2015年12月2日水曜日

P.F.スローンを歌ってよ

11月30日の北海道新聞夕刊に載った天辰保文さんのコラムで、11月15日にP.F.スローンが亡くなったと知った。
70歳だったと聞いて意外に若い人だったんだと驚いた。
伝説の音楽家だと思っていたから。

普通に暮らしていてニュースが流れてくるほどの知名度じゃない。
ほとんど無名と言ってもいい音楽家だが、この曲はみんな知ってるんじゃないか。
バリー・マクガイアの「明日なき世界」
この曲の作者がP.F.スローンだ。


多くの人がカバーしている名曲だが、清志郎先生と佐野元春のライブを貼っておいた。



高石ともやの訳詞だが、高石ともや版のクレジットには作曲バリー・マクガイアとある。
実は、これには訳がある。

ソングライターとしてヒット曲を量産しながらも、自身で歌いたいという夢を追いかけることにしたスローンを、ドル箱を失いたくない出版社は強く引き止める。
仕方なく、これまでの曲の著作権をすべて会社に譲渡するという契約で、押して歌手デビューを果たした、という経緯だ。

僕がP.F.スローンを知ったのは、友だちに勧められて聴いたRumerという女性シンガーが男性曲ばかりをカバーしたアルバムで、その一曲目がジミー・ウェッブの歌った「P.F.スローン」という曲だった。


ジミー・ウェッブは、著作権を放棄してまで歌手デビューしながら、直後大病をして大きなヒットを残せなかった彼への想いを「それはP.F.スローンの歌だから、誰も歌っちゃいけないよ」という歌詞に認(したた)めたのだ。
また、この歌には「誰もP.F.スローンのことを知らない」とも歌われている。
多くのヒット曲を書いたのに、著作権を失ったことを言っているのだろう。

でも多くの人がP.F.スローンの歌を歌って、その記憶が僕らのなかに残っている。
それはいいことだと思う。
清志郎の歌うこの曲を僕は、こんなきな臭い時代の匂いの中でいつも忘れずにいようと思うのだ。