2015年8月24日月曜日

Mr.Children 2015「未完ツアー」を札幌ドームで観てきたよ【ちょいネタバレ】

Mr.Children 2015未完ツアーを札幌ドームで観てきた。
相変わらず最高のパフォーマンスだった。
新作「REFLECTION」からの楽曲を中心に据えながらも、重要な言葉をもった曲を随所に配置して、まるで物語を構成するようにステージが進行していく。

いつもそうだが、映像がそれを完璧にサポートしている。
演奏の様子を追うだけでなく、楽曲の持つメッセージを写真やアニメーション、そして言葉そのもので補っていく。
今回はエフェクティブな仕掛けも用意されており思わず見入ってしまった。
これからコンサートに参加される方はお楽しみに。

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はじめてMr.Childrenのライブを観たのは、95年のレグレス・プログレス・ツアーで、東京ドームで観た。


まだ電話がつながるかどうかがチケット確保の決定的な分水嶺だった時代。幸運にも電話がつながり、チケットを取ることができた。
アルバム「深海」全曲を曲順通り演奏し、その前後をヒットシングルで埋めるという意欲的なコンサート構成で、本当に素晴らしいステージだった。

その後、どうやってもチケットは取れなくなり、2001年のポップ・ザウルス・ツアーの時、福岡の同僚がチケットを取ってくれて福岡で観ることができた。
それまで、完成度の高いアレンジをステージでも再現するタイプのバンドだったが、この時は柔軟なアレンジで楽曲の新しい側面を見せてくれる成熟が感じられた。

彼らのライブは、本当に完成度の高いエンターテインメント性を備えながら、しかしロックバンドとしてのスポンテニアスな躍動感を失わない演奏力が保たれていて、いつも心打たれるものだから、チケットが取れない時も映像商品を買って彼らのステージを堪能していた。


しかしアルバム「HOME」以降の彼らの音楽には、僕には強い閉塞感とその中で弛緩していく感覚のようなものが感じられた。
ディスカバリー・アルバムからQアルバムにかけて、新しいギターサウンドの構築を土台にして、デジロックというカテゴリーの創造を目論んでいるような、そんな気概が感じられたが、シフクノオトでそれを完成させて以降、少しづつだがその「緩み」が彼らの音楽を侵食していたように感じられた。

それが、ある日ネットで流れてきた新曲「足音」のPVを観た時、なにかそういう緩みが払拭されて、本来彼らが持っていた「バンド」の音が聴こえてきたように思った。
現在の彼らの音を聴いてみたいと思った。


しかしそう思って簡単にチケットが取れるほど甘くはない。
最初のリフレクションツアーのチケット争奪戦に5秒で敗れた僕は、またDVD買うかと諦めていたが、東京の友人が抽選に当たったから一緒に行こうと言ってくれて今回の「未完ツアー」参戦となった。

ここ2年位はツアービデオも買っていなかったので、昔のDVDを見なおして懐かしいなあ、イノセント・ワールドみんなで歌うんだよなあ、とか思い出していた。

で、ここからちょっとだけ【ネタバレ】だが、終わりなき旅がシンガロングだった。
会場全体に響く大合唱。
ゾクッとした。
札幌も捨てたもんじゃない。

こりゃイノセントもすごいぞ、と思っていたら豈図らんや、桜井くんが一番の頭から歌い出すではないか。
おお、今回は歌ってくれるんだな、と油断していたら、最後のリフレインで、
「お待たせ、札幌!」とキタ!
でも油断してるから憶えてたはずの歌詞が出てこない。
まいったなあ。せっかく準備してきたのに。
しかし、やはりこの曲の最後の畳み掛けていくところの創意に富んだメロディの変形はやはり見事で、この曲の紹介で桜井くんが「バンドの歴史をこめて」と言った意味がよくわかる。
名曲は他にもたくさんあるが、やはり音楽的に見た時の代表曲はこのイノセント・ワールドということになるだろう。

