2023年1月11日水曜日

ベイ・シティ・ローラーズ『恋のゲーム』解説|ブームの終焉と音楽的野心の狭間で



1970年代中盤、世界中に「タータン・ハリケーン」を巻き起こしたベイ・シティ・ローラーズ。その熱狂がピークを過ぎ、急速に沈静化へと向かう過渡期にリリースされたのが、1977年発表のアルバム『恋のゲーム(It's a Game)』である。

本作は、単なるアイドルグループからの脱却を試みたメンバーたちの「音楽的野心」が詰まった一枚として、今こそ再評価されるべき内容となっている。

タータン・ハリケーンの変遷と「予兆」

ベイ・シティ・ローラーズは、スコットランドのエディンバラ出身のポップ・ロック・バンド。1974年から1976年にかけて、『サタデー・ナイト』などのヒット曲で世界を席巻した。

しかし、前作『青春に捧げるメロディー(Dedication)』に収録された楽曲『イエスタデイズ・ヒーロー』(ジョージ・ヤング&ハリー・ヴァンダー作)で、「過去のヒーローになりたくない」と切実に歌い上げたことは、皮肉にもその後のブーム失速を予兆する形となった。


音楽的中心人物、エリック・フォークナーの執念

ブームが萎み始めたことが契機になったのだろう、バンドは自分たちの本当にやりたい音楽を模索し始めることとなる。

特に音楽的リーダーであったエリック・フォークナーは、以前からグラムロックへの傾倒を隠していなかった。そのエリックの意向を反映し、本作ではデヴィッド・ボウイを手がけたことで知られる名プロデューサー、ハリー・マスリンが起用されている。

デヴィッド・ボウイへのオマージュ

アルバム内では、ボウイのグラムロック期を代表する名曲『Rebel Rebel(反逆のアイドル)』のカバーを披露している。これまでの甘いアイドル歌謡路線とは一線を画す、ソリッドでエッジの効いたサウンドへの転換を試みていたことが伺える。


アルバム『恋のゲーム』の特徴と聴きどころ

本作は、従来のバブルガム・ポップ路線を維持しつつも、より洗練されたロック・アルバムとしての完成度を求めた作品である。

  • ハリー・マスリンによる緻密なプロデュース

ボウイの音楽を作っていたのは伊達じゃない。音の厚みが増し、従来の作品よりも「ロックバンド」としてのダイナミズムが感じられる録音となっていると思う。

  • オリジナル楽曲の充実

エリック・フォークナーやウッディ(スチュアート・ウッド)による自作曲の比重が高まり、アーティストとしての自我が強く反映されている。

  • タイトル曲「恋のゲーム」

ストリングスを多用したドラマチックな展開は、それまでの「ティーン向けアイドル」の枠を超えた音楽性を体現できたと言えるのではないか。


アイドルから「アーティスト」への脱皮

『恋のゲーム』は、爆発的なローラーズ・ブームが去りゆく中で、彼らが「自分たちの音楽」を鳴らそうと足掻き、そして輝いた瞬間を記録したドキュメントだと言っても大袈裟じゃないだろう。

その「足掻き」こそが、意外なほど長くこのアルバムを聴き続けるリスナーを少なくとも一人(はい私です)獲得している。なんか身につまされる思いである。



恋のゲーム(紙ジャケット仕様)
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