『The Rolling Stones / Still Life』巨大化するスタジアム・ロックの狂騒を記録した、80年代ストーンズの鮮烈なスピード感

 ザ・ローリング・ストーンズは、1960年代のブルース・ロックを原点としながらも、ディスコやニュー・ウェイヴなど各年代の先端トレンドを貪欲に吸収し、常にフロントランナーであり続けてきたバンドである。1970年代末のパンク・ムーヴメントへの回答となった『Some Girls』(1978年)、そして前作『Emotional Rescue』(1980年)で見せたタイトなファンク路線の成功を経て、彼らは1981年にアルバム『Tattoo You(刺青の男)』を発表する。

この時期のストーンズは、音楽的な洗練と同時に、バンドビジネスとしても巨大な転換期を迎えていた。1981年秋から冬にかけて敢行された全米ツアーは、広大なフットボール・スタジアムを主戦場とし、派手な原色を基調とした巨大なステージセットを導入するなど、現代に続く「メガ・ツアー」の先駆けとなった。本作『Still Life』は、その熱狂の全米ツアーから厳選されたテイクを収め、1982年にリリースされたライブ・アルバムである。

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音楽的特徴:スタジアムを支配する、驚異的なスピード感とドライな音像

本作の最大の音楽的特徴は、全編を貫く圧倒的なテンポの速さと、無駄を削ぎ落としたタイトなアンサンブルにある。1970年代のライブ盤『Get Yer Ya-Ya's Out!』などに聴かれた、重厚でアーシーなブルースのグルーヴからは明確に変化している。チャーリー・ワッツのドラムとビル・ワイマンのベースが叩き出すビートは直線的で、ニュー・ウェイヴの時代を通過したことを物語るドライな音像が印象的である。
キース・リチャーズとロニー・ウッドのギター・ワークも、絡み合う繊細さよりは、スタジアムの隅々まで瞬時に届くような鋭いカッティングと瞬発力に重きが置かれている。さらに、サポート・メンバーであるイアン・スチュワートやマック・レベナック(ドクター・ジョン)らのピアノ、アーニー・ワッツのきらびやかなサックスが加わることで、スピード感を維持したまま、大空間に映えるポップな華やかさを獲得している。

主要楽曲の分析:往年の代表曲の更新と、新たなスタンダード

アンダー・マイ・サム(Under My Thumb)

1960年代の代表曲が、1981年のスタジアムに適合する形で鮮やかにアップデートされている。オリジナルのマリンバを用いたダークな雰囲気から一転し、本作ではオープニングを飾るにふさわしい、きらびやかで軽快なロック・ナンバーへと変貌を遂げている。ミック・ジャガーのスタジアム全体を煽るようなボーカルと、疾走感あふれるアレンジが、ツアーのスケールの大きさを冒頭から証明している。

スタート・ミー・アップ(Start Me Up)

当時の最新ヒット作『Tattoo You』のリード・シングルであり、すでにこの時点でバンドの新たな代名詞としての風格を纏っている。キース・リチャーズが放つ代名詞的なギター・リフは、スタジオ盤以上にエッジが効いており、チャーリーの正確なスネアのヒットとともに、スタジアムを揺るがす強烈なダイナミズムを生み出している。80年代ストーンズのモードを象徴する、最も肉体的でファンキーなテイクである。

タイム・イズ・オン・マイ・サイド(Time Is On My Side)

1960年代の初期ストーンズを支えたソウル・カバーへの回帰である。ここではオリジナル版の瑞々しさを保ちつつも、スタジアムの聴衆全体でシンガロングすることを意識した、より大きく、包容力のあるアレンジへとスケールアップしている。過去の遺産を懐古的に響かせるのではなく、現役のタフなロックンロール・バンドとしての説得力をもって歌い上げられる点に、彼らの表現の奥深さがある。

巨大化するロック・ビジネスの現場を活写したドキュメント

かつての泥臭いブルースロックを聴かせるライブ・バンドから、何万人もの大聴衆を一度に熱狂させるエンターテインメントの王者へと変貌した過渡期の記録。
共同プロデューサーのクリス・キムジーとともに仕上げられた本作の乾いた質感は、次なるライブ映像作品『Let's Spend the Night Together』とともに、1980年代前半のストーンズのリアルなドキュメントとなっている。


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