2016年4月25日月曜日

念入りなニオイ消し ~ スペンサー・クイン『名犬チェットと探偵バーニー・シリーズ』

なにやら空前の猫ブームらしく、犬派の僕は意味もなく対抗してみたくなる。
それで、というわけでもないのだがスペンサー・クインの「名犬チェットと探偵バーニー」というシリーズが面白いのでご紹介してみる。

現在三作品が翻訳されていて、うち二作が文庫化されている。
ぜひ文庫版で読んでいただきたい。
表紙イラストが秀逸でずっと眺めていたくなる本だ。

助手席のチェット (名犬チェットと探偵バーニー1) (創元推理文庫)
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誘拐された犬 (名犬チェットと探偵バーニー2) (創元推理文庫)
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とにかくチェットがカワイイ。
ローレンス・ブロックの泥棒バーニーシリーズによく似た筆致で、おそらく名前の一致は偶然ではないだろう。

非トラディショナルなミステリの書き手が筆名を変えて書いているわけだが、その名がスペンサーというところから見ても、サスペンスものによくある偶発的解決を茶化して書くことが主題のひとつなんだと思う。

その「悪意」の匂い消しに犬という話者を使っているのだろう。
その企図は完全に成功していると思う。


また、ハードボイルドというジャンルは話者(=推理者)が心の声を語らない、というところに本質があると思っているのだが、このシリーズはそれを超えて話者が犬だから念入りだ。
ハードボイルド特有の最後物語のスピードが上がっていくのに、完全な情報が手に入らないまま読者が「焦れていく」感じがマキシマムになる。

そして、誰もが複雑な存在だと思いたがっている人間の本質が、実はとても身も蓋もないところにあるという、ちょっと直視しにくい現実を、心の声を語らないからこそ暴いてしまうハードボイルドという文学ジャンルにあって、犬が話者であることで救われている部分は大きい。
なかなかいいね。

2016年4月22日金曜日

プリンスの訃報と「海辺のカフカ」

プリンスが死んだ。
ボウイが亡くなったばかりだというのに、いったいどうなってるんだ。

とはいえ、僕は近年のプリンスの熱心なリスナーとは言えない。
大学生の頃、貸しレコード屋でバイトをしていた。その二年間の間にパレード、サイン・オブ・タイムス、そしてラブセクシーが相次いでリリースされたが、パレードとサイン・オブ・タイムスが本当に素晴らしかったから、遡ってアラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイを聴いて叩きのめされた。
バイトをしていた店でレンタル落ちになったアラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイを買って何度も聴いた。


ラブセクシーにはちょっとピンとこなかったが露悪的なジャケットデザインのせいだったと思う。
そしてこの時期の三枚が僕にとってのプリンスのすべてで、時々MTVでかかるシングル曲を聴くくらいだった。


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パレード
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しかしその後、僕はプリンスとの決定的な再会を果たす。
それは村上春樹の「海辺のカフカ」で、だった。


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主人公の少年がMDで繰り返し聴くプリンスの「リトル・レッド・コーヴェット(小説内の表記どおり)」
小さな赤いコルベットは、重要な登場人物のスポーツカーと対置されたものだろう。
そしてそのスポーツカーの中ではシューベルトのピアノソナタが流れていた。
シューベルトという作曲家の主要なモチーフは「父との対立」だった。
すべての要素を慎重にメタフォリカルに配置したこの小説で、これはきっと重要な意味を持つ対置なんだ、と僕は感じた。
さらに物語の後半、少年はプリンスの「Sexy MF」を聴きながら関係を持った女性のことを考える。
MFはMother-Fuckerのことで、ロックミュージックの歌詞でよく聴く侮蔑語だが、ここではおそらく文字通りの近親相姦者の意味を暗示させている。

音楽を使って立体的な文学表現をするのが村上春樹の作法ではあるが、その中でも際立って印象的な楽曲の使い方だと思う。
この少年にこころ寄せて物語を読んだ僕の中では、「海辺のカフカ」とプリンスの音楽が分かちがたく結びついてしまった。

