2023年3月6日月曜日

オリオンビールみーつけた!

オリオンビールが好きだ。

いつもはサッポロの苦めのビールを愛飲しているが、どこか異国情緒のあるオリオンの佇まいを見つけると、つい買ってしまう。

昨日もスーパーで見かけて迷わず買った。


 エール系で、非常に複雑な味わいを持つビール。美味でした。

2023年3月5日日曜日

確定申告のDX

昨年度の確定申告を終えた。

『弥生』アプリケーションを導入してからの確定申告は毎年この上なくスムーズだが、e-Taxに移行してからは苦難の道のりだった。

特に昨年は、e-Taxの利用申し込みとマイナンバーカードの折り合いが悪く、何度も何度も申請をやり直しさせられた。

ネットリテラシーが低いせいといえばその通りで一言もないが、今年のシステムでは実にスムーズ。『弥生』でほとんどの操作ができたことが大きいと思う。

スマートフォンでのマイナンバーカードの読み取りと弥生の専用アプリの組み合わせで、あっという間にデータの送信が完了。あっけないくらいだった。


 

昨年のことを思い起こすと、弥生の専用アプリが果たしていた役割をマイナポータルでやろうとして、ぐるぐると堂々巡りになった記憶がある。

そういえば、現在メインバンクで使っている北洋銀行が、最近、ATMの振り込みシークエンスを変更し、これが大変煩雑で、ATMの列が伸び、月末なんかだと1時間近く店内にすら入れない事態となっている。 


なぜシステム開発は「すべりがち」なのか。

きっと客の言うことを聞きすぎるんだろう。

素人さんにプロのサービスを提供しているからお金がもらえるのであって、素人さんの言う通りやるなら誰にだってできる。

ジョブスがマウスにボタンを一つしか設けなかったのは、ユーザーを信用していなかったからだ。そんな制約条件の中でMacOSのインターフェイスは洗練された。

ゲイツは、Windowsの開発に際して、「DOS/Vで動くMac」が欲しいんだ!と怒鳴ったという逸話があるが、当たり前の感性で新しい洗練は作れない。 

老舗の『弥生』さんの見事なDXには本当に感心した。願わくば、このような洗練がこの国に満ちますように。

2023年3月4日土曜日

山下達郎札幌公演に行ってきた。

2023年2月7日、札幌文化芸術劇場hitaruにて開催された山下達郎札幌公演に行ってきた。本来は昨年実施されるはずだったが、ご本人のコロナ感染で延期になっていたものだ。 

山下達郎は公式に映像作品を発売していない。コンサートに行きたくても、なかなか抽選には当たらなかった。

2012年に映画館で、シアターライブが公開された時には喜び勇んで観に行った。演奏巧者の猛者揃いのライブは素晴らしく、中でも達郎本人のギターに圧倒された。ラストシーンに選ばれた北海道のフェス。圧巻の『さよなら夏の日』にスクリーンの中の観客たちが涙を流していて、映画館の僕らももらい泣きした。

そんな公演を生で経験できるのだからと、とても楽しみにしていた。 

幕が開き、一曲目『スパークル』のあのイントロで、すでに僕の興奮はマックスだった。

しかし、演奏が終わった後、ラジオ『サンデーソングブック』と同じトーンで、達郎はこのように話し始めた。


「よかった。最初から総立ちになったりしたら帰るところだった。このコンサートには作法があるから初めての人は、お馴染みさんのやる通りやってください」と。

郷にいれば郷に従え。特に異論はない。

しかし、僕が長い間山下達郎の音楽から受け続けていた感銘と、完成されたエンタテインメントショーとしてのライブの間には、大きな溝があった。

最後まで、僕はそのライブの流れに乗り切れず、総立ちの会場の中で一人座って彼の歌を聴いていた。

佐野元春のコンサートで彼が叫ぶ「自由がなければ意味がないのさ、そうだろう」という言葉が僕の頭の中でずっと鳴っていた。

ぼくのポルシェ

小学4年生のとき、おばあちゃんにおねだりしてタミヤ製のプラモデル『PORSCHE 934RSR』を買ってもらった。5000円くらいしたと思う。

当時の自分の技量ではうまく作れず、いろんなところを誤魔化してなんとか形にした。

それが気にかかって、高校生くらいまで手を入れ続けたが、そのことで却って傷は広がり、 長い時間をかけてそのプラモデルは僕に深くてリアルな教訓を与えた。

大学に行くため実家を出る時、諦めがついてそのプラモデルを捨てたが、その教訓は僕の中に残り続けた。ビジネスマン時代、周囲が焦れるほど完全な準備ができているかを見極め、慎重すぎるほど慎重にことを運び、時にはそれでチャンスを逃すこともあった。それでも対症療法を重ねて傷が残り続けるよりはマシだと思い続けた。

