1980年代の音楽シーンを語る上で、アメリカを代表するロックバンド「ジャーニー(Journey)」の存在を外すことはできない。
彼らが1983年にリリースした8枚目のスタジオ・アルバム『Frontiers(フロンティアーズ)』は、前作の爆発的ヒット作『Escape(エスケープ)』(1981年)に続き、バンドの黄金期を決定づけたモンスター級の名盤である。
本作は全米アルバムチャートで9週間連続2位を記録。当時の1位がマイケル・ジャクソンの怪物アルバム『Thriller(スリラー)』であったことを踏まえれば、実質的なロック・アルバムの頂点に君臨していたと言っても過言ではない。
ジャーニーの歴史と重要作『Frontiers』について
ジャーニーは1973年、サンタナのギタリストであったニール・ショーン(Neal Schon)らを中心に、サンフランシスコでプログレッシブ・ロック/ジャズ・ロック・バンドとして結成された。初期は高度なインストゥルメンタル主体の洗練されたサウンドを展開していたが、商業的な成功には恵まれなかった。
大きな転換期を迎えたのは1977年、希代のボーカリストであるスティーヴ・ペリー(Steve Perry)の加入である。彼の圧倒的な歌唱力とキャッチーなメロディ・センスにより、バンドはスタジアム・ロックの旗手へと変貌を遂げる。
さらに1980年、キーボーディストのジョナサン・ケイン(Jonathan Cain)が加入したことで、黄金期のラインナップが完成する。
ジョナサン・ケインのソングライティング能力は、バンドに哀愁を帯びた洗練されたポップ・センスをもたらした。その集大成となったのが、全米1位を獲得した『Escape』であり、その勢いをさらにモダンに、そして力強く押し進めたのが本作『Frontiers』であった。
シンセサイザーの導入とサウンド面の進化
『Frontiers』における最大の音楽的特徴は、80年代特有のきらびやかなシンセサイザー・サウンドの積極的な導入である。
一歩間違えれば従来のハードロックのダイナミズムを損ないかねないアプローチだが、本作では見事な調和を見せている。
ニール・ショーンのソリッドでエッジの効いたギターリフと、ジョナサン・ケインが構築するデジタルな音像が干渉することなく共存し、楽曲のスケール感をさらに巨大なものへと押し上げることに成功した。
時代を彩る名曲たちの深層解説
本作には、現在もロックのスタンダードとして愛され続ける名曲が多数収録されている。
■ 「Separate Ways (Worlds Apart) / セパレイト・ウェイズ」
アルバムのオープニングを飾る、バンドの代名詞的なハード・チューンである。イントロの重厚かつエモーショナルなシンセサイザーのフレーズが一瞬で空気を支配する。 力強いリズム・セクションに乗るスティーヴ・ペリーのソウルフルで哀愁を帯びたボーカルは、まさにスタジアム・ロックの到達点と言える。なお、メンバーが楽器を持たずに演奏を模したミュージック・ビデオ(MV)は、その独特な演出から80年代MTV時代を象徴するトピックとして、今なおファンの間で親しまれている。
■ 「Faithfully / 時への誓い」
「Open Arms」に並ぶ、ジャーニー屈指の至高のロック・バラードである。 ジョナサン・ケインが単独で作詞・作曲を手掛けたこの楽曲は、過酷なツアー生活を送るミュージシャンの孤独と、故郷で待つ家族への普遍的な愛が描かれている。ピアノの美しい旋律から始まり、後半に向けてエモーショナルに盛り上がるドラマチックな展開は、ライブにおいて観客との一体感を生む屈指の名曲である。
■ 「Send Her My Love / センド・ハー・マイ・ラヴ」
ロックバンドとしての骨太さを保ちながら、限界まで洗練されたAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)的なアプローチを見せるミディアム・ナンバーである。 スティーヴ・ペリーの表現力豊かなボーカルの魅力が最大限に引き出されており、バンドの音楽的引き出しの深さとクオリティの高さを証明する隠れた名曲として評価が高い。

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