![]() |
| Amazon商品ページLink |
1977年。今振り返れば、この年はロック史における大きな「分水嶺」だった。
イギリスではセックス・ピストルズが『勝手にしやがれ』を叩きつけ、パンク・ロックの嵐が吹き荒れていた。それまでのスタジアム・ロックを「オールド・ウェーブ」と切り捨てるような、殺伐とした、けれど刺激的な時代の空気。
当時、小学6年生だった僕の周りでも、その熱気は形を変えて存在していた。クラスは「BCR(ベイ・シティ・ローラーズ)派」、「QUEEN派」、そして「AEROSMITH派」の三つ巴。
僕はといえば、ゴリゴリのBCR派。エアロかクイーンかと問われれば、迷わずクイーンの端正な美しさを選ぶような子供だった。
アメリカの頂点に立った「毒なるふたり」
当時のAEROSMITH(エアロスミス)は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。
ボストンから現れた彼らは、1975年の『Toys in the Attic(闇夜のヘヴィ・ロック)』と翌年の傑作『Rocks』で、アメリカにおけるハードロックの覇権を完全に掌握していた。
スティーヴン・タイラーとジョー・ペリー。この「トキシック・ツインズ(毒なふたり)」が放つワイルドで退廃的なオーラは、当時の日本でも不良っぽさに憧れる少年たちの心を強く捉えていたように思う。
一線を踏み越える瞬間の「危うさ」
そんな彼らが、バンド内の不和や薬物問題という深刻なトラブルに直面しながら作り上げたのが、5枚目のアルバム『Draw The Line』だ。
正直に言えば、大ヒット曲「Walk This Way」のような明快なキャッチーさを求めて聴くと、少し戸惑うかもしれない。しかし、このアルバムを特別なものにしているのは、スティーヴン・タイラーの圧倒的な存在感だ。
喉を掻き切るようなシャウト、地を這うようなグルーヴ。崩壊寸前のバンドが放つ、ヒリヒリとした緊張感が盤面に刻まれている。
凡百のバンドではない証明:名曲「Kings and Queens」
中でも、B面の1曲目を飾る「Kings and Queens」を聴いてほしい。
ここで彼らが見せる叙情的な世界観はどうだろう。中世の騎士道を思わせる壮大なスケール感は、ハードロックの枠を超え、どこかLed ZeppelinやQUEENの持つドラマチックな美学に通じている。
この曲の存在こそが、エアロが単なる凡百のロックンロール・バンドではないことの証明なんだと、改めて今、レコードに針を落として確信する。
当時の僕がクイーンに感じていたような「格式」や、プログレッシブな実験精神が、ここには確かに宿っている。
時代を越えて響く「一線」
アルバムタイトル『Draw The Line』は、直訳すれば「一線を引く」。
パンクという新しい波に飲み込まれるのか、それとも自らの内側から崩壊するのか。そんな極限状態の中で彼らが引いた「一線」は、45年以上経った今もなお、凄まじい熱量を持ってスピーカーから溢れ出してくる。
かつてクラスメイトと競い合った「派閥」は思懐かしい思い出だが、今はただスティーヴンの叫びを聴きながら、あの1977年の熱い空気に思いを馳せる時間が、今はたまらなく愛おしい。

0 件のコメント:
コメントを投稿