そして僕は『PORSCHE 934RSR』自体のことも忘れていなかった。

会社を辞めてセミリタイア時代に入る時、僕が真っ先に手に入れたのは、あの『PORSCHE 934RSR』だった。時を経てその商品は12,000円ほどになっていた。

長い時間をかけて、頭の中でシミュレーションし続けたプラモ製作。生来の不器用さゆえ、今回も完璧とはいかなかったが、2回目の製作は、その後の修正を要求しなかった。

 

完成させてから今年で16年になるが、今でも机の真横に鎮座している。時々磨いてあげるが、色褪せない魅力がある。

フェルディナンド・ポルシェ博士が、ヒトラーのために作った国民車をルーツに持ち、現在のラインナップにも面影を残す永遠のデザイン。

おそらく実車を入手する機会は一生あるまいが、僕の心をデザインした大切な一部として、一生残り続けるだろう。

2023年2月21日火曜日

寒い夜に聴くジャズの深淵|パトリシア・バーバー『NIGHTCLUB』がもたらす極上の孤独

夜に聴くジャズは、時に落ち着いたリラクゼーションをもたらし、時に静かに心をざわつかせる。とりわけ冬の凍てつくような夜、部屋にこもって所在なさを感じるときに針を落としたくなる(あるいは音源を再生したくなる)のが、パトリシア・バーバー(Patricia Barber)の音楽だ。



彼女の2000年の名盤『Nightclub』を久しぶりに聴き、中盤に収録された名曲「アルフィー(Alfie)」が流れた瞬間、ハッとした。希代のポップ・マエストロ、バート・バカラックが亡くなった際、自宅にある「アルフィー」の別バージョンを際限なく探し集めた記憶が蘇ったからだ。

パトリシア・バーバーがこの曲を歌っていたという盲点。その不意打ちのような感覚こそ、彼女の音楽が持つ最大の魅力であり、現代ジャズシーンにおける彼女の唯一無二の立ち位置を証明している。

現代ジャズシーンの異端にして至高。パトリシア・バーバーとは?

ジャズ・ピアニストであり、シンガーソングライターでもあるパトリシア・バーバーは、現代ジャズ界において極めて独特な光を放つ存在である。

シカゴを拠点に活動を続ける彼女は、単なる「スタンダードを綺麗に歌うジャズボーカリスト」ではない。その音楽性は、冷徹なまでにコントロールされたピアノタッチ、低音で呟くようなクールなアルトボイス、そして文学的でシニカルなオリジナル曲の歌詞に特徴づけられる。

知性派としての立ち位置と評価

バーバーは、ジャズミュージシャンとしては異例の「グッゲンハイム・フェロー(創造的な芸術家に贈られる権威ある賞)」を奨励金として授与されるなど、その高い芸術性と知性が多方面から評価されてきた。伝統的なスイングやボサノヴァの語法を解体し、現代音楽やポップスの要素を独自の美学で再構築する手腕は、目の肥えたジャズファンやオーディオマニアからも絶大な支持を得ている。

感情に侵入してこない「極上のディスタンス」


パトリシア・バーバーの音楽を聴いて感じるのは、聴き手との間にある「絶妙な距離感」だ。

一般的なジャズボーカルは、聴き手の感情に寄り添ったり、エモーショナルに訴えかけてきたりすることが多い。しかし、バーバーの歌声はどこまでもクールで、過度な感情移入を拒むかのような静けさを湛えている。

「心に勝手に入ってこない音楽」

これこそが、彼女の音楽が持つ貴重な価値だ。押し付けがましさが一切ないからこそ、聴き手は自分の孤独や思考をその音楽の隙間に滑り込ませることができる。特に、寒さで心が内向的になりがちな夜には、この「ベタつかない温度感」が最高に心地よい。


