2022年12月30日金曜日

レコード棚を総浚い :『THE ORIGINAL ANIMALS / Before We Were So Rudely Interrupted(魂の復活)』

 77年のアニマルズ復活盤。故にレコード棚でも「A」の場所に入れてます。

United Artists Recordsレーベルですね。

アニマルズのオリジナルメンバーだったチャス・チャンドラーは、解散後ビジネス・マネジャーに転身し、ジミ・ヘンドリックスを世に送り出したわけだが、自身が39歳の時、出世のバンドであるアニマルズの復活を企てる。

そういう目で見ると、チャスの見事なビジネスセンスがこのアルバムには結晶している。
大ヒット曲の『朝日の当たる家』の再録音を避け、古いR&Bや知る人ぞ知るブルーズを採り上げることで、ヒット曲しか知らない大衆ではなく、アニマルズらしさの何たるかを知る古いファンに応えている。

そしてこの企画盤の「強度」を上げているのが、ディランの『It's All Over Now,Baby Blue』とジミー・クリフの『Many Rivers To Cross』の2曲で、エリック・バードンの唯一無二の声と相まって、時代の風化に耐えうる頑丈なカバーなっていると思う。

2022年12月29日木曜日

レコード棚を総浚い :『AMERICA / YOUR MOVE(渚のボーダー)』

イギリス駐留のアメリカ空軍の軍人を父にもつ結成メンバー3人が、ロンドンで結成したアメリカというグループの13枚目のアルバム。

8枚目のアルバム『ハーバー』完成後にメンバーが一人抜け、2名体制になっている。

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綺麗なブルーのカラーレコードだ。

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レコードに針を落として、最初に感じたのはBay City Rollersのようなメロディだな、ということだった。
イギリスのグループだからなのか、作曲の多くを手がけた(BCRにも楽曲提供している)ラス・バラードの影響か。

それにしてもこのラス・バラードという才人、リンダ・ロンシュタットでは一番好きな曲である『悪いあなた』の作者として認識していたが、レインボーの『アイ・サレンダー』や『シンス・ユー・ビー・ゴーン』も作っているというから、その音楽性の広さには驚かされる。

2022年12月28日水曜日

レコード棚を総浚い :『THE ALLMAN BROTHERS BAND / THE ROAD GOES ON FOREVER』

 オールマン・ブラザーズ・バンド初期のベスト盤が本盤『THE ROAD GOES ON FOREVER』である。

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こうしてベスト盤を聴いていると、実にカバーの上手いバンドであったことがわかる。
『AT FILLMORE EAST』の稿で採り上げたタジ・マハルの『Statesboro Blues』も本盤に収録されているが、なんと言ってもウィリー・ディクスンの『Hoochie Coochie Man』が必聴の名カバーだ。

レコーディング中に、中心メンバーであるデュアン・オールマンが、24歳の若さでバイクの事故で亡くなって、ディッキー・ベッツを中心に完成した『Eat A Peach』から本盤に収録された『Melissa』という楽曲は、数多の名曲を残したグレッグ・オールマンの作品の中でも一際美しい。

この名曲を日本のアーティストが見事にカバーしている。
ぜひ斎藤誠のこの名演を聴いてみて欲しい。

2022年12月27日火曜日

レコード棚を総浚い :『THE ALLMAN BROTHERS BAND / AT FILLMORE EAST』

説明不要のライブ盤の金字塔。
貴重なテイクが多数収録されたCDのDELUX Editionで聴いていた。

 とはいえ、一曲一曲が長いこのライブ盤では、適度な長さのアナログ盤が聴きやすい。

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我が家にはカプリコーン盤とポリドール盤があるが音質には大きな差はないようだ。

語り出すとキリがないアルバムだが、冒頭の『Statesboro Blues』のオリジナルは、「誰も彼のようにブルースを歌うことはできない」とボブ・ディランに言わしめたブラインド・ウィリー・マクテルのものだ。

そして、直接のカバー元となったタジ・マハルのバージョンは必聴で、スワンプロックの最重要盤となった1stソロアルバムに収録されている。

ジェシ・エド・デイヴィスのスライドギターが冴え渡るこの演奏を聴いていると、やはりギタリストを燃やす何かがこの曲にはあるんだろうと思う。

 

レコード棚を総浚い :『Albert Hammond / The Free Electric Band』

ジャケ買いで買ったこの一枚のおかげで、アルバート・ハモンドというシンガー・ソングライターを知った。
これがきっかけで彼のヒット曲『It Never Rains in Southern California(カリフォルニアの青い空)』(1972)を聴いてみると、堺正章さんのデビュー曲『さらば恋人』と同じモチーフが使われていたが、こちらは71年のリリース。時代の空気感を共有する曲なのだろう。