2015年8月18日火曜日

フューチャーメンのタイムトラベル~キャプテン・フューチャー第八巻「時のロストワールド」

いよいよ第八巻「時のロストワールド」である。
なにがいよいよかと言うと、タイムトラベルものがついにキャプテン・フューチャー・シリーズに登場なのである。

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前巻で、最大の敵ウル・クォルンを斃してしまい、太陽系に完全な平和をもたらしてしまったキャプテン・フューチャー。こともあろうにその平和に退屈している。
そこに、遙か一億年の過去から救助を求める声が!
そして喜色満面にフューチャーメンは過去への冒険に旅立つというわけです。

世にタイムトラベルSFはその黎明期から数多く発表されています。

最も代表的なものはもちろん、ウェルズの「タイムマシン」でしょう。
主人公の科学者「タイムトラヴェラー」は、
一次元は点、二次元は線、三次元は空間。
しかし物体が存在し続けている限り、精確な事物の特定には「時間」を変数として考えることが必要になる。つまり時間は4つ目の次元であり、だから我々はその中を移動することができると、強弁した上に、普通では移動できない次元の中を移動可能にする技術的背景に関しては特に説明しないまま、実際に移動するためのマシンを作ってしまいました。

その他のSF作品も大同小異ですが、さすがハミルトンはひと味違います。
時間の流れは原子の中の電子の軌道速度が作っているから、これを速めれば未来に行けるし、逆回転すれば過去に行けるという科学的背景を「創造」してしまいました。
無茶苦茶ですが、SF作品としては不思議な説得力があります。堅固な虚構の科学です。

ある時期までのタイムトラベルSFは、わりと自由にオリジナリティのある時間旅行の方法を考えてきたのですが、アインシュタインが光速で飛ぶと時間が遅くなるなんてことを言い出したもので、多くのSFが相対性理論をベースによりリアリティのあるSF作品を作るようになっていきますが、そんなある日、本当に自分はタイムトラヴェラーである、と宣言する男まで現れました。
ご存知ジョン・タイター(詳しくはリンク先のwikiを)です。

このジョン・タイター騒動を素材として取り込んだのがゲーム作品シュタインズ・ゲートで、アニメ化もされたこの作品が最も手っ取り早く、今人類が実際に取り組んでいる、実現可能性のゼロでないタイムトラベルの全体像にアクセスできる経路だと思います。

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またタイムトラベルはラブロマンスと相性がいいというのが定説ですが、本作ではオットーまでが一億年前の地球娘と恋に落ちちゃうんですから、間違いないです。
カーティスについても、物語進行の都合上ジョオン・ランドールは今回お休みですが、その代わり依頼主のお嬢さんといい感じになってました。
一億年前の太陽系に恋に落ちる対象の人類がいる、というところにもずいぶん前の巻から科学的伏線を施してあってここがまた物語の盛り上がりどころになってます。


本当に盛り上がりどころ満載の本作のテーマは、滅亡に瀕した科学の星「カタイン」が、生き残るために火星を滅ぼして移住するか、コールドスリープで遠い別の惑星を目指すかという政治闘争になってます。
近年では「翠星のガルガンティア」で虚淵玄が採用した基本構造ですね。いつか人類もこのようなことを考える日が来るのでしょうか。


2015年8月17日月曜日

2015年のDisney Girls(1957)

今朝、ラジオから聴き覚えのあるメロディが。
でもどうしても誰の歌か思い出せなかった。
女性ボーカルで歌われているが、記憶の中の歌声は男性のものだった。

歌詞の中に、断片的に聞き取れる部分がある。
テネシー・ワルツ、ファンタシー・ワールド、ディズニー・ガールズ・・

あ、ディズニー・ガールズ。きっとこれがタイトルだと思い当たる。
歌が終わり、DJのタック・ハーシーが「アン・サリーのディズニー・ガールズ」でしたと教えてくれた。

それでもまだ誰の歌か思い出せない。
印象的なコードチェンジ。メロディにも大きな起伏があって、これ歌えたら楽しいだろうなと思ったなんてところまで思い出すのに、肝心のアーティスト名が出てこない。

さっさと降参してGoogle検索すると、すぐにビーチ・ボーイズのサーフズ・アップ収録の曲とわかった。

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そこまでわかっていろんなことを思い出す。
村上春樹さんの「村上ソングス」でこの曲を知ったこと。

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それで、ビーチ・ボーイズの中期作品がいっせいにリマスターされたとき、まとめて買っておいたのにちっとも聴いていなかったサーフズ・アップを引っ張りだして聴いてみて、こんないい曲がはいっていたのか、とびっくりしたこと。