<Nightclub>
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2023年2月20日月曜日

扁桃腺で寝込んで、エラリイ・クイーン『靴に棲む老婆』を読む

何年かぶりに、扁桃腺が腫れて高熱が出た。
一週間ほどベッドに寝たきりだったから、読書が捗る。
せっかくの機会を活かして、出版されて間もないエラリイ・クイーン『靴に棲む老婆』を読む。
 
まったく知らない作品だったが、とても面白かった。
最近、『災厄の町』以降の作品が、越前敏弥による新訳で再発されているが、これはその中でも群を抜いて面白かったなー。

2023年2月6日月曜日

DIANA KRALLとCOPLANDの夜

先週、昔の仲間が札幌を訪れて来た。
懐かしいなと二日続けて痛いほど飲んだ。 
 
夢があったから、定年まで勤め上げるような生き方が出来なかった。
それなりに面白い人生だったが、ここにきて少し疲れを感じる日もある。

そいつもまあ、色々あった奴だ。
気がつけば、お互い自分の話ばかりしてうまく噛み合わない会話が続いた。

なんとなく疲れが取れないまま、無為な週末を過ごして月曜日が来た。
そんな僕のために妻がトンカツを揚げてくれた。
ビールとトンカツの後、部屋に戻ってCDラックのダイアナ・クラールが呼んでいるような気がして、『Night and Day』の入ったこのアルバムを選んだ。
 

 
プリアンプが不調で、COPLANDの真空管プリメインで鳴らしているからか、いつもより少し音像が小さく、ステージからではなく、この部屋で歌っているような音がする。
 
 
そんなこともあるさ、とやっと思えるようになった。
音楽に救われるなんてしょっちゅうだが、 歳をとると有り難みが増すね。


2023年2月1日水曜日

朝6時のレコードから始まる、心豊かな一日のデザイン


一流の男たちが「朝のレコード」を愛する理由

忙しい現代人にとって、朝は戦場のような時間かもしれません。しかし、世界的なファッションデザイナーのポール・スミス氏は、毎朝6時に出社し、まずオフィスでLPレコードに針を落とすといいます。

また、作家の村上春樹氏も、翌朝に聴くレコードを前夜のうちに選んでおくという習慣を明かしています。

なぜ、研ぎ澄まされた感性を持つ彼らは、あえて手間のかかる「レコード」を朝の習慣に取り入れているのでしょうか。

心にスイッチを入れるルーティン


スマホひとつで瞬時に音楽が流れる時代、ジャケットから盤を取り出し、慎重に針を落とすという行為。
このルーティンこそが、心地よい覚醒に繋がるのかもしれません。
  • ジャケットの美しさを愛でる
  • 盤面の埃を払う静かな時間
  • 針が溝に触れる瞬間の期待感
こんな数分の儀式が、慌ただしい日常から切り離された「自分だけの聖域」を作ってくれるのです。

「次に聴く一枚」を夜に選ぶ楽しみ


村上春樹氏のスタイルを真似て、夜のうちに「明日の朝の一枚」を決めておく。これが意外なほど生活にリズムを与えてくれます。

「明日は少し早起きして、あのジャズのヴォーカルを聴こう」 そう思うだけで、夜の過ごし方や、翌朝の目覚めの質が少しだけ変わるから不思議です。

今日をデザインする、朝の30分


600枚ほどになった私のコレクションも、アルファベット順に一枚ずつ聴き直す「総浚い(そうざらい)」を始めてから、新たな発見の連続です。
まだ何も抱えていない、まだ何にも縛られていない、そんな朝の時間だからこそ、音楽に向き合う心を持てるのかもしれません。

(『レコード棚を総浚い』のインデックスをnoteで整備中です。下記からご覧ください)



2023年1月31日火曜日

隠れた名曲の再発見|ビリー・ジョエル『ソングズ・イン・ジ・アティック』が果たした役割

1981年にリリースされた『ソングズ・イン・ジ・アティック(Songs in the Attic)』は、1980年のアメリカツアーの模様を収録したライブアルバムである。しかし、本作は単なる「ヒット曲を集めた実況録音盤」とは一線を画している。

