が良さそうに見えたのです。


これに併せてテクニクスの新プリメインアンプがデジタル仕様なのが良い。そして今どきのVUメータも嬉しいじゃないですか。


ここまできたらレコードプレーヤはもちろんテクニクスと行きたいところなのですが、DENONさんが魂込めて作ったやに見える、新モデルが良さそうすぎてついこちらを発注してしまったのですなー。


型番DP-3000NEと、伝統のエースナンバー3000番を奢られているのも嬉しい。
せっかくのDENONですからカートリッジもDL103を。
なんとテクニクスアンプはリモコンで、MC/MMの切り替えができるんですよ。

この新しい機器は、いくら長く聴いていてもまったく熱くならないのが安心です。
また電源系も含めほとんどの操作を一つのリモコンで操作できるのも、実に快適。
DENONのプレーヤは単独の電源スイッチがなく、ターンテーブルの回転を止めると電源が同時に落ちるようになっていて、これまた実に合理的。

なんか新しい機器はいろいろ快適ですわ。

2024年5月6日月曜日

LAURA IZIBOR『LET THE TRUTH BE TOLD』

2009年アトランティック・レコードの肝入りでデビューしたアイルランドの22歳ローラ・イジボア。
デビュー前からアレサ・フランクリンやジェイムス・ブラウンのオープニングアクトを務めてきたという期待の新星にアトランティックはこのデビュー盤のレコーディングになんと4年を費やしたという。
 
フィメールボーカルのお気に入りを続けて紹介してきたがこの盤にトリを取ってもらおう。
それだけの内実を伴った名盤だと思う。
 
リード・トラックの『SHINE』が素晴らしい。ファルセットからチェストボイス、そしてエッジボイスまで七色に融通無碍に変化するローラの歌声のサンプルブック。 
 
続く楽曲を聴き進めば、ソウルの伝統に寄り添ったローラ自らが手掛けるソングライティングに気持ちが引き寄せられていく。
奇を衒ったところのない王道でありながら、声の表現に頼り切ったありきたりなメロディになっていないところも好感が持てる。
 
それにこのCD、実に音が良いのです。
リズム・セクションの生々しさはハイハットの表情を聴けばわかるし、音楽のスタイルはトラディショナルだが、ギターの音が現代のアンプで録られているのがわかるほど分離が良い。
目の前で演奏しているようなピアノの音に乗せたバラードはまさに音楽の愉楽。 

この人、これ以降作品をリリースしていないようですが、何度聴いても簡単には飽きないと思うので音の良いCDでぜひ。

2024年5月5日日曜日

Sonya Kitchell『Words Came Back To Me』

ソーニャ・キッチェルは2005年のデビュー当時には聴いていなかった。
グレイス・ポッターを聴き込んでいくうちに、同時期にリリースされたソーニャのデビュー盤に行き当たった。
 
画像クリックでAmazonの商品ページにリンクします

国内盤CDの解説を読むとノラ・ジョーンズとの類似性について紙幅をとって語られているが、1曲目の『TRAIN』を聴いて心を突いたのは、まるでトム・ウェイツじゃないか!という驚きだった。
芝居がかったイントロから老成した歌を紡いでいくこのシンガーが16歳だとはとても信じられなかった。
 
そして2曲目の『LET ME GO』を聴いて得心した。この曲が実にノラなのだ。
それにサウンド・プロダクツもジャズとSSW的音楽の垣根を軽々と飛び越えたノラのように理知的でスムースだった。
 
しかし続けて聴いていくとそこに乗っている歌は、実に様々な表情を持っていて音楽的素養の深さを感じる。
これが16歳の作品か・・
天才っているんだな・・・
 

2024年5月4日土曜日

Grace Potter and the Nocturnals『Nothing But The Water』

時々古い雑誌を読み返して、気になったCDを買うことがある。
このGrace Potter and the Nocturnalsの『Nothing But The Water』もそんな一枚だ。
 
画像クリックでAmazonの商品ページにリンクします

2005年にリリースされたもののようだ。
1曲目の『Toothbrush and my table』歌い出しの声にボニー・レイットによく似た雰囲気を感じた。
歌詞にJJケイルが登場するのも印象深く、レコーディングエンジニアがタジ・マハルを録ったチャック・エラーだというからこのアルバムがハズレなはずがない。