プリンスの訃報に接して、偉大な音楽的業績よりも先に「海辺のカフカ」のことを思い出してしまったが、これさえも、プリンスの音楽の偉大さの一部なのだろう。
Thank You , Prince.
R.I.P

2016年3月14日月曜日

カーリン・クローグ&デクスター・ゴードン「ブルース・アンド・バラード」

今日の朝のレコードは、カーリン・クローグ&デクスター・ゴードンの「ブルース・アンド・バラード」
どちらかと言うと「夜のレコード」という趣きのアルバム。


テイチクのOVERSEAS RECORDSというレーベルから1971年に発売された盤だそうです。同年のスイングジャーナル誌「ジャズディスク大賞」のジャズ・ボーカル賞を受賞しているそうです。


なんとB1でデクスター・ゴードンご本人も歌っていらっしゃいます。
続くB2〜3で、ライオネル・ハンプトン楽団で歌っていたジミー・スコットの曲を採り上げています。
御存知の通り、デクスター・ゴードンはライオネル・ハンプトン楽団でそのキャリアをスタートした人ですから、自分のルーツへのオマージュという意味合いがあるのでしょう。


2016年3月13日日曜日

クリント・イーストウッド監督作品「ヒアアフター」を観る

クリント・イーストウッド監督の「ヒアアフター」を観た。
「許されざる者」以降のイーストウッド映画にはいくつか、スッキリとわかりやく解釈することができない映画がある。これはその最右翼と言えるだろう。

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来世(=ヒアアフター)の存在を僕自身は信じていない。
が、だからといってこの映画の描こうとしている心象風景を否定する理由にはならない。
「死」そのものは厳然と存在する。

霊能力者のジョージ(マット・デイモン)は、触れた人間に関わりの深い死者とコミュニケートすることができる。
そしてそれゆえに、生者の世界とディス・コネクトしてしまう。

しかし、人は一人では生きていけないのだから、ディス・コネクトだってコネクトの結果でしかない。
ジョージのような特殊な能力が無くても、人は常にコミュニティとの断絶の可能性をリスクとして持っている。

双子の兄を喪った少年マーカスは、そのようなリスクが実際にその身に降りかかった者として描かれている。社会との接点をその兄ジェイソンに全面的に依存してきたため、彼の死によって社会から孤立してしまうのだ。
マーカスは、ジョージの能力によって、亡くなったジェイソンの最後の指示を聞くことができ、それによって社会に戻っていくことが出来た。
死者自身の言葉でしか、その死を受け入れられないこともあるということだろう。

ではジョージのディス・コネクトは誰が救うのか。
料理教室で知り合った女性に心惹かれるが、やはり能力によって知ってはならない過去を暴いてしまい、関係は破局する。
ラストで、ジョージを救うのが「臨死体験」を持つジャーナリストの女性、マリーである。
マリー自身も臨死体験に縛られ、それまでのキャリアから放逐されてしまっているから、ジョージとの出会いは彼女にとっても救いであったろう。

死にとらわれた者を、死にとらわれた者が救う。
しかしジョージのような能力を皆が持たないこの世界では、このような救いは容易に実現しない。
で、あれば誰かの死を受け入れるために僕らができることは、生者の「思い残し」を死者のせいにしない、ということしかないだろう。

2016年3月12日土曜日

日本という国の転換点を描いた「許されざる者」という傑作


クリント・イーストウッドの「許されざる者」を観て、映画を見る目が変わった。それ以降、昔観た映画を見なおす度に、えっこんな映画だっけ、と思うようになった。
そんな「許されざる者」が日本映画にリメイクされてしかも撮影場所が北海道と聞いて、DVD出たら観ようと思っていたのだが、ロードショー時あまりに評判が悪かったので、観ないままになっていた。
昨日、たまたま目についたので借りてみたのだが、ナニコレ面白いじゃん。

