昨年行ってみて楽しかったので、別にオーディオ機器を買う予定もないのだが、札幌最大のオーディオ専門店CAVIN大阪屋さんの「高級オーディオ試聴会」に行ってみた。
今年で二回目の参加のフレッシュマンとして、まずは雑感を申し上げておきたい。
ではまず。
もう無理強いの「課題曲」はおやめなさい。
多くのメーカーがデモを行うこのイベントでは、参加者が各システムの音色を比較しやすく、という配慮から決まった曲を二曲どのデモでもかけることになっているが、まるで無意味だ。
「高級」と名の付くオーディオ機器は今や最低でも100万円からのプライスタグがついている。
そういう機器を買おうと思う瞬間というのは、それを手に入れなければこの音が聴けない、それは絶対に嫌だ、と思える「天国の音」に出会う瞬間だ。
そのような出会いに、課題曲でシステムの出来を採点するような聴き方は無縁だと思う。
そのシステムが奏でる音楽が、どれほど聴いた人の心に届くのかが重要なのだ。
だから、予め比較しやすいような仕組みを施して、さて比較するぞという心構えを持たせて聴かせないほうがいいのではないか。
僕はいつも試聴会のその部屋で、ダイナミックな素晴らしい音で再生されて、スウィングしまくるジャズを、身じろぎ一つせずスピーカーを睨みつけて聴き入る人たちの背中を見て、せっかくいい音で鳴っているんだから音楽を楽しめばいいのに、と思っていたが、課題曲の存在が、そういう心持ちを作る遠因になっているのではないか、と思うのだ。
また課題曲の存在は、デモの成否そのものにも影響を与えていると思う。
鳴らす人の感性を載せてシステムは鳴る。
そのシステムを知り抜いた人が選んだ曲を信頼してシステムは歌うのだ。
人間だって、自分を試されるような目にあったらその人を信頼できるだろうか。
また今回の選曲も実に意地悪な選曲だった。
特にこの、ヒグドンという人が、ヒラリー・ハーンのために書き下ろしたという協奏曲。やたらと繊細なピアニッシモで始まって3分くらいで怒涛のフォルテッシモ。
しかも録音がアレなもんだからパーカッションのアタックがちょっと割れ気味に入ってくる。
そういう音源をわざわざ用意して、スピーカーの音が「破綻するか否か」でスピーカーを判断させるなんて、オーディオを愛する人のやることだろうか。
アンケートにも書いたが、ぜひ考えなおしていただきたいと思う。
で、デモンストレーター側も、同じようなことを感じていたのではないのだろうか。
今回は、異なるデモで同じ曲を使うケースを見た(聴いた)。
リン・ジャパンとエレクトリのMcIntoshデモで、マイルズ・デイヴィスのLive Around the Worldのアナログ盤と、CDを使っていたのだ。
二人とも「Time After Time」をかけたのだから偶然ではないだろう。
この曲は90年代に相次いで発掘されたマイルズの、LONG VACATION以降のライブ音源の中でもとびっきりの感動テイクで(帰ってから僕も買いました)、リンとマッキンのまるで方向性の違う音を同じ感動的な音源で表現することを、示し合わせて企(たくら)んだ二人のデモンストレーターに大きな拍手を送りたい。
こういうのが演出として機能するように、プログラムに自由度を持たせたほうがいい。
そして、最高に自信のあるとびっきりの音楽をお客さんに聴かせてあげてください、とだけ言っておけばいいのではないですか?
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