精神的にまいっていたブライアン・ウィルソンのかわりに加入したブルース・ジョンストンが作った曲ですが本当にいい曲だと思います。
改めて調べてみるといろんな人がカバーしているようですが、ラジオで聴いたアン・サリーのカバーは本当に良かったです。

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リアリティーなんてどうでもいいさ / そんなのつまらないじゃないか / おとぎ話とディーズニー・ガール / 僕はそんな世界に帰っていこう
この曲が書かれた1968年は、キング牧師が暗殺され、公民権運動が大きなうねりになり、またヴェトナム戦争が泥沼化していく「テト攻勢」でアメリカ国内の反戦運動に火がついた年。

僕は捧げるべき愛情を見つけ / 生きていくべき場所をみつけた / 僕はもうどこにもいかないだろう 
このような当たり前の日常を、お伽話と対置しなくてはならない現実とはなんだろうか。
心のなかにある夢の様な平穏を、 どうして僕らの長い歴史が作り出してきた知恵や技術が実現してくれないのだろうか。
1968年に書かれたこの曲にはDisney Girls(1957)と古き良き時代の年号が付記されている。
2015年に生きる僕らは、この時ブルース・ジョンストンが感じた矛盾を解決するどころか、より深刻なものにしているように思われてならない。

2015年8月15日土曜日

歴史ミステリの新しい傑作~ポール・アダム「ヴァイオリン職人の探求と推理」

1999年のクリスマスはクレモナで過ごした。


この「ヴァイオリン職人の探求と推理」には、その時の記憶を呼び覚ます精緻な描写が溢れている。
見事な筆力だ。

バイオリンの裏面史も実にイキイキと書かれていて引き込まれる。
ただ殺人事件についてのプロットには不十分なところがあると思う。事件自体の複雑さや意外さに不足はないが、探偵の作法には習 熟していないようだ。

素人探偵だから、ということを言っているのではない。
犯人を思いつきで追い詰めることは、どうせ物語なんだからなんだって作者の思い通りになるもんねと、作品から読者を閉めだしてしまうことになる。
読者との共同作業でなくてはならない。
そのための伏線なのだ。

それでもこの本の読後感の幸せは一級品のそれだ。
舞台が大好きなクレモナだったから、ということだけではないと思う。


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ミュージック・ライフ誌選定ロックベスト100の看板に偽りなしの名盤〜ボズ・スキャッグス「マイ・タイム」

中古レコード店でボズ・スキャッグスのサード「マイ・タイム」を買ってきた。
帯には、ミュージック・ライフ誌が選定したロックベスト100の一枚と書いてあった。
A1に収録されたダイナ・フローはベスト盤にも収録されている有名曲だが、あとは落ち着いたR&B系の曲が多い。

カバーでは、アル・グリーンの大ヒットアルバム「LET'S STAY TOGETHER」収録のOLD TIME LOVINが。
原曲と聴き比べると、ボズの声で歌われるとなんでも洗練されてしまうというマジックを体感できるが、この頃はまだサウンドがAOR的ではなく、そこがまたいいと思う。


さらにB面には一曲目にC.Toussaint、二曲目にA.Toussaintのクレジットが。

クレジットはこのレーベル面にしか書いてない。こういう時はライナーで補ってほしいよね

二曲目のFREEDOM FOR THE STALLIONは、エルヴィス・コステロとトゥーサンのデュエットアルバム「THE RIVER IN REVERSE」 に収録されていたので知っていたが、

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もとはリー・ドーシーというニュー・オーリンズのシンガーに提供された曲だそうです。


 

これはまたずいぶん違いますな。
Youtube検索してたら、スリー・ドッグ・ナイトがカバーしてるのも見つけた。
これもなかなか。

 

アラン・トゥーサンはいい曲書くなあ。

で、一曲目にあったC.Toussaintのクレジットですが、英語版のwikipedia見てたら、お父さんのクラレンスとお母さんのナンシーの名前を時々自分の作品にクレジットしてたらしいです。(英語力が拙く、自信はないのですが)
wikiにも、このHello My Loverという曲は1972年にクラレンスにクレジットしたと書いてありました。