船戸与一の「満州国演義」も、戦争に向かっていく日本を描きながら、結局「明治維新とは何だったのか」というポイントに収束していく。乙川優三郎の「脊梁山脈」もそうだった。
日本版「許されざる者」リメイクにも、この視点が巧妙に脚本化されていて見事だ。イングリッシュ・ボブのくだりを翻案した北大路エピソードは、当時の長州と薩摩の摩擦を描いて、このような小さな、あまりにも人間的な内実が、後に軍部の暴走という大事に繋がっていく事実を読んだ後では、非常に強いリアリティを感じる。アイヌ差別の実態もフィクションならではの明快さで切り取っていて深く頷かされた。

また映像の美しさ、音楽の素晴らしさにも心を揺さぶられた。

イーストウッド版と比較することは無意味だろう。枠組みは同じでも描こうとしたものはまったく異なっている。
それはラストを観ればわかる。
日本版では、十兵衛は姿を消し、五郎(柳楽優弥)となつめ(忽那汐里)が新しい生き場所を見つける。対してイーストウッド版はマーニー(イーストウッド)の人生が意外にも成功者として続いていくのだ。
人間の心は善と悪のような二分法では語れない。ふたつながら抱え込んで、答えのないまま生きていくしかない。成功しても失敗してもそれは偶然でしかない、というイーストウッド版の人間観と、日本という国の歴史の転換点を、北海道という辺境に生きた人たちの小さいが確かな生を通して描こうという試みの違いだ。


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2016年3月10日木曜日

Van ZandtのテレキャスターにGOTOHのIn Tuneサドルセットを導入してみた

突然だが、もう30年も前、学生時代に書いた曲をあらためて録音している。
最初の最初に書いた曲がこの「Identity Crisis」という曲だった。

いやー、恥ずかしいですな。
あまりの恥ずかしさに、歌詞を30年後の自分からのメッセージに変えてしまった。

とは言え、けっこう作業は楽しくて、まあライフワークみたいな感じで今までに書いた曲を残したり、まだまだ新しい曲も書いていこうと思った次第。
で、この作業中気になったのがギターの「サドル」だった。

僕のメインギターは、Van Zandtのテレキャスターで御茶ノ水のBIG BOSSで購入したものだ。




とても気に入っているが、購入当時からサドルのイモネジが右手の腹に刺さるのが気になっていた。




ね、飛び出してるでしょ。
お店の人は、「それがテレキャスターですから」と言って笑っていたので、そういうものか、と思っていたが、気になるものは気になるし、10年近く弾いてて慣れないんだから、やっぱりなんとかしようとネットを徘徊していて、サウンドハウスというお店でこいつを見つけた。
GOTOHのIn Tuneサドルセット。
これならイモネジが手に引っかかることがなさそうだ。

たいして高価なものでもなかったので、即ポチして、今日届いたのでさっそく取り付けてみた。
Amazonでも売ってました。値段も同じでした。

GOTOH★Fenderテレキャスター用ブリッジサドルBrass
説明を追加
おお!なんかカッチョいい。
イモネジの長さも適切だし、キレイに面取りされている。
思わず手をスリスリしちゃったよ。


で、これカッチョいいだけじゃなくて、オクターブチューニングにも配慮されている。
専門的な話なので、興味がある方はググってもらえばいいと思うが、テレキャスターというギターは伝統的に弦二本分まとめてひとつのサドルに載せちゃってるので、高音部にいくほど音痴になっちゃうのね。で、このGOTOH製のサドルにはそれを補正するように特殊な「溝」を彫ってあるのだ。

弦を張って、調整する。
愛用の弦はこちらのEVERLY B-52's


ALLOYという特殊な鋼線を使っているそうだが、Van Zandtのギターには標準で張られている弦なのだ。このパッケージに惚れて、張替え時にもこれを選んで買っていたが、数年前にパッケージが変更され味気ないものになってしまったので、まとめて大量に買っておいた。しかしとうとうこれが最後の1パック。
また新しい弦を探さなくては。

