1. キャリアにおける位置付けと時代背景
『There Goes The Neighborhood(邦題:レイズ・ザ・ルーフ)』は、1981年にリリースされたジョー・ウォルシュの通算5作目となるスタジオ・アルバムである。
本作のリリース直前である1980年、ウォルシュが在籍していたイーグルスは、長年の緊張関係と疲弊により事実上の活動停止状態(バンドの解散)に陥った。メガヒット作『Hotel California』やそれに続く『The Long Run』での巨大な商業的成功とプレッシャーから解放された直後、ウォルシュが最初に取り組んだソロワークが本作である。
1980年代初頭のミュージックシーンは、ニュー・ウェイヴやシンセポップの台頭により、70年代を席巻した西海岸のクラシック・ロック・サウンドが変革を迫られていた時期にあたる。しかしウォルシュは時代のトレンドに過度に迎合することなく、自身が得意とするルーツに根ざしたハードロックと、レイドバックしたLAサウンドのブレンドを維持した。商業主義的な狂騒から一歩引いた視点を持つ本作は、彼のキャリアにおいて「職人肌のロッカー」としての原点に回帰した重要なスナップショットといえる。
2. 音楽的特徴の分析
本作の音楽的特徴は、イーグルス時代に洗練されたコーラスワークや緻密なアレンジのノウハウを土台にしつつも、ウォルシュ本来の持ち味である「エッジの効いたギターリフ」と「ユーモア(諧謔精神)」が前面に出ている点にある。
サウンド面では、乾いたドラムの音像と重厚なギタートラックが中心を占めており、過剰なエフェクトやシンセサイザーの多用は避けられている。ウォルシュの代名詞であるスライドギターや、トークボックス(トーキング・モジュレーター)を用いたフレーズも随所に配置され、オーソドックスながらも飽きさせないギタードリブンなロックを展開している。
3. 注目すべき楽曲セレクトと解説
『A Life of Illusion』
アルバムのリードトラックであり、ウォルシュのソロキャリアを代表する楽曲の一つ。軽快でアコースティックなメロディラインとは裏腹に、歌詞では「意味のない解決策に追われる幻想の人生を生きている感覚から抜け出せない」といった、冷徹な自己言及がなされている。イーグルスという巨大なシステムの中にいた自身を静かに客観視したような、本作の核となる楽曲である。
『Rivers (of the Hidden Funk)』
ドン・フェルダーと共作した、ファンキーなグルーヴが特徴のミディアムテンポ・ナンバー。タワー・オブ・パワーのホーンセクションが加わることで、西海岸ロックに力強いR&Bのエッセンスが融合している。ウォルシュのボーカルのレイドバックした魅力が引き立つ構成である。
『Things』
ウォルシュ特有のユーモアと、社会に対するシニカルな視点が交錯するロックナンバー。物欲や物質主義に対する皮肉を、タイトなリフとアップテンポなビートに乗せて淡々と描き出している。
4. 参加ミュージシャン
本作を支えるレコーディング・メンバーには、当時の西海岸ロックおよびセッションシーンの第一線で活躍していた実力派が揃っている。
ジョー・ヴィターレ (Joe Vitale) [Drums, Keyboards] ウォルシュとはバーンストーム(Barnstorm)時代からの長年の相棒であり、本作でもマルチな才能を発揮してサウンドの骨組みを支えている。
ジョージ・ペリー (George "Chocolate" Perry) [Bass] 安定したピッチとファンキーなベースラインで、ボトムエンドを強固に支えている。
ドン・フェルダー (Don Felder) [Guitar] イーグルスの同僚。一部の楽曲でギターとソングライティングに参加し、ウォルシュとのツインギターによる緻密なコンビネーションを聴かせる。
タワー・オブ・パワー (Tower of Power) [Horns] ファンク/ソウル界屈指のホーンセクション。洗練されたブラスアレンジを楽曲に提供し、アルバムに音楽的な奥行きをもたらしている。
There Goes the Neighborhood

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