翌年リリースの本作『The Free Electric Band』は、畢生の名作『It Never Rains in Southern California』と較べれば、いささか地味な印象だが、その分
ソングライターの心情がストレートに伝わってくる誠実さを感じる。

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レコード棚を総浚い:『THE ALAN PARSONS PROJECT / VULTURE CULTURE』

ポップ路線を継承したアラン・パーソンズ・プロジェクトの8thアルバム。
凝ったスタジオワークではなく、端正で明快なシンセロックとなっている。

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日本盤ライナーノーツには天辰保文さんの充実した考察が寄せられている。
北海道新聞の夕刊に週一で掲載される天辰氏の洋楽紹介コラムは、どんなネットメディアの情報よりも僕の気持ちにしっくりくるもので、本盤のライナーノーツも非常に興味深く読んだ。(北海道新聞は天辰氏のコラムを書籍化すべきだと思う)

アラン・パーソンズと並べて、ピーター・ホーク、マルコム・マクラレン、トレヴァー・ホーン、ジョルジオ・モロダー、ブライアン・イーノ、ナイル・ロジャースなど、いわゆるプロデューサーのプロジェクトとは、レコード制作による表現の可能性の拡張であるという指摘は、実に腑に落ちる。

ポップ音楽の元々持っているクロスオーバー性が、多様化や複雑化を誘発させているとの考察は、ニュー・ウェイヴやビデオ・ミュージックの登場の背景としても時期的に符合するだろう。

職人的手腕というキーワードで括られることが多い、プロデューサー型ミュージシャンの作品から「ポップ音楽に対する新しいコンセプト」を感じ取れるかは聴き手次第であるとの天辰氏の警句は心に刻んでおこう。

 

 

 

2022年12月26日月曜日

村上春樹訳で、艶っぽく仕上がった文芸ミステリの傑作『「グレート・ギャツビー」を追え』

 村上春樹がジャン・グリシャムを訳した、ということで単行本発刊時に注目していた『「グレート・ギャツビー」を追え』が文庫化されたので、買ってみた。

 

文芸ミステリというジャンルは傑作の宝庫だが、作家こそが最強の愛書家なのだから至極当然だろう。

いつもはリーガル・サスペンス系のジョン・グリシャムの文芸ミステリはこちらも一級品でした。
 
書店経営者の羨ましすぎる生き方、才能はあるが運に恵まれない作家、書き割りの悪者たち、そして例によって無能ゆえに高飛車になる役人たち。すべての登場人物が正しく役割を果たして、物語は大団円へ。
 
翻訳を担当した村上春樹がポーランドでこの本に出会い読み出したら止まらなくなった、ということだが、確かにこれは途中でやめられませんわ。
 
蛇足ですが・・・
村上訳であることが、この作品の価値を高めていると思うポイントが、ファンの方ならご存知の彼の独特な性描写。
本作でもいい感じで機能してます。
 
 
 
 


2022年12月20日火曜日

レコード棚を総浚い:『THE ALAN PARSONS PROJECT / AMMONIA AVENUE』

アビイ・ロード・スタジオのエンジニアとしてビートルズやピンク・フロイドのアルバム制作に関わったアラン・パーソンズとシンガー・ソングライター、エリック・ウールフソンのレコーディング・プロジェクト『アラン・パーソンズ・プロジェクト』の代表作『アンモニア・アヴェニュー』。

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エドガー・アラン・ポーを題材にした共作『怪奇と幻想の物語 - エドガー・アラン・ポーの世界』が、このプロジェクトのスタート地点であり、その意味では『YOASOBI』というプロジェクトの遠い祖先と言えなくもない。

本作『アンモニア・アヴェニュー』もコンセプトアルバムだが、その手の作品にありがちな難解さを徹底的に排除したポップな音作りで、それが結実したのが『DON'T ANSWER ME』ではないか。
あれ?ビートルズ?と思わされる『SINCE THE LAST GOODBYE』に続き、フィル・スペクター風味のサウンドを纏って登場するこの曲は、ポップ史に残る名曲だろう。

2022年12月19日月曜日

レコード棚を総浚い 『AIR SUPPLY / AIR SUPPLY』

AIR SUPPLYの地元オーストラリアでのデビュー盤。

76年発表のアルバムだが、『LOST IN LOVE』のヒットでアメリカ進出して、80年に再発されたのがこの盤ということらしい。

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現在はCDの発売はないようだ。

あの『LOST IN LOVE』のAIR SUPPLYとは少し印象の違うディスコ的な曲もあり、現在も活躍中らしい中心人物Graham Russellの音楽にも興味が湧く一枚。

