2019年1月4日金曜日

こんなに捻ったのに正統派な大傑作:『カササギ殺人事件』の構成の妙

ミステリー評論家の友人が新聞のコラムで勧めていたアンソニー・ホロヴィッツの『カササギ殺人事件』を読了した。

まあ帯に書いてある通りの内容なんだが、これがよく出来てる。
クリスティのオマージュに関して言えば、作中作において平凡な村人たちそれぞれが抱える「事情」が次々と明かされ、それがまた別段突飛な事情でもないのに充分殺意の根元になり得るもので、それゆえ事件の様相がどんどん複雑なものになっていく過程にその特質が現れている。だからこそこの作中作は情報革命以前の田舎社会を舞台とする必要があった。

さて凡庸な作家ならば、本編であるイギリス出版業界ミステリの部分では、現代を舞台にしているがゆえの情報入手のスピード感を対比的に使うだろうと思うが、本作では編集者という素人探偵を謎解き役に配して、意図的にそのスピードを上げないようにしている。
この構成の妙が現代に起きている事件を軽くせず、ミステリ作品としての重厚さを担保しているのだろう。

構成といえばラストに配置された・・
いやこれは実際に読んでいただいた方がいいだろう。
どのみちミステリファンならばこの作品を避けて通ることはできないはずだから。

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2019年1月2日水曜日

エリック・クラプトン『12小節の人生』を観るべき本当の理由

エリック・クラプトンの映画「12小節の人生」を観てきた。


上映は、かつて若い頃よく通ったスガイビル。現在はライザップの所有となりディノスと、その名を変えたが、2年後にここも取り壊され、総合商業施設になるんだそうだ。
ちょっとセンチな気持ちで映画館に足を運んだ。


クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」と較べてしまえば、クラプトンファンの贔屓の引き倒しで言ったって、これは間違っても「面白い映画」とは言えないだろう。
しかし、それでいいのだ。

「ボヘミアン・ラプソディー」が映画という表現手法を通じて、音楽の素晴らしさを伝えた映画だとするなら、「12小節の人生」は、あくまでもドキュメンタリーの視点で、エリック・クラプトンという人間の「わからなさ」を描いたものだからだ。

育ての母である祖母からみたクラプトンの幼少期と、自身の見解の食い違い。
周囲の語るシャイという人物像と、実際の女性遍歴とのギャップ。
自伝に書かれたバンド漂流の経緯と関係者の語るエピソードの相違。
もう普通にわからないのである。


わからなさ、という視点で驚いたのはエリックの絵の上手さで、学校もアートスクールに進学している。
朝から晩までギターばかり弾いてたってみんな言ってるのに、絵も描いてたっていうね。
現在グラビアを追加して再販売されている自伝は、この学生時代のイラストレーションも追加収録されているので、ぜひ見てみて欲しい。

エリック・クラプトン自叙伝
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...と、もっともらしいことを書いてきたけど、本当に言いたかったのはこんな事じゃないんだ。
中学の頃からクラプトンの音楽が好きでずっと追いかけてきて、もちろんレイラも大好きで、だからそれがジョージ・ハリソンの妻パティ・ボイドへの横恋慕からできた歌だと知った。
そのジョージとパティの出会いが、ビートルズ映画への出演であることを知って、ほんの一瞬しか映っていない彼女を目を皿のようにして探したりしてるうちにすっかりパティ・ボイドに取り憑かれてしまった。



モデル出身のパティの写真は比較的簡単に手に入る(それでもポスターのようなものはほとんど入手できない)が、映像となると話は変わってくる。
それがこの映画では、クラプトンを狂わせた若き日の彼女の美貌が、最高の編集で拝めるのですよ!

それだけでこの映画は値千金。
需要があるかは知らんが、ファンは映画館に急ごう。