現行品はこれ。

Everly / エバリー 9210 エレキギター弦 B-52 Rockers
Everly
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弦を張って、開放弦の12フレットのハーモニクスと押弦した音が揃うようにサドルを下げていく。太い弦ほど大きく下げる必要がある。

何度か弦を緩めてはサドルを下げて、弦高とともに調整した。
いずれにしても完全には合わないので、耳でいいと判断したところまででいいのだ。

これで快適な録音ができそうだ。

2016年1月18日月曜日

【ライブレポート】佐野元春&THE COYOTE GRAND ROCKESTRA 2016/1/17 札幌市教育文化会館

佐野元春が2015年にリリースした「Blood Moon」が本当に素晴らしかったので、久しぶりにライブに出かけてみようという気になっていた。

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首尾よくチケットも入手できて、当日会場に行ってみると、前回入りが悪くてテレビ局の友人から招待券をもらって行ったコヨーテ・ツアーの時とは打って変わっての盛況。
満席に近い入りだった。
聴衆は正直だ。
やはり作品の出来が動員に大きく影響する。


前回は不意打ちの「グッドタイムス・バッドタイムス」でのオープニングで会場にいたすべてのオールドファンを泣かせたが、今回もやられた。
一曲目は「シュガータイム」

何かが間違ってるんだぜ、いつの頃からか
という印象的なブリッジが、この歌が書かれた80年代とは違う意味を持って立ち現れる。
そしてその変化が、僕らがここまでいろんなものに晒されて生きてきたんだ、ということを否応なく意識させて、やっぱりすっかり弱くなった涙腺が少し緩む。

そして歌は二曲目の「優しい闇」に進んでいく。


沖縄の基地問題に触れ、それを「柔らかいファシズムの元に生きる恋人たちの唄」(佐野元春Facebookより)に昇華したものだという。
デビュー以来一貫して、都会というしがらみに絡めとられながらも闊達に生きる恋人たちを描いてきた姿勢が、30年の時を超えたふたつの歌のメッセージを結び合わせる。
35周年の記念ツアーに相応しいセットリストの開幕だ。

中盤、最新アルバム「Blood Moon」からの曲を挟んで、35周年にあたっての言葉があった。
「みんなも35年の時を超えて、サバイブしてここにいる」と。
聴衆のそれぞれが、本当にいろんなことのあった自分の半生を振り返った瞬間だった。
そして「ジャスミンガール」

それはヤバイでしょ。
泣いちゃうでしょ。
と溢れてくる涙を拭っていると、隣から嗚咽の声が・・
けっこうみんな泣いてたと思う。

曲が終わると元春から「みんな、しんみりしちゃってるんじゃないの」と声がかかり、怒涛の80年代名曲シリーズへ。
かなりシンガロングしちゃったけど、他のコンサートのように気にならない。
だって凄いんだよ。客席のノリが。
久しぶりに手拍子が大きすぎてステージモニタが利かなくなっているのを見た。

ずい分昔、甲斐バンドの武道館の時、やっぱり手拍子が凄すぎてモニターが聞こえなくなって、甲斐さんが「みんな、ごめん、もう少し静かにしてくれる?」って言った時以来かな。


バンドのリズムというものは、誰かが主導権を持っている。
リズムだからといってドラマーが持っているとは限らない。
山下達郎さんのステージなら、達郎さんのギター(もし弾いていなくても)が。
ミスチルなら底抜けに明るくてパワフルなジェンのドラムが。
スピッツならシンプルなメロディの隙間をうねるように駆け抜けるアキヒロさんのベースが。

