2026年5月14日木曜日

Kenny Loggins『Nightwatch』(1978)──ボブ・ジェームスの<実験>と、ロギンスの<魔法>



Kenny Loggins が1978年に発表した2ndソロ『Nightwatch』は、

ボブ・ジェームスをプロデューサーに迎えたことで、当時のAOR/フュージョン・シーンの空気を大胆に取り込んだ意欲作ではあると思う。

ただし、その“意欲”がアルバムの冒頭に置かれたことで、当時のロギンス・ファンは少なからず戸惑ったのではなかろうか。

■ 1曲目「Nightwatch」──ボブ・ジェームスの<実験>

アルバムはタイトル曲「Nightwatch」で幕を開ける。

ここで聴こえてくるのは、ロギンスの爽やかなシンガー・ソングライター像ではなく、ボブ・ジェームスが主導した“フュージョン的な構築美だった。

シンセとエレピが作る冷たい空気、複雑に入り組んだリズム、都会的なサウンドスケープ

これらは確かに当時のフュージョン最前線の質感ではあるが、ここまでのロギンス的温度感に照らせば、リスナーが求めるものとは異質なものだったのではないか。

■ 名曲「Whenever I Call You ‘Friend’」──ニックスの声が生み出す“光と影”の魔法

そんな本作を救ったのは、やはりStevie Nicks とのデュエット「Whenever I Call You ‘Friend’」だろう。

ロギンスの伸びやかなメロディと、スティーヴィーの少しハスキーな声の対比が綾織になって紡いでいるのは、音楽という名前の魔法。ドラマティックな<光>と<影>の対話は凡百なロマンティックデュエットと一線を画して、リスナーをそのドラマに引き込んでしまう。

■ 「What a Fool Believes」──ロギンスの声が生み出す“切なさ”の魔法

そしてなんと言っても、Michael McDonald との共作「What a Fool Believes」。

Doobie Brothers のバージョンが都会的な洗練を極めた名演なら、ロギンスの歌唱は より内省的で、夜の静けさに寄り添うような切なさが漂う。

ハリのある明るいトーンの声がこんな美しいメロディに乗っているのに、だ。<実験>ごときには到底太刀打ちできない<魔法>がここには確かにかかっている。


Nightwatch
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