『Steely Dan / Katy Lied』セッションプレーヤーによる音響的精度とソングライティングを極めた4thアルバム

 アーティスト詳細:ライブ活動を停止しスタジオ制作へシフトした変革期

スティーリー・ダン(Steely Dan)は、ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)とウォルター・ベッカー(Walter Becker)を中心に結成されたユニットである。ツアー生活による疲弊やライヴ演奏での再現性の限界を感じた二人は、前作『Pretzel Logic』制作後のツアーを最後にツアーバンドとしての形を解体した。本作『Katy Lied』(邦題:うそつきケイティ)からは、固定メンバーによるバンド演奏ではなく、二人が求める楽曲のイメージに合わせて第一線のスタジオミュージシャンを細かく起用する制作スタイルへと完全に移行している。

音楽的特徴:緻密な音響設計と複雑なコードワークが結実した1975年作

1975年にリリースされた『Katy Lied』は、スティーリー・ダンの4thアルバムである。前作で見せたコンパクトな楽曲志向を継承しつつ、ジャズやR&Bの複雑なハーモニーをロックのフレームワークに自然に溶け込ませている。録音時には当時の最新技術であったdbxノイズリダクションシステムの不具合に見舞われ、音質面のトラブルに悩まされたものの、ジェフ・ポーカロ(Jeff Porcaro)の緻密でタイトなドラミングワークを中心に、高度に計算されたセッションワークが全編を支えている。



主要楽曲の分析:精鋭ミュージシャンによるアンサンブルと楽曲の構造

Black Friday



アルバムのオープニングを飾るアップテンポなナンバーである。歪んだギターリフとシャッフルビートが全体を牽引し、金融恐慌を題材にした皮肉交じりの歌詞が展開する。ウォルター・ベッカーによるベースとデニー・ディアス(Denny Dias)らの鋭いギターワークが、軽快でありながら緊張感のある演奏を作り出している。


Bad Sneakers



ソウルフルなコーラスワークと緻密なコード進行が交錯する楽曲である。ドナルド・フェイゲンのヴォーカルに加え、マイケル・マクドナルド(Michael McDonald)によるバックコーラスが印象的な色彩を添えている。リック・デリンジャー(Rick Derringer)による流麗なギターソロが挿入され、アンサンブルの完成度を高めている。


Doctor Wu



複雑な転調とストーリー性の高い歌詞構造を持ったミディアムテンポのトラックである。フィル・ウッズ(Phil Woods)によるアルトサックスのソロパートがフィーチャーされており、ジャズのイディオムを大胆に取り入れた初期スティーリー・ダンの典型的なアプローチを示している。

Your Gold Teeth II

前々作に収められていた同名曲のパート2にあたる楽曲で、5/4拍子を含む複雑なリズムアプローチが取り入れられている。ジェフ・ポーカロの上質なドラミングとデニー・ディアスの流れるようなジャズスタイルのギターソロが交錯し、緻密な音響構築が際立つ構成となっている。


総括

ツアーバンドとしての熱量を打ち出した前作までのアプローチから離れ、スタジオワークによる精密な楽曲構築へと舵を切った作品である。一流のセッション奏者を排他的かつ効果的に配置することで、彼らのソングライティングにおけるジャズとロックの融合がより明確な形となって示されている。


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