2021年12月26日日曜日

McIntosh MC275の故障とあっけない帰還

 ある日の朝、目を覚まして自室に入るとプリアンプ(McIntosh C2200)の電源が入ったままだった。

前日の夜、電源を切るのを忘れたのだと気がついたが、はて、ならばなぜパワーアンプの方は電源が切れているのだ?と思い、チェックするとスイッチは「ON」側に倒れている。

ははあ、ヒューズが飛んだな、と近くのホームセンターに走り、ヒューズを入れ替え、無防備にスイッチを入れたら、ボンッと嫌な音がして、4つあるKT88真空管のひとつから白煙が上がった。

替えたばかりのヒューズはまた溶けていた。

愛用のアンプから音が出なくなっても真空管アンプユーザーは慌てない。近くに信頼できる修理屋さんがいれば尚の事。

さっそくお預けして診ていただくと意外にも、うん、回路にも異常はないですね、とのこと。一本の真空管に異常があり、そのせいで回路に負担がかかってヒューズが飛ぶことがあるんだそうだ。

というわけで4本のKT88真空管を交換していただいて、バイアス調整して、飛んじゃった真空管のソケットも調整して、修理完了。しかもこの方どういうツテがあるのか、いつも相場よりずいぶん安く真空管を手配してくださる。

今回はPSVANE(プスヴァン)という中国製真空管を用意していただきました。







修理代も、え?というほど安くて本当に助かる。

マッキンはエレクトリに修理に出すと目ん玉飛び出るような見積が出てきますから・・










無事電源ON!













早速聴いてみる。

帰ってきたらまずこれを聴こうと用意していたのは、纐纈歩美がアート・ペッパーへのトリビュートとして制作した「Art」

修理に出している間に入手したものだが、修理明けに聴こうと思って開封していなかった。


サキソフォンの音が出た瞬間、これだ!と思う。

マッキンのジャズの表現はやはりこれでなくては、という太さとエネルギー感がある。代打ちで使っていたCOPLAND CTA401のEL34に較べると音像もグッと大きくなる。

もっと!という気分になってついついボリュームが上がる。

真空管の温度が上がると、演奏の温度も上がって・・・の無限ループ!

2021年12月21日火曜日

NO NUKESのBruce Springsteen

 スリーマイル島の原発事故を契機として、1979年に開催されたコンサート「NO NUKES」。その存在は知っていたし、映画化されたものを断片的には観ていた。

今回、Bruce Springsteenのステージが映像作品化されたということで購入してみた。

NO NUKES、そしてそれを先導し、今も活動を続けているMUSE(安全エネルギーのためのミュージシャン連合)の意義に関しては、爆発的なテクノロジー・イノベーションで先の見えにくく、多様なエネルギー政策の運用が必要と思われる世界の現状に鑑みて、本稿では触れない。


正方形のボックス入り。

当時のNO NUKESコンサートのチケットが復刻されて封入されている、
ブックレットはオリジナルと日本語版の2冊入り。
CD2枚、Blu-Ray1枚の3枚組。







スプリングスティーンのライブ映像なら、BORN TO RUNの30周年記念盤に収録された1975年のハマースミスオデオンLIVEをよく観ていた。











79年、THE RIVER発表直前のタイミングで行われたNO NUKES公演で完成度の高いRock'n Rollショウとして見事な構成を持つRosalita[Come Out Tonight]Detroit Medleyも、75年、BORN TO RUN発表当時のこのLIVEで披露されているものとほぼ変わらないが、それが何度目であろうとも、観ている我々を否応なくロックンロールの夢の世界に引き込んでしまう。

この2演目が、佐野元春のライブ構成に極めて強い影響を与えているのはファンならば誰でも知っていることだろうが、あまりにも「血肉」になりすぎていて、スプリングスティーンのライブを観ると、いつも平静な気分ではいられないほどだ。

また、(おそらく)元祖「孕ませ」ソングであるThe Riverを聴くと、(音楽的にはそうでもないが)甲斐バンドのあの名曲「BLUE LETTER」を思い出させ、日本のロックシーンへの強い影響を改めて実感する。


あらゆる意味で、この時期ボスが作り上げたロックンロール・ショウの素晴らしさは、ロックの歴史の最重要エポックの一つだろう。しかしそれを措いてもこのライブ、クラレンス・クレモンズを喪った今観ると、涙なしでは観られない。