曲調はボニー・レイットからノラ・ジョーンズ、ブルーズまで幅広いが、グレイスの声がすべての曲を自分の音楽にしてしまう。
ずっとこの声を聴いていたいと思わせる。
 
長く愛聴する盤になりそうだ。



2024年3月20日水曜日

『DUNE 砂の惑星 PART2』を観てきたよ

『DUNE 砂の惑星 PART 2』
公開日に駆けつけたかったが叶わず、本日観てまいりました。 
 

 
今回『PART 1』もアマプラで観直して準備万端で臨んだ。
 
1・2とも2時間半を超える大作で、映画館で観るには少々しんどい尺だが、あの難解なドラマをよくぞここまで明快でスペクタクルに描いたものだ。
いい意味で『砂の惑星』マニアではない感じ。 
レベッカ・ファーガソン演じるポールの母レディ・ジェシカが美しすぎて、ちっとも魔女に見えないのと、フローレンス・ピューの皇女イルーランが上品すぎてちっとも高慢チキでも憎たらしくもなかったのも、今回の映画の「らしさ」のような気もする。
毎回出ればすべて攫っていくクリストファー・ウォーケンが今回あまりオーラが出ていなかったことは気になった。体調など崩していなければいいのですが。 
 
デヴィッド・リンチ版と比較してみれば物語の改変度は小さなもので、映像技術の進化の貢献度も大きいだろうが、ポール・アトレイデスが救世主になる過程に物語を絞りこめたところに勝因があったように思う。 
ダンカン・アイダホの描かれ方や、スパイスの宇宙航行での使われている様子とか、原作ファンなら、そこ大事なとこじゃん!と言いたくなってしまうこだわり要素を、わりとサラッと流すことで、リンチ版の二の舞を避けている(失礼!)のだろう。
 
時代的な変化もあるのかもしれない。
原作の新訳刊行時に再読した時は、キリスト教とイスラム教の歴史的軋轢を下敷きにしたものという認識だったが、今回はロシア的価値観と西欧との相剋に似たものを感じた。
ハルコンネン当主の名がウラディミールであったことも多少影響しているのだろうか。 
 
それにしてもあまりにもよくできた脚本故なのか、帰ってから酒井先生の新訳をパラパラめくっていくと、あんなに難解だと思っていた原作がスーッと頭に入ってくるではないか。 
新訳がよくできているというのもあるが、やはり映像の力は大きい。

現在原作の新訳化も順調に進んでおり、映画公開に合わせて、第3巻『砂丘の子供たち』も無事刊行された。
 
画像クリックでAmazonの商品ページにリンクします

 今回の映像化で、『スター・ウォーズ』も『風の谷のナウシカ』も、この作品世界から非常に大きな影響を受けたんだなあと改めて認識できた。
今回の新訳シリーズは、できればフランク・ハーバートの原作全作品を刊行してもらいたいものだ。

2024年3月10日日曜日

NHK-BS版『舟を編む』と『新明解国語辞典』の語釈について

NHK-BSで現在放送中の『舟を編む』がとても良い。
 
エライザ好きということもあるが、『舟を編む』原作が持つ「言語」と「世界」との関係への深い洞察が、今回の映像化にも貫かれているところに好感を持っている。
 
アニメ化、実写映画化と映像化が続いた作品だが、NHKドラマ版がもっとも原作改変度が大きいようだ。もっとも原作に忠実な映像化の(だと思う)アニメ版を再見してみると、改めてアニメ的文脈での巧みな表現に溢れていて、結局一気見してしまった。
今回改めて感じたのは香具矢役の声優坂本真綾さんの相変わらずの天才ぶりだ。
香具矢という人はある種の変人である馬締を実社会に繋ぎ止めるアンカーである。そのために必要な重心を維持しながら彼に好感を持っていく微妙な心風景を声の温度感だけで表現している。数々の名人芸を堪能してきた真綾様だが、本作でのそれも格別だ。

原作からの改変度をリードするのはどの映像化においても岸辺みどりが担う。
今回のNHK版でも副詞の「ーなんて」を素材に、繰り返し繰り返し言葉が先行して人の行動を制御する様を描いて、まさにこのシーンのためのエライザ起用だろう。
感心して、ふと思い立って家にある三省堂の 「新明解」で「ーなんて」を引いてみて、ドラマより一段突っ込んだ語形変化からの語釈にまた感心してしまった。
 
昨年亡くなった父も辞書には思い入れのある人だった。
中学生になる春に、学校推奨の英和辞典とは異なる三省堂の「コンサイス英和辞典」を買ってきた。僕は他の誰よりも父のことを信頼していたし、本革装のこの辞書の存在感が一目で気に入ったので、みんなと辞書が違うことはまったく気にならなかった。
 
だから自分の娘が中学に入るときには、国語辞典にその当時話題になっていた同じ三省堂の 「新明解」を買い与えたのだが、今になってその判断が間違っていなかったことを確認できた。
 
この二つの辞書は今も僕の書棚の端っこで、困ったときにインターネット検索とは異なる答えをくれる。 信頼とはこういうことを言うのだと思う。