2026年6月16日火曜日

【火星シリーズ徹底解説】次世代へ受け継がれる赤き惑星の血統|バルスームを翔ける新たな英雄たち(第2集:幻兵団/チェス人間/交換頭脳)

 英雄の遺伝子とさらなる奇想!『火星シリーズ・第2集』全体の概要

初期3部作で地球人ジョン・カーターの戦いはひとつの大団円を迎えましたが、赤き惑星「バルスーム」の伝説はそこでは終わりません!『合本版・火星シリーズ〈第2集〉』に収録されている中期の3作品は、カーターの息子や娘、そして新たなる地球人が主人公となり、火星のさらに深い秘境へと読者を誘うエキゾチックな冒険絵巻です。

もちろん、創元SF文庫版のページをめくれば、武部本一郎氏によるあの溜息が出るほど美しい挿絵が健在。第1集でデジャー・ソリス派に魂を奪われたファンたちを、今度は彼女の血を引く娘ターラや、数々の美女たちが再び惑わせにやってきます。

第2集の最大の魅力は、前作以上に「奇想天外なアイデア」が爆発している点です。思考を具現化する幻兵、人間を駒に見立てた命がけのチェス、そして恐るべきマッドサイエンスによる脳の交換――。バローズの想像力がさらに研ぎ澄まされた、中期の3作品を1作ずつ紐解いていきましょう。



第4作:『火星の幻兵団』~観念が紡ぐ悪夢と若き王子の試練~

【あらすじ】

ジョン・カーターとデジャー・ソリスの息子であり、偉大な父の血を受け継いだ若き王子カーソリス。彼は、かつてカーターに救われたプータスの王女スビアに密かに恋心を抱いていた。しかし、スビアが何者かに誘拐される事件が発生し、カーソリスにその疑いがかけられてしまう。

身の潔白を証明し、愛する彼女を救うため、カーソリスは火星の未踏の地へと飛び立つ。彼が迷い込んだのは、古代火星の栄華を今に伝える幻影の帝国「ロサール」。そこは、念じるだけで数十万の「幻の戦士」を現実に出現させる、恐るべき精神力を持った怪人たちが支配する悪夢の世界だった――。

第5作:『火星のチェス人間』~命を賭けた盤上の死闘~

【あらすじ】

ジョン・カーターの愛娘であり、母譲りの絶世の美女であるターラ王女。彼女は勝気な性格が災いし、飛行艇での遠乗り中に巨大な嵐に巻き込まれ、未開の秘境へと不時着してしまう。そこで彼女を待ち受けていたのは、頭部だけの奇怪な精神生命体「カルド」と、その乗り物として支配される肉体「リカル」という、歪んだ生態系を持つ恐怖の種族だった。

ガソールの若き王ガハンに助けられ、辛くも脱出したターラだったが、次に迷い込んだ都市では、火星の伝統的なチェスに似たゲーム「ジェタン」を、本物の人間を駒にして戦わせる狂気の闘技が行われていた。敗北は即「死」を意味する命がけの盤上で、彼女を賭けた究極のゲームが始まる!

第6作:『火星の交換頭脳』~マッドサイエンスが迫る肉体の神秘~

【あらすじ】

戦傷によって瀕死の重傷を負った地球人の若き大尉ユリシーズ・パックス。彼は前世の記憶を保ったまま、精神のみが火星へと転移し、奇跡の復活を遂げる。しかし、彼が目覚めたのは、火星最高峰の天才でありながら、倫理観を完全に喪失した老科学者ラサーム・ケンの実験室だった。

ラサーム・ケンが確立していたのは、生きた人間の「脳」を別の肉体へと移植する恐るべき『交換頭脳』の技術。富豪の醜い老女に、美しき王女ババ・リサの若々しい肉体を移植する非道な実験を目の当たりにしたパックスは、王女の心を救うため、自らも怪しき医術の世界へと身を投じ、狂気の科学者に立ち向かう!


ここが面白い!第2集の圧倒的な見どころ

1. 「知略と奇想」がパワーアップした世界観

第1集が「圧倒的な身体能力による肉弾戦」だったとすれば、第2集は「心理戦やSF的ガジェット」が前面に押し出されています。『幻兵団』の思考具現化や、『交換頭脳』のグロテスクでありながらワクワクさせる外科手術の描写など、現代のダークファンタジーやSFサスペンスの先駆けとも言えるアイデアが詰め込まれています。

2. 生き生きと躍動する「次世代のヒロインたち」

デジャー・ソリスの気高さを受け継いだ娘ターラをはじめ、第2集のヒロインたちは一筋縄ではいかない魅力を持っています。特に『チェス人間』でのターラは、囚われの身でありながらも誇り高く、男たちを翻弄する強さを持っており、バローズの描く女性像の進化を感じさせます。

3. 新たな地球人主人公の登場

第6作『交換頭脳』では、ついにジョン・カーター以外の地球人「ユリシーズ・パックス」が主人公として登場します。カーターが「無敵の戦士」だったのに対し、パックスはマッドサイエンティストの弟子として知恵と技術を武器に戦うため、シリーズに全く新しい風を吹き込んでいます。


総評:バローズの想像力が頂点に達した、珠玉の冒険ワンダーランド

偉大な英雄ジョン・カーターの物語を引き継ぎつつも、それを単なる二番煎じに終わらせないバローズの筆力には脱帽するほかありません。

親から子へと受け継がれるバルスームの血統、そして「チェス人間」に代表される、異文化のルールに命がけで挑むプロットの巧みさは、今読んでもページをめくる手が止まらなくなる極上のエンターテインメントです。

リアルな宇宙探査が進んだ現代だからこそ、この「脳内移植も幻兵も何でもあり」な大らかでエキゾチックな火星の姿が、私たちの乾いたイマジネーションを極彩色に染め上げてくれます。

第1集を読み終えたなら、迷わずこの第2集の扉を開けてみてください。そこには、まだまだ私たちが知らないバルスームの深淵な魅力が広がっています!


火星の幻兵団 (創元SF文庫 ハ 3-40 合本版・火星シリーズ 第2集)
4488601405

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