ここには、ビリー・ジョエル(Billy Joel)を一躍世界的スターダムへと押し上げた大ヒットアルバム『ストレンジャー(The Stranger)』以降の楽曲は一つも収録されていない。本作の真の目的は、ブレイク以前の初期4作品に埋もれていた珠玉の楽曲たちに、当時の最強のレギュラーバンドとともに新たな息吹を吹き込み、正当な評価を与えることにあった。



プロデューサー フィル・ラモーンが寄せたメッセージ

この大胆なアルバムコンセプトについて、ビリーの黄金期を支え、彼の音楽的転回点を作り出した名プロデューサー、フィル・ラモーンはライナーノーツに次のような言葉を寄せている。

いくつかの曲は時の流れを超え、常に変わらぬ美しさとインパクトを持ち続ける。一夜にしてスターになることをまだ夢見る人たちへ、これが「ストレンジャー」が私達のレコードコレクションに加わる遥か昔に書かれたビリーのソングライターそしてミュージシャンとしての力量を示すサンプルなのだ。

この言葉通り、本作は多くの人々にとって初期ビリー・ジョエルの優れた「サンプル」となり、彼のソングライティングの原点を広く知らしめる契機となった。


アルバムを彩る重要楽曲解説

本作の瑞々しいライブテイクによって、かつてスタジオ盤では表現しきれなかった楽曲のポテンシャルが完全に開花した。その代表的な楽曲を解説する。

シーズ・ガット・ア・ウェイ(She's Got a Way)

デビューアルバム『コールド・スプリング・ハーバー』に収録されていたバラードである。当時はマスタリングの不備(テープ速度の誤り)などもあり埋もれていたが、このライブヴァージョンがシングルカットされるとラジオを中心に大ヒットを記録。結果として、幻となっていたファーストアルバムが再評価され、再リリースへと繋がる決定打となった。

さよならハリウッド(Say Goodbye to Hollywood)

1976年のアルバム『ニューヨーク物語(Turnstiles)』に収録されていた楽曲。フィル・スペクター調のサウンドを意識したスタジオ版に対し、このライブ版ではバンドの骨太な演奏が前面に出ている。本作をきっかけに再びシングルカットされ、見事にヒットチャートを駆け上がった。


ピアノ・マン時代の隠れた名曲たち

他にも、ピアノの鍵盤を叩きつけるようなエネルギッシュなパフォーマンスが光る楽曲や、のちの「ロックンロール・エンターテイナー」としてのビル・ジョエルの雛形が、すでに初期の段階で完成していたことを証明するテイクが並ぶ。弦も切れよとばかりにピアノを駆り立て、ステージを支配するビリーと、彼を完璧に支えるバンドとの鉄壁の信頼関係が、すべてのトラックから生々しく伝わってくる。

フィル・ラモーンのプロデュースワークの功績は、このライブバンドを篤く遇し、その一体感をレコードに封じ込めた点にあると思う。


ソングス・イン・ジ・アティック - ビリー・ジョエル
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2023年1月30日月曜日

ロックンローラーへの変貌:ビリー・ジョエル『グラス・ハウス(GLASS HOUSES)』の音楽的革新とタイトルの深層

1980年に発表されたビリー・ジョエル(Billy Joel)の7作目のスタジオ・アルバム『グラス・ハウス(GLASS HOUSES)』は、彼のキャリアにおける最大の転換点であり、同時に世界的な大ヒットを記録した重要作である。

グラス・ハウス(期間生産限定盤)
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それまでの「ピアノ・マン」や「吟遊詩人」といった都会的で洗練されたイメージを覆し、剥き出しのロック・アプローチを敢行した本作。その音楽的背景、楽曲分析、そして印象的なアルバム・タイトルに込められた真意について、考えてみたい。


1. 時代へのカウンター:『グラス・ハウス』の音楽的特徴

本作を紐解く上で欠かせないのが、1970年代末から1980年当時の音楽シーンの潮流である。当時はパンク・ロックやニュー・ウェイヴ(New Wave)が台頭し、旧来のポップスやシンガー・ソングライターを「過去の遺物」として批判する空気が確かに存在していた。

音楽メディアからしばしば「主流派のソフト・ロッカー」とカテゴライズされていたビリーは、この風潮に鋭く反応した。その回答こそが、本作で見せた「エッジの効いたギター・サウンド主体のロック」である。