セルフタイトルのアルバムだが、邦題は『ストレンジャーズ・イン・ラブ』となっている。
ジャケにも『STRANGERS IN LOVE』の表記があり、この曲が推しなのかとも思うが、シングルカットは別曲の『LOVE AND OTHER BRUISES』(なかなかの佳曲でした!)となっている。

2022年12月18日日曜日

一筋縄でいかない恋の行方に翻弄されたい:『十二月の辞書 / 早瀬耕』

早瀬耕の新作『十二月の辞書』が出た。
 
 
『未必のマクベス』という作品が大好きで、SNSでベタ褒めしてたら、それがご縁で筆者と繋がり、同年代で予備校が一緒だとわかった。
それ以来追いかけるように著書を読んでいる。
 
本作はデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』の世界の物語。
続編『プラネタリウムの外側』を読んでいた方が作中の人間関係が理解しやすいだろう。
 
 
 
早瀬作品の常だが、日常生活では滅多にお目にかからない難解な言葉が頻出するので、度々ネット検索しながら読むことになる。
 
そして、そのような読み方そのものが本書のメインギミックに直結していて、読者は筆者の掌で弄ばれるが、もちろんそれは主題ではない。
 
そんなことがまったく厭わしくないほど、一筋縄でいかない恋の行方に、おいおいと思ったり、こらこらと思ったりで翻弄される。
 
その翻弄がとても楽しい、不思議な読書体験だ。

『オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei's Last Case / 森博嗣』

「F」の衝撃、再び。 の帯を見たら抗えないっしょ。


 

実際本作はS&MおよびVシリーズの関連作品ではあった。 

しかし<衝撃>の在処は「F」のそれとは無関係で、S&MとVシリーズの登場人物の人間関係について踏み込んだ情報を提示してくれているところにある。 

森ミステリの一つの魅力に、登場人物の意外な関係がある。

またこれが、露骨に明示しない形で其処此処にヒントが散りばめられているのだから始末に悪い。

気付いたマニアさんたちが、詳細に考察しているサイトがいくつかあるのだが、それを読んでさえ、どうしても作品に当たって確かめたくなる。

そして実際読み返してみると、面白さが変わってくるのである。

 

困ったもんだ・・

ここに来てこんなの読まされたらあの膨大なシリーズをもう一回読んじゃうじゃないか。 どうしてくれる。

 

 

レコード棚を総浚い: 『AEROSMITH / Draw The Line』

このアルバムが発売された1977年、僕は小学6年生で、クラスはAEROSMITH派とQUEEN派とBAY CITY ROLLERS派に分かれていた。


自分自身はゴリゴリのBCR派だったわけだが、エアロかクイーンかと問われればクイーンの方が好みだった。

そういうわけで『WALK THIS WAY』までエアロにはご縁がなかったが、こうして改めて聴いてみると、スティーブン・タイラーの存在感のあるシャウトがこのバンドを特別なものにしたのだろうという感慨が湧く。

 

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そして、B1の『KINGS AND QUEEN』はどうだ。


エアロのパブリックイメージを裏切るZEP、あるいはQUEENを思わせるハードロックの名曲ではないか。


ファンではない僕からみると、この曲の存在こそがエアロが凡百のロックンロールバンドではないことの証明なんだと思う。

 

 

2022年12月17日土曜日

レコード棚を総浚い:『Adrian Gurvitz / Sweet Vendetta(甘い復讐)』

エイドリアン・ガーヴィッツというギタリストのことは知らなかった。
 

湯川れい子先生が書かれたアルバムのライナーノーツによれば、『ベイカー・ガーヴィッツ・アーミー』というプログレ系ハードロックグループのメンバーであったそうだ。
この「ベイカー」はあのジンジャー・ベイカーである。

一転、このアルバムはディスコ寄りのAORである。


1978年リリースのローリング・ストーンズ『女たち』によって行われたロックバンドからのディスコミュージックへの<回答>とは少し肌触りの違う、ディスコとAORとの最大公約数を探ったようなサウンド、と私はみた。


本作でのエイドリアン・ガーヴィッツは、リードギターは数曲に控え、ファルセットも多用してディスコミュージックの歌い手として振舞っている。

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サウンドのコアになっているのは、TOTOのポーカロ兄弟とデヴィッド・ペイチ、デヴィッド・ハンゲイト、と言えば、だいたいどんな音か想像がつくのではないだろうか。

