2016年7月15日金曜日

グレアム・グリーン『情事の終り』

新潮文庫のスタークラシックスという新訳シリーズからグレアム・グリーンの『情事の終り』を読んでみた。

情事の終り (新潮文庫)
情事の終り (新潮文庫)
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グレアム グリーン
新潮社 (2014-04-28)
売り上げランキング: 72,651

あの名作映画「第三の男」の脚本を書いたグレアム・グリーンの代表作だけあって、「画が浮かぶ」筆致が見事すぎる。
そしてここでも、夫と愛人に続く第三の存在が鍵となっていますね。

サスペンス色の強い導入部から、物語は宗教的な色彩を帯びてくる。
宗教観のことから紐解けば、カラマーゾフの「大審問官」で語られる悪魔の誘惑とイエスの拒絶の構図がサラを巡る「情事」の顛末に重なる。

さらに言えば、時代背景を対ファシズム戦を戦う戦時下の英国に置いているところが、教会の全体主義的体質と個人の信仰の間に横たわる溝を暗示しているようにも感じる。

これはきっと、西欧文化を敷衍した近代社会が普遍的に持っている問題なんだな。

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