ピアノから強靭なバンド・サウンドへ

本作における最大の音楽的変革は、ビリーの代名詞であるピアノの音色がミックスの奥へと退き、代わりにディストーションの効いたツイン・ギター(デヴィッド・ブラウンとラッセル・ジェイヴァス)と、リバティ・デヴィートのパワフルなドラムが前面に押し出された点にある。

レコーディングは、彼のバックバンド(後に「The Lords of 52nd Street」と呼ばれるメンバー)とともに、ほぼ一発録りに近いライブ感溢れる手法で行われた。これにより、シンガー・ソングライター的な予定調和を排した、緊迫感と疾走感のあるサウンドが完成したのである。


2. アルバムを彩る名曲の楽曲分析

全米アルバム・チャートで6週連続1位を獲得した本作は、緻密に計算されたポップ・センスとロックの衝動が見事に融合している。

ガラスのニューヨーク(You May Be Right)

アルバムの幕開けを告げるガラスの破砕音。ピアノではなくギターのリフがドライヴする、ビリー流のハード・ロックである。

ロックン・ロールが最高さ(It's Still Rock and Roll to Me)

自身初の全米シングルチャート1位を獲得。流行を追うメディアを痛烈に風刺しつつ、骨太なビートとサックスソロで聴かせる。

ドント・アスク・ミー・ホワイ(Don't Ask Me Why)

マッカートニー調の軽快なメロディとラテン風味のシャッフル・ビート。本来のポップ職人としてのクオリティが光る佳曲。

レイナ(All for Leyna)

シンセサイザーの印象的なフレーズと、狂気的な愛を歌うビリーの歪んだボーカルが、スケールの大きなドラマを生み出している。


3. タイトル『グラス・ハウス』が内包する辛辣なメッセージ

アルバム・タイトル『グラス・ハウス(Glass Houses)』は、英語圏の警句から発想されている。

"People who live in glass houses should not throw stones."

(ガラスの家に住む者は、他人に石を投げてはならない)

このフレーズは、「自分自身に欠点や弱みがある(完璧ではない)人間は、他人を批判・攻撃すべきではない」という意味を持つ。

ジャケット写真が表現する「異議申し立て」

アルバムのジャケットでは、レザー・ジャケットを身にまとったビリーが、実在する広大なガラス張りの邸宅(当時彼が所有していたウォーターフロントの家)に向かって、今まさに石を投げつけようとする過激なヴィジュアルが切り取られている。

この寓意(アレゴリー)が示しているのは、批評家や音楽メディアに対するビリーからの強烈な皮肉と異議申し立てである。

「安全な場所(ガラスの家)から、自分を古臭いと批判してくるメディアやトレンド追従者たちよ、お前たち自身の足元は本当に安全なのか?」という、ビリーのタフで攻撃的なアティチュードの表れなのだ。

アルバムの冒頭が「ガラスの割れる音」から始まるのも、この既成概念や批判の壁を自ら打ち破るという、強力な宣言に他ならない。


グラス・ハウス(期間生産限定盤)
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2023年1月28日土曜日

ビリー・ジョエル『52nd Street』徹底解説|ジャズへの接近、楽曲分析、ジャケット深読み

大ヒット作『The Stranger』に続き、名プロデューサーであるフィル・ラモーンと再びタッグを組んで1978年にリリースされたビリー・ジョエル(Billy Joel)の6thアルバム『52nd Street(ニューヨーク52番街)』。

ニューヨーク52番街(期間生産限定盤)
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本作はビリーに初の全米アルバム・チャート1位をもたらし、グラミー賞の最優秀アルバム賞も受賞した記念すべき作品。
本稿では、本作の音楽的特徴や主要楽曲の分析に加え、タイトルやジャケットデザインに込められた深い意味について紐解いていく。

1. アルバムタイトル「52nd Street」とジャケットが持つ意味


タイトルの由来:ジャズの聖地へのオマージュ


アルバムタイトルである「52nd Street(52番街)」は、ニューヨークのマンハッタンを東西に走る通りの名である。特に1930年代から1950年代にかけて、この通りは「ジャズの街(Street of Jazz)」と呼ばれ、数多くのジャズクラブが軒を連ねていた。マイルス・デイヴィスやチャーリー・パーカーといったレジェンドたちが夜な夜なセッションを繰り広げた、まさにジャズの聖地である。

