何気なくタイトルに使っている「序」「破」「急」だが、雅楽で楽曲を構成する三つの楽章のことで、特に深い意味はない。
つまり本稿がVol.3ということです。
さて、視聴レポートを続けよう。
早くも二つ目のデモで、「今生で最高の音」に出会ってしまったので、どうも続くデモに気持ちが入らない。
しかし、これだけは絶対に確かめておかなくては、と思っていたのがdCSが新しく出した、VivaldiというSACD/CDプレイバック・システムで、フルセットで4筐体の超ド級機だ。お値段も超ド級で、フルセットでなんと1千235万8500円也。
うん。かっこいいね。
まあ、出展側もこれはさすがにと思ったようで、最低限のトランスポートとDACの2筐体でのデモとなった。いやこれでも821万1,000円ですけども。
さて、このVivaldiのDACにはボリューム機能がついていて、プリアンプが要らない。
ジェフ・ロゥランドのパワーアンプに直結されて、ADAMというドイツ製のスピーカーを駆動していた。
昨年、エソテリックのデモでクロックを追加した時のCDの音の変わり様にびっくり仰天して、思わずおお!と声が出たくらいだったので、今回はどんな驚きが待っているのかと期待していたが、出てきたのは著しく生気にかけた、音で象られた彫塑物のような音だった。
やはりプリアンプって大事なんだな、と妙に納得させられたデモだった。
さらば1千235万8500円。どうせ縁は(というより円が)なかったけどね。
午後には面白いデモが用意されていて、昨年一番イイ!と思ったウィルソン・オーディオが昨年の中堅機Sophia3に換えて、最新機ALEXIAを持ってきてくれていたが、それをまず輸入元のデモとしてダン・ダゴスティーノで鳴らし、その後ゴールドムンドのデモでも同じスピーカーを鳴らすというものだ。
出展者を超えて、聴き比べができるとは粋な企画をしてくれるものだ。
今年はプリアンプも発表したダゴスティーノのフルセットで鳴らされたウィルソン・アレクシアは、Sophia3の美点だった躍動する音場が、さらにハイグレードになった感じ。
LINNにしてもやはり、音の生命感のようなものが僕が音に求める絶対条件なんだろうと思う。
メモもとらず音楽に酔いしれ、あっという間に35分が終わり、次のデモでアンプがゴールドムンドに換えられた。
するとどうだろう。
躍動する音場はそのままに、音そのものに「艶やかさ」のようなものが纏わりついた。
魅惑的な音だ。
クラシックは良かったと思う。
ゴールドムンド・ジャパンの山崎さんは、古いジャズをかけなかった。
慧眼だと思う。
ジャズは、歴史が黒人たちに生み出させた音楽だ。まことにやむを得ない事情から世に産み落とされた音楽は、だから決して嘘をつけない。
それ故、ジャズには化粧が似合わないのだ。
かければきっと、拭えない違和感を感じただろう。
思えば、昨年このウィルソンを聴いた時、はじめて僕の頭に「ラスト・システム」という考えが浮かんだんだったな。
そして今年、LINNというブランドがアンプ内蔵スピーカーという答えを携えて僕の前に現れた。
先輩が実演までしてアドバイスしてくださった上に、有難いことにケーブルまで貸してくださって「平行法」という決定的なスピーカーセッティングに導いてくださった。
そして気になっていたカートリッジやフォノケーブルも替えることができて、システムは今「僕の音」を奏でている。
もしかしたら、そろそろ趣味としてのオーディオとは一歩距離を置いて、純粋に音楽に向き合う季節が来たのかもしれないな。
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