隠れた名曲の再発見|ビリー・ジョエル『ソングズ・イン・ジ・アティック』が果たした役割

1981年にリリースされた『ソングズ・イン・ジ・アティック(Songs in the Attic)』は、1980年のアメリカツアーの模様を収録したライブアルバムである。しかし、本作は単なる「ヒット曲を集めた実況録音盤」とは一線を画している。

ここには、ビリー・ジョエル(Billy Joel)を一躍世界的スターダムへと押し上げた大ヒットアルバム『ストレンジャー(The Stranger)』以降の楽曲は一つも収録されていない。本作の真の目的は、ブレイク以前の初期4作品に埋もれていた珠玉の楽曲たちに、当時の最強のレギュラーバンドとともに新たな息吹を吹き込み、正当な評価を与えることにあった。



プロデューサー フィル・ラモーンが寄せたメッセージ

この大胆なアルバムコンセプトについて、ビリーの黄金期を支え、彼の音楽的転回点を作り出した名プロデューサー、フィル・ラモーンはライナーノーツに次のような言葉を寄せている。

いくつかの曲は時の流れを超え、常に変わらぬ美しさとインパクトを持ち続ける。一夜にしてスターになることをまだ夢見る人たちへ、これが「ストレンジャー」が私達のレコードコレクションに加わる遥か昔に書かれたビリーのソングライターそしてミュージシャンとしての力量を示すサンプルなのだ。

この言葉通り、本作は多くの人々にとって初期ビリー・ジョエルの優れた「サンプル」となり、彼のソングライティングの原点を広く知らしめる契機となった。


アルバムを彩る重要楽曲解説

本作の瑞々しいライブテイクによって、かつてスタジオ盤では表現しきれなかった楽曲のポテンシャルが完全に開花した。その代表的な楽曲を解説する。

シーズ・ガット・ア・ウェイ(She's Got a Way)

デビューアルバム『コールド・スプリング・ハーバー』に収録されていたバラードである。当時はマスタリングの不備(テープ速度の誤り)などもあり埋もれていたが、このライブヴァージョンがシングルカットされるとラジオを中心に大ヒットを記録。結果として、幻となっていたファーストアルバムが再評価され、再リリースへと繋がる決定打となった。

さよならハリウッド(Say Goodbye to Hollywood)

1976年のアルバム『ニューヨーク物語(Turnstiles)』に収録されていた楽曲。フィル・スペクター調のサウンドを意識したスタジオ版に対し、このライブ版ではバンドの骨太な演奏が前面に出ている。本作をきっかけに再びシングルカットされ、見事にヒットチャートを駆け上がった。


ピアノ・マン時代の隠れた名曲たち

他にも、ピアノの鍵盤を叩きつけるようなエネルギッシュなパフォーマンスが光る楽曲や、のちの「ロックンロール・エンターテイナー」としてのビル・ジョエルの雛形が、すでに初期の段階で完成していたことを証明するテイクが並ぶ。弦も切れよとばかりにピアノを駆り立て、ステージを支配するビリーと、彼を完璧に支えるバンドとの鉄壁の信頼関係が、すべてのトラックから生々しく伝わってくる。

フィル・ラモーンのプロデュースワークの功績は、このライブバンドを篤く遇し、その一体感をレコードに封じ込めた点にあると思う。


ソングス・イン・ジ・アティック - ビリー・ジョエル
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