ビリーはこのタイトルを冠することで、自身を育んだニューヨークの音楽史、とりわけ「ジャズ」というジャンルへのリスペクトを明確に打ち出している。また、当時彼が所属していたソニー・ミュージック(コロシアム・レコード)のレコーディングスタジオが52番街にあったことも、このタイトルを選んだ現実的な理由の一つである。

ジャケットデザイン:路地裏のトランペットが示すもの


ジャケットには、ニューヨークのどこか薄暗い路地裏、あるいは建物の壁際に佇むビリー・ジョエルの姿が写し出されている。彼の足元(または手元)にはトランペットが置かれており、この視覚的アプローチからも本作が「ジャズ」の要素を強く内包していることが一目で伝わるデザインとなっている。都会の哀愁と、これから始まる音楽のサフィスティケートされた質感を予感させる、非常に完成度の高いアートワークである。

2. 音楽的特徴:ロックとジャズ・フュージョンの融合


前作『The Stranger』がポップでキャッチーなロック・サウンドを極めた作品だったのに対し、本作『52nd Street』はより複雑でスモーキーなジャズやフュージョンのアプローチが取り入れられている。
フィル・ラモーンによる緻密なプロデュースのもと、ニューヨークの一流ミュージシャンたちが集結。ポップスとしての親しみやすさを維持しながらも、コード進行やリズムセクションのグルーヴにはジャズ特有のスウィング感やテンションコードが多用されており、洗練されたサウンドスケープを構築している。

3. 主要楽曲の緻密な分析


本作を語る上で欠かせない重要曲を、音楽的・背景的な視点から分析する。

Honesty(オネスティ)――「誠実さ」を問いかける不朽のバラード


日本において本作の代名詞とも言えるのが、この「Honesty」である。美しいピアノの旋律から始まるこの哀愁を帯びたバラードは、人間の「誠実さ(Honesty)」がいかに希少で手に入りにくいものであるかを切々と歌い上げる。
音楽的特徴: 派手な抑揚をつけるのではなく、優しさを探している人々に寄り添うような、繊細で静かな説得力を持つボーカルワークが求められる楽曲である。シンプルでありながら感情の機微を捉えたコード展開が、歌詞の持つ切実さをより一層際立たせている。

My Life(マイ・ライフ)――本国アメリカでの圧倒的評価


「Honesty」が日本で絶大な人気を誇る一方で、本国アメリカをはじめとするグローバル市場で圧倒的な評価とヒットを記録したのが「My Life」である(全米シングルチャート3位)。
音楽的特徴: アップテンポで軽快なシンセサイザーのイントロが印象的なポップ・ロック。他人に干渉されず「自分の人生を生きる」という強い意志が描かれており、当時のアメリカの社会的空気感とも合致した。日本における『The Stranger』の「素顔のままで(Just the Way You Are)」と「ストレンジャー」の関係性のように、日米でシングル曲の評価が逆転している現象は興味深い。

Zanzibar(ザンジバル)――フレディ・ハバートを迎えたジャズへの到達点


アルバム後半のハイライトであり、本作の音楽的野心を最も象徴しているのが「Zanzibar」である。
音楽的特徴: 往年のジャズ・ジャイアントである名トランペッター、フレディ・ハバート(Freddie Hubbard)がゲスト参加している。オリヴァー・ネルソンの名盤『Blues and the Abstract Truth』などで見せた、一瞬で空間の空気感を変えてしまうハバートの劇的なソロプレイが、このポップスの枠組みの中でも見事に再現されている。プログレッシブな楽曲展開と濃厚なジャズ・フィーリングが融合した、アルバム中最もスリリングな一曲である。


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【Anthologies #1】心に澱が積もる夜には|大貫妙子『ライブラリー』

 還暦を過ぎ、いつの間にか貪欲に新しい音楽を探すことはなくなった。 それでも、日々を生きていれば音楽に頼りたくなることはあるものだ。そんなとき聴きたくなるのは、アーティストたちの人生が垣間見える<アンソロジー>で、いくつか愛聴盤がある。 誰かの心無い言葉や、諍いに心に澱が募るよう...