自作曲も全体にこういうトーンですが、ボズらしいアツさを湛えた曲もあり、全体に渋カッコいい感じ。
長く愛聴できるアルバムと見た。
ミュージック・ライフ誌のロックベスト100の看板に偽りはなかったようです。 

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2015年7月12日日曜日

ダイアナ・クラール「Wallflower」をどう聴くか

「許されざる者」以降のクリント・イーストウッドの映画はどれも素晴らしいと思う。
あまり話題にならないが、「トゥルー・クライム」という映画がわりと好きだ。

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昔仕事で大変お世話になった東京工科大学が協力したと聞いて観始めた「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの第二作を家族で観に行った時、エンドロールがはじまって、なかなかいい映画だったな、と思っていたら後ろに流れる歌(バンプ・オブ・チキンの「花の名」)が素晴らしすぎて、自分の中でのこの映画の評価が二段ほど上がってしまったことがあるが、「トゥルー・クライム」もそんな映画のひとつだった。

「トゥルー・クライム」のエンディングに配された歌は、ダイアナ・クラールとデヴィッド・フォスターによる「Why Should I Care ?」
デヴィッド・フォスター、ジャズもイケるのかと驚いた。

そのダイアナ・クラールとデヴィッド・フォスターが、今度はフォスターのホームグラウンドであるポップスのアルバムを作ったと聞いてかなり期待して聴いた。

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  タイトルは「Wallflower」
ボブ・ディランの曲から採られている。
これはディランが、パティ・スミスをイメージして書いたと言われている歌で、オリジナルはダグ・サームのレコーディングで、後に自分でも録音している。
ディランの録音は「Bootleg Series vol.2」に収録されている。

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Wallflower=壁の花とは、パーティなどで男の子からダンスの誘いがかからず壁際にいる女の子のことだ。
ダイアナ・クラールは今となっては美人ジャズシンガーの代表格だが、キャリア初期のアルバムに掲載された写真を見ると、もしかしたら少女時代、壁の花だった経験もあるのかもと思ったりした。
どうでもいいことだが。


さて肝心の音楽のほうだが、ポップスカバーのアルバムを好む性質の音楽ファンにこのアルバムでのダイアナ・クラールの歌唱は、もしかしたら地味に過ぎるかもしれない。
耳を刺す高音も、圧倒的なロングトーンも、思わず声が出るようなカッコいいメロディもない。

しかし例えば、ギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」が好きでカラオケで歌ってはみたものの、思いの外英語の譜割りが難しくて挫折したことがあるような人には、このアルバムでの「アローン・アゲイン」をぜひ聴いてみて欲しいのだ。
ああ、こうなっていたのかと思うだろう。

今回のアルバムでは彼女の歌から「虚飾」が剥ぎ取られている。
アローン・アゲインからはギルバート・オサリバンらしさが、デスペラードからはドン・ヘンリーらしさが剥ぎ取られ、わかりやすい「聴きどころ」を作らないように細心の注意を払っているように感じる。
ネイキッドな歌の姿にアクセスできる。

そうしてはじめて、英語が母国語でない僕らは、それぞれの曲のオリジナルの響きの影響下から離れて、例えばなぜデスペラードでは、ダイヤのクイーンではなくハートのクイーンに賭けるべきだと言っているのか、アローン・アゲイン=ひとりに戻る、とはいったい何のことを言っているのかといった、楽曲の本来的なテーマに立ち戻ることができるのかもしれない。
別にそうしなくてはいけない、というわけではないが。

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2015年6月28日日曜日

映画「ハンナ・アーレント」〜我々の日常に棲む悪の凡庸

映画「ハンナ・アーレント」をやっと観た。

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観終わって胸を刺すのは、現代社会に生きる我々は、程度の差はあっても皆が凡庸なアイヒマンなのではないかという疑問だ。

会社に所属して仕事をしたことのある人間ならば誰でも、「それが仕事だから」というだけで、特に良心に問いかけたりせずに上司からの命令に従って日々を送った経験があるはずだ。

殺人犯が書かれた本は、それを禁じる法律が無いという理由で出版され、ベストセラーになるし、 キッチンでは、表示された消費期限が来ていなければ、食べられるものと判断するだろう。