ライナーノーツで、さらりと「ジェフ・ポーカロと電話で話していた時」と書かれているように大物ミュージシャンたちとの親交の篤い湯川先生だが、私も一度湯川先生と仕事でロサンゼルス、ラスヴェガスと廻ったことがある。
ちょうどセリーヌ・ディオンがヴェガスのシーザーズ・パレス・コロシアムで専用劇場での定期公演を4年の間続けていた時期で、外界と接触のない日々を送っていたそうだが湯川先生は別格で、楽屋を訪問されていた。

エイドリアン・ガーヴィッツはこの後もソロ活動を続け、都合(編集盤を除いて)6枚のアルバムをリリースしている。

 

2022年12月16日金曜日

レコード棚を総浚い:『ABBA / ARRIVAL』

年末には買った順に棚に放り込まれたレコードを、洋楽はABC順に、邦楽は五十音順に並べ替える。

作業を終えてみると、買った時に聴いただけというレコードがたくさんあって、我ながら呆れる。

知人に、所有しているレコードとCDをすべてデータベース化している猛者がいる。彼には及ばないが、すべてのレコードをもう一度聴き直してみるくらいのことはしてもいいだろう。

「A」の最初はABBA。
あの『DANCING QUEEN』収録の3rd。大ヒットしたアルバムでご家庭にお持ちの方も多いだろう。私は先輩からの頂き物だ。
一緒に頂いたベスト盤も併せて聴く。

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やはり『DANCING QUEEN』は不思議な曲だ。
肝は構成にあると思う。

イントロはサビをそのまま演奏するが、Aメロに先駆けてドミナントコードに展開していくところから歌い始める。
曲中もっとも不安定なところから歌い始めるわけで、嫌が上にも強い安定が欲しくなる。
そこにあの『dig in the Dancing Queen』というキラーフレーズが来て、ホッと一息。

改めて、『Friday night and the lights are low』と物語が始まった時、すでに我々はこの曲の魔法に絡め取られているのだ。

 

 

2022年12月14日水曜日

経験と敬虔の差分:『シナモンとガンパウダー』

北海道新聞の書評論に背中を押されて『シナモンとガンパウダー』を読んでみた。



大英帝国の三角貿易を主題に採り、アヘン貿易を阻止しようと奮闘する女海賊と、彼女が拉致した貿易会社会長付きの料理人とのドラマには、最後までハラハラさせられ通しだった。
しかし、それだけではない。

2022年、大英帝国のコロニアリズムが生み出した様々な歪みは、またしても幾度目かの臨界を迎えつつあるように思われる。

そんな年の終わりに読んだ本作は、今我々が置かれている状況が、対症療法でなんとかなるようなものでないことを教えてくれた。
そしてこの歴史的悲劇を見事に描き切った本作の美点は、経験と本能に忠実な海賊と敬虔なキリスト教徒である料理人の「視点の差分」なのだろう。
その差分を超えていく「人間」という存在に愛おしさを感じずにはいられない。
大傑作。

2022年12月4日日曜日

高中正義のストラトとSG:『TAKANAKA SUPER LIVE 2022』

高中正義さんのライブに行ってきた。



 

81年の『虹伝説』は本当に素晴らしいプロダクトだと今でも思う。

 

当時何度も何度も繰り返し聴いた。

YAMAHAのSGというギターにも憧れた。

関心を持っていると頻繁に目に入るものだが、ボブ・マーリーが日本公演の際ヤマハから受け取ったSGを弾くモノクロ写真は、最も印象に残るSGの勇姿だ。

他にもカルロス・サンタナのブッダSGや、もちろん我らがイースタン・ユース吉野氏のSG-1000など、時々検索してはうっとりしている。

だから、今回は日本の代表的なSG奏者である高中氏の生SGを堪能するつもりで出かけた。

ところが、圧倒的な主役はブラウンサンバーストのストラトだった。

レコーディングのメイン器として知られる六文銭原茂から譲り受けた58年のストラトなのか、後に同仕様でカスタムメイドされたモデルなのかはわからなかったが、とにかくなんて凄い音!

これぞストラトという枯れたトーンが適切な歪みを伴って空間を切り裂いていく。

後半は写真にも掲げたSGの高中モデルが登場。この辺りから観客の熱狂もピークに達し、いつもの有名曲たちが登場すると、いいおっさんたちがタオルを振り回して会場に強い一体感を作り出していた。

バンドも最高で、生AMAZONSにも感激したし、生斉藤ノブ観れてよかった!