そして佐野元春のライブでは、明らかに「オーディエンス」がそのイニシアチブを持っている。
もちろんステージサイドでの音楽的リーダーシップというものはある。
佐野元春バンドでは代々、ギタリストがその役割を担って、オーケストラのコンマスのようにバンドをリードしてきた。
伊藤銀次さん、横内タケ、長田進、佐橋佳幸。
そして今回の深沼元昭も本当に素晴らしい演奏でバンドを引っ張っていた。(長田さんは札幌には来てくれませんでした)
ことにゴールドトップのレスポールを構えた時のあの無敵感はなんなんだろう。ホント聞き惚れるほどのいい音が出てた。

それでもホールを埋め尽くしたオーディエンスの熱量には敵わない。
僕の近くの席で周囲をリードしていたベテラン・ファンはもう手拍子のプロと言ってもいいだろう。
打ち姿の楽しそうな感じにほだされて、みんなその人に付いていってた。
たぶん随所にそういうベテランがいて、会場全体をアツくしていたんだろう。
みんなでこのステージの「演奏」を作っているという実感がとにかく楽しい。
来てよかった、と心の底から思えるコンサートでした。

2015年12月2日水曜日

P.F.スローンを歌ってよ

11月30日の北海道新聞夕刊に載った天辰保文さんのコラムで、11月15日にP.F.スローンが亡くなったと知った。
70歳だったと聞いて意外に若い人だったんだと驚いた。
伝説の音楽家だと思っていたから。

普通に暮らしていてニュースが流れてくるほどの知名度じゃない。
ほとんど無名と言ってもいい音楽家だが、この曲はみんな知ってるんじゃないか。
バリー・マクガイアの「明日なき世界」
この曲の作者がP.F.スローンだ。


多くの人がカバーしている名曲だが、清志郎先生と佐野元春のライブを貼っておいた。



高石ともやの訳詞だが、高石ともや版のクレジットには作曲バリー・マクガイアとある。
実は、これには訳がある。

ソングライターとしてヒット曲を量産しながらも、自身で歌いたいという夢を追いかけることにしたスローンを、ドル箱を失いたくない出版社は強く引き止める。
仕方なく、これまでの曲の著作権をすべて会社に譲渡するという契約で、押して歌手デビューを果たした、という経緯だ。

僕がP.F.スローンを知ったのは、友だちに勧められて聴いたRumerという女性シンガーが男性曲ばかりをカバーしたアルバムで、その一曲目がジミー・ウェッブの歌った「P.F.スローン」という曲だった。


ジミー・ウェッブは、著作権を放棄してまで歌手デビューしながら、直後大病をして大きなヒットを残せなかった彼への想いを「それはP.F.スローンの歌だから、誰も歌っちゃいけないよ」という歌詞に認(したた)めたのだ。
また、この歌には「誰もP.F.スローンのことを知らない」とも歌われている。
多くのヒット曲を書いたのに、著作権を失ったことを言っているのだろう。

でも多くの人がP.F.スローンの歌を歌って、その記憶が僕らのなかに残っている。
それはいいことだと思う。
清志郎の歌うこの曲を僕は、こんなきな臭い時代の匂いの中でいつも忘れずにいようと思うのだ。

2015年11月29日日曜日

EvergreenとForeverのあわい〜My Little Lover「re:evergreen」によせて

予約して楽しみに待っていたCDが届いた。
My Little Loverのre:evergreen

re:evergreen
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My Little Lover
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90年代、狂ったようにカラオケボックスに行っていた。
バブルの最中も、ハジけたあとも仕事は山のようにあって、深夜まで仕事をしてハイになったまま酒を呑んで歌った。
僕のアシスタントをしてくれていた人が歌う「白いカイト」が大好きだったから、せがんでよく歌ってもらった。
だから、今でも疲れた時には「白いカイト」が収録されているMy Little Loverのデビュー盤であるevergreenを聴いて、若さに任せて走り続けることのできたあの頃に想いを馳せていた。

20年を経てevergreenへの返信をするという記念盤のコンセプトを聞いては、これを入手しないという選択肢はすでにない。
evergreenをリプロデュースして併録するというのだからなおさらだ。