科学は進歩し、社会は高度化したが、かえって我々の思考は停止している時間の方が長くなったのではないか。
世の中にはとうてい見きれない程のチャンネル数を備えたテレビシステムがあり、インターネットには日々膨大なコンテンツが流通している。
ネットに集積した口コミを眺めていれは、明日何を食べようか考える必要はない。自分に相応しくない店に足を踏み入れてお店に冷たくあしらわれたら、ネガティブな書き込みをして復讐だってできる。
何か答えが知りたければGoogle先生が、Wikipedia先生が、そして池上彰先生までもが、ハイデガー先生のかわりに教えてくれる。考える必要はない。信じればいい。

ハンナ・アーレントが、アイヒマン裁判を通して警告した現代の新しい悪である「凡庸さ」は、それが人間の深い部分に根ざした心性の悪でないゆえに、簡単に蝕み、簡単に拡散していく。
このことは広く理解されないまま、事実現代の病理として今我々の日常の中に静かに存在しているのではないか。
だとしたら今度人類が起こす悲劇は、アイヒマンを絞首刑にして終わるようなものではないのかもしれない。

映画のラスト8分のスピーチにあった「考える事で人間は強くなる」という言葉を信じたい。John LennonがImagineで歌ったのもきっとこのことだったんだと今は思う。

2015年6月5日金曜日

ジェシの音楽は雨のように優しい

北海道には梅雨がないというが、やはりこの時期には雨が多い。
長い間のマンション住まいから、一軒家に住まってみて気づくのは、今までは雨音が聴こえないところで暮らしていたんだな、ということ。
雨の朝、屋根を叩く雨音を聴きながらレコードを選ぶと自然にこれになることが多い。



ジェシ・ウィンチェスターの「雨のように優しく」(現行盤はタイトルが原題になっています)

ア・タッチ・オン・ザ・レイニー・サイド
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ジェシは、徴兵を拒否しアメリカからカナダへ逃れた人である。
きっと優しさゆえの強さを持った男なんだろう。

このアルバムは、カーター大統領の特赦によって10年ぶりにアメリカに帰れるようになってナッシュビル録音によって制作されたものだそうだ。
そのせいかロビー・ロバートソンプロデュースの有名盤「ジェシ・ウィンチェスター」に横たわっていた悲痛さは影を潜め、柔らかな優しさと落ち着きに包まれている。

ジェシ・ウィンチェスター
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ジェシの近年のアルバムもこの柔らかな優しさが基調になっているように感じる。
たとえばこれ。

Love Filling Station
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2009年のこのアルバム収録の曲「Sham-A-Ling-Dond-Ding」の動画だが、この歌声にホストの役割も忘れ釘付けになっているコステロの表情がジェシの重ねてきた音楽との日々を物語っているように感じる。


残念ながら2014年4月に他界してしまったが、この柔らかな歌声は永遠にこの世界に響き続けると思う。

2015年6月4日木曜日

音楽は時間の芸術なのだから

レコードで持っている音楽を一生懸命CDで買い直していた時期があった。
就職で東京に出た1989年くらいが、アナログでは新譜が出なくなり始めた時期で、引っ越した先でオーディオ機器を新調したとき、レコードプレーヤーは買わなかったから。



自分の家を建てた時、実家に預けっぱなしだったレコードを回収したから、アナログレコードの再生環境も整えた。
結果的に部屋には、同じ音源のレコードとCDが揃ってしまった。

で、両方ある盤はアナログをかけることが圧倒的に多い。
音の鮮度が高く感じられるからだが、有名盤は近年上手にリマスターされているものもあって、そういうリマスターCDを買い直したものなんかはCDで聴いている。


会社員だった頃はだいたい営業で一日中外にいるから、買ったCDはiPodに入れてイヤホンで聴いていた。外出しなくなった今iPodは用済みになってしまったが、PCに取り込んだデータは残っている。時々、カラオケの練習にAmazonでMP3を買うこともある。
常時起動しているPCで手元で音源を扱うのにデジタルファイルは便利だ。
ちまたではハイレゾハイレゾと喧しいが、そのような高音質音源ならPCのスピーカーやヘッドフォンで聴いてもしかたがない。しかしメインシステムに組み込むためにはDACか、ストリームプレーヤーを導入する必要がある。

