イギリスの伝説的ロックバンド、ザ・キンクス(The Kinks)。ビートルズ、ザ・フー、ザ・ローリング・ストーンズと並び立つ名バンドだと思うが、どこか哀愁を帯びた皮肉とユーモア溢れる世界観で独自のスタンスに立つ。
現在は廃盤となっているカナダ編集のアナログレコード『Greatest Hits』の収録曲をベースに、バンドの成り立ち、激動の歴史、そして各楽曲の魅力を徹底解説する。
1. ザ・キンクスの成り立ちと歴史:ガレージロックの元祖から英国の語り部へ
ザ・キンクスは1963年、ロンドン北部の田舎町ハイゲインで、レイ・デイヴィス(G, Vo)とデイヴ・デイヴィス(G, Vo)の兄弟を中心に結成された。翌1964年にデビューを果たし、イギリスのモッズ・カルチャーやアメリカのガレージロック・シーンに決定的な影響を与えることになる。
狂熱の初期(1964年〜1965年)
デビュー当初はラウドで歪んだギターリフを多用した、荒々しいビート・ミュージックが特徴であった。デイヴ・デイヴィスがアンプのスピーカーコーンをカミソリで切り裂いて作ったという「歪んだギターサウンド」は、のちのハードロックやパンクロックの原点とされている。
英国の情景を描く黄金期(1966年〜1970年代初期)
しかし、アメリカツアーでのトラブルをきっかけに、1965年から4年間にわたりアメリカへの入国を禁止されてしまう。この孤立期間中にメイン・ソングライターであるレイ・デイヴィスは、アメリカへの意識を捨て、イギリスの伝統的な音楽(ミュージック・ホール)や、階級社会への風刺、古き良き英国の田舎の風景をテーマにした楽曲を量産するようになる。これにより、キンクスは「最も英国的なバンド」としてのアイデンティティを確立した。
2. カナダ編集盤『Greatest Hits』収録曲に見る名曲解説
本レコードに収録されている10曲は、バンドの「初期の獰猛なエネルギー」から「中期のコンセプチュアルなポップ・センス」への変遷をテーマにした選曲に見える。
【A面:初期の熱狂とビートの進化】
A Well Respected Man(ウェル・リスペクテッド・マン)
アコースティック・ギターを中心に据え、イギリスの保守的な中産階級の男を痛烈に風刺した楽曲。キンクスが独自の「英国風ポップ」へと舵を切った記念碑的なナンバーである。
Where Have All Good Times Gone(ホエア・ハヴ・オール・グッド・タイムズ・ゴーン)
過ぎ去りし良き時代を懐かしむ、レイ・デイヴィスならではのノスタルジーが炸裂した名曲。のちにヴァン・ヘイレンやデヴィッド・ボウイにもカバーされた。
Till The End of The Day(ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・デイ)
初期のパワフルなパワーコード・リフを踏襲しつつも、より洗練されたメロディラインを持つ。バンドの過渡期を支えた重要シングルである。
Set Me Free(セット・ミー・フリー)
マイナーコードを基調とした、哀愁漂うメロディが胸を打つミディアムバラード。レイのナイーブなボーカルが際立つ。
Tired of Waiting For You(タイアード・オブ・ウェイティング・フォー・ユー)
全英1位を獲得した初期の代表曲。強烈なリフで押すスタイルから一転、抑制されたテンポと甘く切ないメロディでバンドの音楽性の幅広さを示した。
【B面:ガレージロックの衝動と円熟への道】
All Day And All Of The Night(オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト)
「You Really Got Me」の成功パターンを踏襲した、凶暴なギターリフが炸裂するガレージ・クラシック。息つく暇もない疾走感が魅力である。
I Got A Move(アイ・ガット・ア・ムーヴ)
初期のシングルB面などに配された、ブルースやR&Bの色合いが濃い荒々しいビート・ナンバー。
LOLA(ローラ)
1970年に発表され、全英2位・全米9位の大ヒットを記録した言わずと知れた名曲。トランスヴェスティイト(女装者)との恋愛をアコースティックかつキャッチーに歌い上げ、バンドの第二の黄金期を告げた。
Wait Till The Summer Comes Along(ウェイト・ティル・ザ・サマー・カムズ・アロング)
アルバム『Kinda Kinks』などに収録されたカントリー調の隠れた名曲。レイの牧歌的でレトロな趣味性が早くも顔を覗かせている。
You Really Got Me(ユー・リアリー・ガット・ミー)
全英1位、全米7位を記録し、キンクスの名を世界に轟かせたロック史に残る傑作。この曲の放つ歪んだリフこそが、ヘヴィメタルやパンクの教科書となった。
3. 現在入手するならこのベスト
本作は、最初期の荒々しいガレージパンクから、徐々に文学的で英国的なポップスへと成熟し、さらに「LOLA」で劇的な復活を遂げるまでの足跡を1枚に凝縮した、ビギナーからマニアまで唸らせるなかなかな構成である。現在最も手軽にかつ高音質で入手できるベスト盤をご紹介して本稿を閉じよう。
『The Ultimate Collection』
「You Really Got Me」や「All Day And All Of The Night」といった初期の衝動的なヒット曲から、「A Well Respected Man」「Waterloo Sunset」、そして中期の金字塔「LOLA」まで、キンクスの主要な代表曲を完璧に網羅している。まずはこの1枚を押さえておけば間違いない。
Ultimate Collection
『The Journey - Part 1 & Part 2』
近年、バンド結成60周年を記念してリリースされた最新リマスター盤。音質が非常に向上しており、レイ&デイヴ・デイヴィス兄弟自らが選曲に携わっているため、近年の入門編・決定盤としても入手しやすい。
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