Re:と見て思い出すのは、2006年に出た寺尾聴さんのRe-Cool Reflectionsだ。
大ヒットアルバム「Reflections」を当時と同じメンバーでレコーディングし直した作品だが、これがもう痺れかえるくらいカッコよかったので、今回の企画にも大きな期待をしていたのだった。

Re-Cool Reflections
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寺尾聰
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届いた新作re:evergreenを聴いてみて、予想以上の素晴らしさに驚いた。
まさに20年前の彼ら自身へのakkoからの返信がそこにあった。
本当にいい作品を作ったよね、今の自分もあの頃と変わっていないよ、という強い想いが楽曲の端々に滲んでいた。

併録されたevergreenのリプロデュース盤は、当時のakkoの歌はそのままにバックトラックに手を加えたもので、リアレンジではなく、リプロデュースなのである。
使用する楽器を変更したり、ミックスを変えたりして20年前のakkoの歌唱を現代の音楽として甦らせるというコンセプトなんだな。
だってevergreen=変わらないもの、なんだよ。
「変わらないものは、なにも変えられない」と佐野元春も言っている。

こうして聴いていると、ああ本当にevergreenな音楽を作ったんだなと思う。
存在そのものが永遠性を持つForeverではなく、時代の中で息づいていくevergreen。
またひとつ大切なことを音楽から教わった。

岡本喜八「ブルークリスマス」と庵野秀明「エヴァンゲリオン」、あるいは竹下景子の異次元の清純さについて

旧い友人たちと、思い出のある居酒屋で旧交を温めていた。
懐かしい話に花が咲く中、そういえば昔はみんなタバコ吸ってたよなあ、という話になった。喫煙者と非喫煙者の割合は完全に逆転していた。

映画が好きなその先輩は、昔の映画に喫煙シーンが多いことを説明しようとひとつの映画のタイトルを挙げた。
それが「ブルークリスマス」
喫煙シーンのことを例示したくて挙げたのに、内容の説明が面白すぎて本題を忘れてずっとその映画の見所を語っていた。
ストーリーももちろん面白そうだったが、主演女優が竹下景子さんであることが僕の心に刺さった。
エラリー・クイーン「災厄の街」の映画化「配達されない三通の手紙」に出演していた若き日の竹下景子さんの可愛らしさに心奪われていたからだ。
「配達されない三通の手紙」の竹下景子

僕がそう言うと、「絶対ブルークリスマスの竹下景子のほうが可愛い」と断言された。
これは観るしかないでしょう。

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ところがことはそう簡単ではなかった。近所のレンタル店には在庫がなく、頼りのディスカスでは豊富な在庫があるのになかなか単品リストに入らない。古い映画なのに人気があるのだと知って、先輩が名作と強調していたのがよくわかった。

で、やっと来ました。
再生を始めると、タイトル画面にサブタイトルが記されていた。
BLOOD TYPE:BLUE
ピンときた人も多いだろう。

エヴァンゲリオンで、使徒が現れた時「パターン青。使徒です!」と言う時、ディスプレイに表示されている文言である。
庵野秀明は、ブルークリスマスを撮った岡本喜八監督からの影響を常々公言している。
戦争を経験した表現者(戦中派)は、しばしば戦時中同じ人間であるはずの敵国の人々を鬼畜と呼んでまるで別の生き物であるかのように考えていたのが、戦後突然錯覚であったことに気付く不思議をテーマにしている。
「敵」と「味方」をわかつ根拠が、人間自身の心の弱さにあるというテーマは、エヴァンゲリオンとこのブルークリスマスに共通する主題であるといえるだろう。