レコードにCDにデジタルファイル。
音楽を聴くために三種類の再生環境を用意するというのは、いささかシンプルさに欠け、自分のスタイルでないと思うのでハイレゾに踏み込むのは自粛している。

とはいえ今どきは、試聴会などにでかければデジタルファイルの再生音に触れる機会も多い。昨年はマランツの新しいネットワークプレーヤーの音を聴いたが正直感心しなかった。
先駆者であるLinnのDSは素晴らしい音を出していた。
20万円のマランツと140万円のLinnを較べても仕方がないような気もするが、これはまだデジタルファイルでまともな音を出そうとするととんでもないカネがかかるということを意味しているのだろうか。
それともLinnというメーカーそのものに力があるということか。
そのLinnにしても、演奏途中でプレーヤーがネットワークを見失って失音してしまうアクシデントがあった。
このコンピュータ・システムやインターネットの業界は、こういう不安定さを解消しないまま性能だけ高度化させていく傾向があり、どうも信頼がおけない。
ひかり電話なんぞに通信インフラを預ける気になれず、いまだにアナログ回線を保持しているのはそういうわけだ。
業者さんとの大切な日々の連絡は今でもファックスを使っている。

例えば、CDで新譜が出なくなるような事態になってもちっともかまわない。
LPレコードもそういいながら今でも入手できている。
だいたい所有するのが目的ではない。
音楽は時間の芸術で、演奏するのと同じだけの時間が鑑賞するのにかかるのだから、自ずと聴くことのできる限界が決っているし、「聴いてみた」だけでわからないのが音楽というものだ。
自分の経験につれて音楽の聴こえ方は変わっていく。
そういう意味でもやはり音楽は時間の芸術なのだ。
今世の中に流通している音源を賞味し尽くせるほど僕の時間も残っていないだろう。
縁あって入手できた音楽たちと大切に付き合っていきたいと思う。

2015年5月19日火曜日

科学と野心の狭間で~キャプテン・フューチャー第七巻「透明惑星危機一髪!」

キャプテン・フューチャー第七巻は「透明惑星危機一髪!」
宿敵ウル・クォルンが、ヌララとともに刑務所を脱獄してきます。
今までカーティスが捕まえてきたおなじみの悪役さんたちも一緒に引き連れての脱獄劇は、今なら劇場版の企画にぴったりな総集編的シナリオになっています。

ハミルトンのスペースオペラにはよく荒唐無稽という形容詞がつきますが、カーティスの活躍の裏で、科学の魅力に取り憑かれ、どうしようもなく悲劇的な運命をたどってしまう科学者の物語も描かれているのです。

異次元の世界にあるという秘宝を求めて、次元の壁を超える宇宙船を開発し、そこで出会った悲運の星の人たちに心を寄せ、そこで暮らす老科学者。
そして、科学の力で太陽系の支配者たらんとするウル・クォルン。
どちらも科学に魅せられ、野心に駆られ、そして悲劇的な末路に誘い込まれていきます。

それまでできなかったことを可能にする科学の力は、隣人を幸せにもするが、力の非対称の魅力にはやはり抗いがたいものがある。
僕らはどのような知見を以って科学と共存していくべきなのか。
おそらく答えの出ないこの問いを、ハミルトンは大衆SFを書くことで発信しつづけていたのでしょう。

ラストで自ら死を選んだウル・クォルンですが、マンリー・ウェイド・ウェルマンが書いた最終巻「小惑星要塞を粉砕せよ!」と翻訳者野田昌宏さんの書かれた「風前の灯!冥王星ドーム都市」でも登場します。
やはりクォルンとヌララのカップルはシリーズ随一の人気悪役キャラなのですね。

ところで本作でもジョオン・ランドールのツンデレ指数はまた少し上がってきています。
野田総帥の名訳は文化遺産として残すべきとしても、近年のライトノベル作家による正調ツンデレによるジョオンも見てみたいものです。新訳か、新解釈のアニメ化などの企画はないものでしょうか。
いいと思うんだけどなあ。

