2022年12月29日木曜日

洗練されたUKポップの風 | Americaの隠れた名盤『Your Move(渚のボーダー)』と、多才な職人ラス・バラードの魔法



レコード棚の奥から一枚、鮮やかなブルーの盤面を取り出す。針を落とす前から、その色合いだけでどこか涼しげな期待感に包まれる一枚。それが、America(アメリカ)が1983年に発表した13枚目のアルバム『Your Move(邦題:渚のボーダー)』です。

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■ 「ロンドン生まれのアメリカ」が辿り着いた境地


アメリカというグループを語る際、その成り立ちは欠かせないエピソードです。イギリス駐留の米空軍人を父に持つ3人がロンドンで結成した彼ら。8作目のアルバム『ハーバー』を境に2人体制(ジェリー・ベックリーとデューイ・バネル)となりましたが、本作はそのデュオ時代の脂が乗った時期の作品です。


■ 意外な共通点:ベイ・シティ・ローラーズのような親しみやすさ


アルバム冒頭、スピーカーから流れてくるメロディに耳を傾けると、ふとあるグループが頭をよぎりました。ベイ・シティ・ローラーズ(BCR)です。

ウエストコーストの爽やかなハーモニーを軸にしながらも、どこかキャッチーで親しみやすいUKポップの質感が漂うのは、本作のプロデュースと楽曲提供を全面的に手掛けたラス・バラード(Russ Ballard)の影響が大きいのでしょう。

■ 職人ラス・バラードが仕掛ける「音楽の振り幅」


ラス・バラードは、私が個人的に愛してやまないリンダ・ロンシュタットの「You're No Good(悪いあなた)」の作者として知られていますが、その活動領域は驚くほど広大です。

ハードロックではレインボーの「I Surrender」や「Since You Been Gone」からベイ・シティ・ローラーズまでの振り幅です。

そんなヒットメーカーが、Americaという「ハーモニーの象徴」を料理したのですから、面白くないはずがありません。ハードなエッジとポップな感性、そしてAmerica特有の叙情性が絶妙なバランスで融合しています。

■ 朝の空気感に馴染むブルーの旋律


美しいブルーのカラーレコードがターンテーブルの上で回る様子を眺めながら聴くこのアルバムは、一日の始まりにふさわしい清涼感を与えてくれます。

「America」という名前でありながら、イギリスの空気を含んだメロディ。その背景にあるラス・バラードの多彩な音楽性。レコード棚を総浚いする中で再会したこの一枚は、単なる懐メロではなく、今なお新鮮な驚きを届けてくれる「職人たちの傑作」でした。

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