1970年代のウエストコースト・ロック・シーンを牽引し、イーグルスやリンダ・ロンシュタットのヒット曲を手掛けたことで知られる稀代のシンガーソングライター、J.D.サウザー。彼が1984年にリリースした4作目のソロアルバムが『Home by Dawn』(邦題:ロマンティック・ナイト)である。
本作は、ソロキャリア最大のヒット曲「You're Only Lonely」(1979年)から5年の沈黙を経て発表された。これ以降、次作『If the World Was You』(2008年)まで実に24年もの間、ソロ名義のスタジオアルバムが途絶えることになる。そのため、彼のキャリアにおいて1980年代の黄金期を締めくくる、非常に重要な位置付けの作品と言える。
伝統をモダンに昇華した「ドリーミー」な音楽的特徴
J.D.サウザーの音楽の核にあるのは、ロイ・オービソンに代表されるような、トラディショナルで美しいメロディラインである。どんなに時代が変わろうとも、彼の甘くナイーヴな歌声が乗れば、それは一瞬にして「J.D.サウザーの世界」へと昇華される。
本作『Home by Dawn』では、1980年代特有のエレクトリックなポップ・サウンドや、アップテンポなロックンロールの要素が大胆に取り入れられた。一見すると、これまでのアコースティックでレイドバックしたカントリー・ロックのイメージから脱却を図ったようにも聴こえるが、根底にある叙情的な「美メロ」は健在である。ロマンティックでどこか夢見心地な(ドリーミーな)世界観が、全編をとおして色濃く表現されている。
豪華な参加ミュージシャンとウエストコーストの絆
ソングライターとして絶大な信頼を得ていたJ.D.サウザーの作品らしく、本作にも彼を支える一流のミュージシャンたちが多数集結した。
ワディ・ワクテル(ギタリスト) リンダ・ロンシュタットやキース・リチャーズのサポートで知られる敏腕ギタリスト。本作のロック色を強めるエッジの効いたギタープレイを披露している。
ドン・ヘンリー&ティモシー・B・シュミット(イーグルス) 長年の盟友であるイーグルスのメンバーがバックボーカルとして参加。厚みのある美しいコーラスワークで楽曲のクオリティを引き上げている。
リンダ・ロンシュタット かつての恋人であり、彼の楽曲を数多くヒットさせた歌姫。本作でも息の合ったデュエットやバッキングボーカルを聴かせ、アルバムに華を添えている。
その他にも、デヴィッド・ハンゲイトやジョシュ・レオといった確かな実力を持つセッションミュージシャンが脇を固め、洗練された80sサウンドを構築している。
時代を超えて評価されるべきソングライターの結晶
『Home by Dawn』は、リリース当時は1970年代のスタイルを期待するファンから戸惑いを持って迎えられた側面もある。しかし、時間を経て聴き直すほどに、J.D.サウザーという根っからのソングライターが持つ「メロディの普遍的な美しさ」が際立つ仕上がりとなっている。
ウエストコースト・ロックの哀愁と、1980年代のポップ・センスが奇跡的なバランスで融合した本作は、AOC(アダルト・オリエンテッド・ロック)やシティポップの文脈からも再評価されるべき、極上のポップ・アルバムである。

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