カウボーイ(Cowboy)という隠れた名バンド
サザンロックやスワンプロックの黄金期において、オールマン・ブラザーズ・バンドの陰に隠れながらも、玄人筋や目の肥えたミュージシャンたちから絶大な支持を集めたグループが存在する。それが「カウボーイ(Cowboy)」である。
彼らは、オールマンズの伝説的プロデューサーであるジョニー・サンドリンのバックアップのもとで2枚のアルバムを制作した。しかし、バンドは実質的な解散状態へと追い込まれてしまう。その窮地において、中心人物であったスコット・ボイヤーとトミー・タルトンの2人が強い絆で踏みとどまり、1977年に生み出した結晶こそが、セルフタイトルの傑作アルバム『Cowboy / Boyer & Talton』である。
ボイヤー&タルトン(エクスパンデッド・エディション)
グレッグ・オールマンやクラプトンを魅了したアーティストの背景
カウボーイ、とりわけアルバム『ボイヤー&タルトン』のソングライティング・センスは、当時のトップアーティストたちを虜にした。
象徴的なエピソードが、オールマン・ブラザーズ・バンドのフロントマンであるグレッグ・オールマンとの関係である。グレッグの記念碑的なファースト・ソロアルバム『レイドバック(Laid Back)』において、彼らの楽曲「オール・マイ・フレンズ(All My Friends)」が取り上げられ、感動的な名演としてアルバムの核を担った。
また、グレッグのライブアルバム『グレッグ・オールマン・ツアー』でも彼らは見事な演奏を披露しており、マニアの間ではその実力が早くから知られていた。
さらに、そのグレッグの『レイドバック』に強いインスピレーションを受けたエリック・クラプトンは、自身の代表作『461 オーシャン・ブールバード』を制作する。
クラプトンは同作で、カウボーイの美しき佳曲「プリーズ・ビー・ウィズ・ミー(Please Be With Me)」をカヴァー。これにより、クラプトン自身の伝説的な「レイドバック期」が幕を開けることとなった。これほどまでに偉大なミュージシャンたちから愛された事実こそ、彼らの楽曲が持つクオリティの高さを証明している。
アルバム『Boyer & Talton』の音楽的特徴
本作『Boyer & Talton』は、カウボーイというバンド名と、ボイヤー&タルトンという個人名が並記された、どこか曖昧なクレジットを持つ。これはバンドの解散劇を経て、2人のユニットとして再出発したという複雑な経緯によるものである。しかし、その音楽性には一切の迷いがない。
アルバム全体を支配するのは、極上の「レイドバック(くつろいだ)・サウンド」である。南部の泥臭いスワンプロックのフィーリングを残しつつも、スコット・ボイヤーとトミー・タルトンが紡ぐアコースティック・ギターの響き、美しく気品のあるメロディ、そして泥臭さと洗練が同居したツイン・ボーカルとハーモニーが絶妙にブレンドされている。単なる激しいサザンロックとは一線を画す、内省的で温かみのあるアコースティック・サザン・ポップとも言える独自の立ち位置を確立している。
主要楽曲の分析
1. 2人の絆が光るアコースティック・ナンバー
アルバムの随所で聴けるアコースティック主体の楽曲では、彼らの最大の武器であるソングライティングの緻密さが光る。シンプルながらも胸を打つコード進行と、そよ風のように心地よいメロディラインは、聴く者を一瞬でアメリカ南部の穏やかな風景へと誘う。
2. 進化したサザン・グルーヴ・トラック
カントリー・フォーク的なアプローチだけでなく、ジョニー・サンドリン直系のタイトでレイドバックしたリズムセクションが支えるミディアム・テンポの楽曲も秀逸である。タルトンの巧みなスライド・ギターとボイヤーの情感豊かな歌声が絡み合い、泥臭いスワンプ風味と都会的な洗練が見事なコントラストを描いている。
総評:掘り下げる価値のある「南部音楽の鉱脈」
サザンロックの枠にとどまらず、70年代のシンガーソングライター・アルバムやアメリカン・ルーツ・ミュージックの傑作としても、本作は極めて高い完成度を誇る。エリック・クラプトンやグレッグ・オールマンがなぜ彼らを求め、その楽曲を歌ったのか。本作を聴けば、その理由がはっきりと理解できるはずである。
音楽史のメインストリームの裏側にひっそりと残された、掘り起こされるべき豊かな鉱脈。カウボーイの『Boyer & Talton』は、今なお色褪せない輝きを放ち続けている。
※こんな名盤でメジャー・レーベルから出ているのに、配信系で名前を見ないな、と思ったらApple Musicでは「カーボウイ」という妙な名前で登録されていました。検索してみてくださいね。
0 件のコメント:
コメントを投稿