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2015年4月30日木曜日

音楽の枠を超えて「表現されてしまう個」を聴き取りたいのだ~「ライブ・アット・セラードア」ニール・ヤング

ニール・ヤングの名前を知ったのは、あのエアチェック・ブームの時代、マルディロというイタリアのイラストレーターの表紙が素敵だったFMレコパルに掲載された漫画でのことだった。

クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングという長い名前のグループ名も苦もなく覚えられた少年時代の柔らかい心には、どこのグループに入ってもその強い個性で音楽的な「和」を乱すニール・ヤングというアーティストは、いったいどんな音楽を作る人なんだろう、さぞや激しい音楽なんだろうなと想像されたが、80年代への変わり目のその頃、ニール・ヤングにヒット曲は無く、釧路に一局しかないFM局から流れてきた「Tell Me Why」は、なんとも優しくて儚げな歌だった。

大学に進学して札幌で一人暮らしを始めた頃、大好きでよく読んでいた「LIVE! オデッセイ」というロック漫画で主人公のバンドが長い放浪を経て再結成をする時「あれをやろう。永遠の名曲だ」というボーカリストの一言でみなが頷いて演奏を始めた曲がニール・ヤングの「Like a Harricane」だった。
その漫画での表現は、かつて聴いた「Tell Me Why」とはまったく異なる音楽のそれで、髪を振り乱し汗を飛び散らせながら歌われていたこの「Like a Hurricane」という曲こそが、僕が昔イメージしていたニール・ヤングの音楽なのかもしれないと思うと、もう聴いてみたくて、いてもたってもいられなかったが、その頃バイトしていた貸しレコード店にはその曲の入ったレコードは置いていなかった。
インターネットすらないその時代、僕らはわりに諦めと物分かりのよい消費マナーを身につけていたようだ。それ以上手を尽くすことなくニール・ヤングについてはそのままにしておいた。

会社に入って東京に出て、渋谷のタワーレコードでニール・ヤングの二枚組のライブ盤を買った。クレイジー・ホースと演奏している「Like a Hurricane」は、やはりイメージとは違って音こそ歪んでラウドなトーンだったが、メロデイはあくまで美しく、声はやはり優しかった。

Tell Me WhyとLike a Hurricaneというまったく異なる手触りの音楽を、どうしようもなく唯一無二の存在感で演奏してしまうことが、ニール・ヤングというアーティストの本質なんだと気がついた。
そしてそれは、音楽という肉体性を伴う芸術のコアだ。
レコーデッド・メディアに封じ込めるべきものが何なのか、ニール・ヤングにはきっとわかっているのだと思う。

2006年に会社を辞めた時、毎日オーディオ店を廻っていた。
どこに行っても「で、ジャズを聴くんですか、クラシックを聴くんですか」と訊かれることに辟易していた。
最初は「いえ、音楽を」と皮肉を込めて答えていたが、そんなニュアンスはもとからまったく通じない人たちなんだとわかったので、「ニール・ヤングを」と答えると、今度はまじめに取り合ってくれなくなった。

ジャンルとか年代とか、そういうものを超えて「表現されてしまう個」のようなものを感じ取れるオーディオを、だから僕は独力で探し当てようとしていた。
そしてそういう時、もっとも優れた被写体はやはりニール・ヤングだった。

近年、発表されているニール・ヤングのライブ・アーカイブはその意味で実に興味深い。
今朝はそのアーカイブの中の一作、「ライブ・アット・セラードア」を聴く。

全編弾き語りのこのライブで歌われる、どちらかと言うとライク・ア・ハリケーン系の楽曲である「シナモン・ガール」が好きだ。
バンド・サウンドで装飾されない剥き出しの歌の裏側に、ニール・ヤングのロックサイドがより明確に浮かんでくる。



シンプルなレーベルがとてもカッコいい。レコードを現役のメディアと捉えているニール・ヤングらしいデザインだと思う。


Live at the Cellar Door
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【Anthologies #1】心に澱が積もる夜には|大貫妙子『ライブラリー』

 還暦を過ぎ、いつの間にか貪欲に新しい音楽を探すことはなくなった。 それでも、日々を生きていれば音楽に頼りたくなることはあるものだ。そんなとき聴きたくなるのは、アーティストたちの人生が垣間見える<アンソロジー>で、いくつか愛聴盤がある。 誰かの心無い言葉や、諍いに心に澱が募るよう...