ブルークリスマスは、UFOから照射された光線でヘモグロビンの中の鉄が銅に変化してしまい、ヘモシアニンになった血が青くなることで迫害を受ける人々の物語である。

ヒトとシト、赤い血と青い血は、それぞれの物語で最後に溶け合う。

その意味するところは、たぶんここで言葉にすべきでないものだろう。観るものの心に生まれる感慨そのものを大切に抱いていくしかない。
これはきっとそういう映画だ。

そんなことより竹下景子だ。

可愛いですね。これこそが清純派でしょう。清純さのレヴェルが現代とは異次元にある。
そしてこの可愛らしさを演出するのに岡本喜八監督が使ったこのシーン。





背の低い竹下景子が、勤めている理髪店のシャッターを閉めようとジャンプ一閃。
見事に閉めてクルッと振り返るとか。天才や、岡本喜八。
監督も素晴らしい演出と思ったかラスト近くでもう一回飛びます。
いいなあ。
死してなお美しい。
クイズダービーの三択の女王の姿しか知らなかった竹下景子さんの映画作品。
まだまだ開拓していきたいです。

映画内では、ビートルズをモデルにしたと思われるザ・ヒューマノイドというバンドが歌う「ブルークリスマス」という曲が頻繁に流れるが、この歌を実際に歌っているのがなんとCHARさんです。
やっぱりタバコくわえてますw


映画で使われているのがこちら。

日本語バージョンもありました。
発売されたシングルはこちらがA面で、英語版がB面に収録されていたそうです。
なぜか、日本語バージョンのほうがテンポが速い。なぜなんだろう。




2015年11月24日火曜日

David Buckinghamのアルバムはイギリスから超特急で届いた。

先日オーディオショウで、アクシスという輸入代理店のデモでかかっていたフラメンコギタリストのCDが誰のものかわからないと書いたら、一緒にデモを聴いていた方にコメントいただいてデヴィッド・バッキンガムだったとわかりました。

View
View
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David Buckingham
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で、さっそくAmazonを探すと、マーケットプレイスによくある海外発送の業者さんが中古盤を持っていまして、なんと138円。さっそく発注かけました。納期まで3週間ほどお待ちくださいとのこと。はるばるイギリスから来るそうですから仕方ないでしょう。

11月16日に注文して、12月4日が納期の目処と連絡が来たのですが、なんと今日11月24日にもう到着してしまいました。
やるじゃん、イギリス。仕事早いね。


ROYAL MAILというメール便サービスで到着。保護材入りのソフトパックでした。
が、
中にもう一つCD専用のパックが入って二重になっていました。海外発送用の対処ということでしょう。


 デジパックですね。中古としては綺麗な方でしょう。盤面には小さなキズがひとつありましたが、再生にはいまのところ不具合はありません。

これが裏ジャケ。はじめてお顔を見ましたよ。
デモでかかったのは5曲めのWonderful Tonight(Eric Clapton)だったかしら。
スティーヴィー・ワンダーのカバーも入っていて、フラメンコ・ギターのテクニックでポップなメロディを弾くという趣向のアルバムのようです。

全体を通して聴くと、随所でさりげなく難しいことやってて、カッコいいです。
録音も良く、目の前でギターを奏でている感じ。
手の動きが見えるようです。

しかし、いくつかの曲でギターのボディをパーカッシブに叩く奏法を多用していて、録音がリアルな分だけ少し耳に痛い。装置との相性もあるのでしょうが、僕にはちょっとここだけトゥー・マッチでした。

フラメンコギターのアルバムを買ったのは初めてでしたが、ボサノヴァとはまったく違うワールドミュージック感が楽しい。
いいですね。


【Anthologies #1】心に澱が積もる夜には|大貫妙子『ライブラリー』

 還暦を過ぎ、いつの間にか貪欲に新しい音楽を探すことはなくなった。 それでも、日々を生きていれば音楽に頼りたくなることはあるものだ。そんなとき聴きたくなるのは、アーティストたちの人生が垣間見える<アンソロジー>で、いくつか愛聴盤がある。 誰かの心無い言葉や、諍いに心に澱が募るよう...