『Steve Winwood / Steve Winwood』トラフィック解散からソロ始動へ、マルチ奏者としての足跡と緻密なアンサンブルが交錯する1977年作
アーティスト詳細:スペンサー・デイヴィス・グループからソロへの軌跡
スティーヴ・ウィンウッド(Steve Winwood)は、スペンサー・デイヴィス・グループにボーカリスト兼キーボディストとして加入、『Gimme Some Lovin’』という大ヒット曲を歌い、10代半ばという年齢を感じさせない迫力のあるボーカルで世界を驚かせた。
その後ブラインド・フェイスやトラフィックなど、1960年代から1970年代のブリティッシュ・ロックシーンの中核を担うバンドで活動してきた。
R&Bやブルー・アイド・ソウルに根ざしたヴォーカルと、Hammond B3オルガンを中心としたキーボード・プレイ、さらにはギターやベースまでこなす高い演奏技術を兼ね備えている。
トラフィックの活動停止後、彼が1977年に発表した初の個人名義作品が本作『Steve Winwood』である。複数のバンドで中心的役割を果たしてきた彼が、バンドという枠組みから一度離れ、自身の名前を前面に掲げて制作したソロ・キャリアの第1歩となるアルバムである。
音楽的特徴:セッション性と緻密なトラック・メイキングの融合
本作は、トラフィック時代の同僚であるジム・キャパルディをはじめ、ウィリー・ウィークスやアンディ・ニューマークといった腕利きミュージシャンをサポートに迎えて制作されている。
全体のサウンド構成は、R&Bやファンクの要素を含んだタイトなリズム・セクションの上に、ウィンウッド自身によるオルガンやシンセサイザー、ギターがレイヤードされたものとなっている。過度に派手な装飾を排し、じっくりとリフレインを重ねながら展開する楽曲が多く、1970年代後半におけるブリティッシュ・ロックとアトランティック・サウンドの接続点を示すスタジオ・ワークが見られる。
主要楽曲の分析:ソロ活動の出発点を刻むトラック
Hold On
アルバムのオープニングを飾るトラックである。ミディアム・テンポの安定したリズムに乗せて、ウィンウッドのハスキーなヴォーカルとソウルフルなキーボード・フレーズが提示される。シンプルな展開の中に彼のボーカル・アプローチの特性が現れている。
Time Is Running Out
ファンキーなベースラインとタイトなドラムスが推進力を生み出すアップテンポ・ナンバーである。トラフィック時代から通底するR&Bのリズム解釈と、シンセサイザーのバッキングが絡み合うアレンジメントが施されている。
Midland Maniac
ウィンウッドがすべての楽器を自ら演奏して多重録音を行ったソロ・トラックである。多重録音ならではの緻密なアンサンブルと、マルチ・インストゥルメンタリストとしての技術的側面がダイレクトに反映された楽曲構成を持つ。
Vacant Chair
ジム・キャパルディが作詞を手掛けたセンチメンタルな質感を持つ楽曲である。アコースティックな響きとシンセサイザーのレイヤーが交差し、緩やかなテンポの中でボーカルの旋律線が静かに伸びていくトラックである。
総括 & ちょっと深掘り
バンドのフロントマンとして長年キャリアを積み重ねてきたスティーヴ・ウィンウッドが、ソロ名義として初めて自身の音楽をひとつのパッケージにまとめた1977年発表のアルバムである。
しかし、時はパンクロックの全盛期。10代からすでに老成したアーティストだったウィンウッドの音楽性はこの段階では注目されず。
翌年ウィル・ジェニングスを作詞に迎えたシングル「ユー・シー・ア・チャンス」がヒット。同曲を収録した2ndソロアルバム『アーク・オブ・ア・ダイヴァー』で全米3位の爪痕を残す。
そして、『トーキング・バック・トゥ・ザ・ナイト』を経て、大傑作『バック・イン・ザ・ハイ・ライフ』(Back in the High Life)のリリースとなる。

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