ドラムセットの後ろに左右に分かれて立つボスとビッグ・マンが、アイコンタクトでステージに駆け降りていくところは、それだけでまるで一編の映画のようだ。

ショウマン・シップなんて言葉では到底片付けられない尊い友情が、この奇跡のロックンロールライブの奇跡たる所以だと思う。

2021年12月18日土曜日

ハードケースでギターを収納するために - HERCULES STANDS GS525B導入 -

 限られたスペースに複数のギター類を収納するためにはいろいろ犠牲にしなくてはならないものがある。

これまでは、望ましいと言われる「ハードケースで」の収納を犠牲にして、スタンドに裸で立てて使用してきた。

今回部屋の模様替えをするに際して、いよいよハードケースでの収納を実現しようといろいろ調べてみた。

多くの人はDIYで収納スペースを作っていた。それができれば苦労しないが、自分には難しく、なるべく製品を買って済ませたいと思っていた。

そんな時、いつも真っ先に調べるのは「サウンドハウス」というサイトで、今回は「HERCULES STANDS  GS525B」という製品のコメント欄に「ハードケースごと収納できる」とのコメントを2件も見つけて、これでいいじゃん、と発注した。

届いたので早速ハードケースを立ててみる。













ベース1本、アコギ1本、エレキ2本という布陣が綺麗に収まった。

しかーし!

収まってはいるし、一見問題なさそうに見えるが、実際は非常に不安定で、とても「収納」できているとは言えない状態。

下部がうまくホールドされず、一点で接触している状態。

ネックとボディを支える構造になっているのだから、四角い箱がうまく収まるはずがないのだ。

多少のDIYが必要ということだろう。しかし、一から収納箱を作ることに較べたら随分と楽だろうから、これから少し考えてみたいと思う。

2021年12月17日金曜日

Quadraspire Q4Dを縦長に組み直してみた

オーディオ誌などで勉強すると、部屋の長辺を使って機材をセッティングした方が良い低音が聴ける、という言説によく当たる。

なるほどそうかと、何年か前に大幅な模様替えをした。

その際、使っていたオーディオラックQuadraspire Q4Dに棚板や脚などを買い足して、二列横置きのセッティングに変更した。スピーカーの間隔を広く取るためだった。

自然、アナログ、CD共にプレーヤの位置が低くなり、掛け替えのために腰を屈めるのがしんどくなってしまった。

狙いだった低音のクオリティ向上は、残念ながら実感できなかった。小さな音量で聴くことが多いからそりゃそうだろう。

メディア架け替えの負担ばかりが気になってしまっていた。


思い切ってラックを高くしたい!という欲求が自分の中で抑えきれなくなり、禁断の改造を施してしまった。











 

 

 

 

 

 

 

 

写真の最下段のポールだが、2本のポールを直結している。最下段には真空管のパワーアンプMcIntosh MC275が収まるため、放熱を考えて上部に充分なスペースが欲しかったのだ。

結果としてラック全体の高さが充分に担保され、メディアの掛け替えが画期的に楽になった!

おそらくメーカーも推奨しないやり方だろうし、地震も心配ではある。でも腰をかがめずにメディアの掛け替えができるこの環境は、もう手放せない。

しばらく自己責任でやってみようと思う。


2021年1月2日土曜日

スター・キングの復刊

東京創元社という出版社は、わりとけっこうな頻度で、せまーい需要を捕まえる復刊をやらかしてくれる。
一般的な出版社にくらべて値付けが高めでも読者の忠誠心が高いのは、それが理由だろう。
私も早川書房とこの会社には誠を誓っている。
昨年末はエドモンド・ハミルトンの「スター・キング」を復刊しよった。




もちろん旧版も持っているし、翻訳者も同じ。すこーし訳文がリファインされている程度だが、鈴木康士氏の新イラストが素晴らしいし、堺三保氏の新しい解説がついているとあれば迷うべくもない。
そして今日朝から夕方までかけて一気に読んだ。

何度目か忘れたけど、やっぱり面白い。

バローズが1912年に発表した「火星のプリンセス」へのオマージュも感じられる1947年発刊の本作は、いまではライトノベルの世界に溢れかえる異世界ものの伝統を伝える一冊といえる。

そしてまた本作は、マーク・トウェインの「王子と乞食」を嚆矢とする「瓜二つ」テーマの古典、アンソニー・ホープの「ゼンダ城の虜」を下敷きにしているのだ。

荒唐無稽なスペースオペラの作者というイメージがハミルトンにはあるかもしれないが、彼は15歳で大学に飛び級で進学した天才である。
アメリカ文学の歴史に深い理解を持ち、大衆文学を愛した才人だったのだと僕は思う。

「ゼンダ城」には「ヘンツォ伯爵」という続編があり、本作もそれに倣って「スター・キングへの帰還」との二部構成となっている。
どうも私には二部構成にするために無理に書いたように思えてならないのは、リアンナとゴードンのメロメロのハッピーエンドを期待していたせいなんだろう。