2016年9月7日水曜日

真行寺君枝も自らの代表作と言う、映画『風の歌を聴け』を観よ

村上春樹の「風の歌を聴け」が映画化されているのを知ったのはFacebookで先輩が教えてくれたからだった。

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20年ほど前、まだ銀座にオフィスのある会社でサラリーマンをしていた頃、会社の近くにある小さなバーに入り浸っていた。
「あらじん」という名前のそのバーはコリドー街近くの雑居ビルの地下にあった。
席につくと、ピーナッツの入った大きな瓶の中に手を入れて掴み取りをするのが決まりで、とれた分がその日のお通しになる。
マスターは「あ、殻はそのまま下に捨ててください」と言う。
見ると、 カウンター席だけのその店の丸い椅子の下には確かにピーナッツの殻が捨てられるままになっていた。
今でもそのマスターは別の看板を掲げて銀座でバーをやっていて、昔の仲間が時々行って、マスター元気だったよと教えてくれるから、懐かしくてピーナッツの話をFacebookに投稿したら、「風の歌を聴け」の映画版に出てくるジェイズ・バーの床にもピーナッツの殻が転がっていたね、と教えてくれたのだ。

近所のTSUTAYAにはそのDVDは置いていなくて、宅配レンタルを使ってやっと大森一樹監督の「風の歌を聴け」を観た。
そんなわけだから、ジェイズ・バーの床にまず注目することになるが、これは酷い。


床一面に殻が敷き詰められている。
ピーナッツを食べた客が殻を放り投げなければこのような状態にはなるまい。
そんな客も店もあるはずがない。殻はあくまでも自分の足下に捨てるのだ。
そしてその日の営業が終われば、殻はまとめて捨てられる。
これは、厄介な殻の始末をお客様ごとにやるのではなく、お客様にご勘弁いただいてそれだけは一日分まとめてやらせてね、という客とマスターとの間の暗黙の了解のようなものなのである。


この映画の気になるところはこれだけではないが、それらをすべて帳消しにする真行寺君枝の美貌を、まずはとくとご覧頂きたい。


レコード店の美女。
綺麗なだけじゃなくて、音楽にも詳しい。
「僕」が探しているレコードをすいすいラックから抜き出してくる。


いいなあ。ホントにいいなあ。

ところで、この美女に「僕」は、カリフォルニア・ガールズの入っているビーチ・ボーイズのレコードを探してもらうのだが、彼女、よりによってロンドンでのライブ盤を選んでいる。まあ、入ってるけどさ。普通はサマーデイズだよね。
このシーンでかかってるのもサマーデイズ収録のカリフォルニア・ガールズだし。


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この時点で真行寺君枝は小林薫演じる「僕」に不信感を抱いているので、意地悪をしたのかもしれないね。
そう考えるとなんか可愛いよね。

そういえば、このカリフォルニア・ガールズを映画に使うための使用料が数百万もかかっているらしく、他のシーンがチープなのはそのせいなんだそうだ。
真行寺君枝も、とにかく予算がなくて苦労したとインタビューに答えている。
同じインタビューで、真行寺君枝はこの映画を自らの代表作って言ってる。
うん、その言葉に値する雰囲気出てますよ。


「僕」はまた、思いつきでベートーヴェンのピアノ協奏曲の4番をグレン・グールド、レナード・バーンスタイン盤で選ばせるが、原作ではこれ3番なんである。
ということは、まあ、監督か脚本家の趣味なのかもしれない。

僕個人の話をすれば、一番よく聴くのはやっぱり4番で、第二楽章冒頭のストリングスの重厚なテーマが好きだ。だが、演奏者がグレン・グールドということになると話は変わってくる。
おそらく他のどのピアニストも、この3番をこんなにゆっくり弾いたりはしないだろう。特別な3番。村上らしいチョイスだと思う。

真行寺君枝の話ばかりでもなんなので、他の出演者にも触れておく。
小林薫(=「僕」)の相棒「鼠」には巻上公一が、そしてジェイズ・バーのマスターには坂田明が扮していてる。
バーにいる真行寺君枝さんも素敵(って結局そればかり)


そして室井滋さんの商業映画デビュー作なんだそうな。
もうデビューからすごい存在感ですね。


原作「風の歌を聴け」は、作家村上春樹の「なぜ小説は書かれなければならないのか」についての言葉にならない考察だった、と僕は思っているのだが、物語という形態でしか小説の蓋然性を描けないというある種のメタ構造になっている原作の主題は、メディア違いの映画には描きようがない。
そんなわけで「鼠」は小説ではなく映画を撮っているわけだが、その自主制作映画のシーンからは、粗野だがエネルギーに満ちた時代の空気が流れてくる。この自主制作映画は巻上公一の原案によるものだそうで、もともと演劇のシーンから出てきた彼の面目躍如というところかもしれない。




2016年9月4日日曜日

FUJIFILMのSUPERIA X-TRA400で、夏の終わりの札幌を撮ってみた

リバーサルフィルムの残りが少なくなってきたので、そちらは冬の札幌を撮影するために温存すべく、ネガフィルムを調達しにビックカメラに行ってきました。
ネガフィルムならば自転車を飛ばして桑園イオンのカメラのキタムラに行けば、60分で現像してCD-ROMに焼いてくれます。

カメラ用品はヨドバシカメラで探すことが多いです。
それは売り場の整理がユーザーの意識に寄り添っていて探しやすいからなんですね。
フィルムの売り場も、現像を依頼するカウンターの横に現像用品とセットになって置いてあります。

ビックカメラでは探しているものが見つからない事が多く、店員さんに訊いてみて、なんでここ?って思うことがよくあったんです。それで今回は敢えて店員さんに訊かずに、ビックカメラでのフィルム売り場を見つけるまで探してみようと決めていたのです。

果たして今回はホントに困難を極めました。
結局フィルム売り場は現像用品とはまったく違う場所で、デジカメのデータをプリントするコーナーの奥に冷蔵ショーケースが置いてあってその中に並んでいました。
プリントコーナーには常に人がたくさんいて、その横にフィルムの現像依頼コーナーもあるのですが、あろうことかその反対側の奥なのです。
まいった・・

で、これを買ってみました。
FUJIFILMのSUPERIA  X-TRA400です。


感度の高いフィルムを買ったので、早起きして夜明け直後の空などを。
改めて電線、電柱だらけの国なんだなと思いますな。
いつもの大倉山を登っているうちにすっかり日が昇ってしまいました。
札幌が山に囲まれた街であることがよく分かるアングルです。


大倉山から降りてくる道の途中には本郷新記念彫刻美術館があります。いつもの庭園の像に赤とんぼがとまっていました。もう少し倍率の高いズームがあれば、と一瞬思いましたが、無い物ねだりをしても仕方がないですね。
今回は、記念館(別館)の隣にある「宮の森緑地」という小さなスペースに知らなかった本郷作品を見つけました。


下界に降りてくると、舗道に植え込まれた向日葵が夏の終わりを惜しむように、せいいっぱい凛と咲いていました。

2016年9月2日金曜日

映画『不連続殺人事件』を観た

映画『不連続殺人事件』を観た。
坂口安吾の原作らしいが、未読。


クリスティーやエラリー・クイーン的な本格推理の仕立てになっていて、事件の舞台は人里離れて孤立した「館」である。
舞台設定に戦後の日本の事情を加味してあって、安吾という作家の巧みさが光る。
そこに多様な奇人たちが集まる、というのがまた「本格」っぽい。




最初に死ぬ望月王仁役の人、『青春の殺人者』で殺される人だな。
まだまだいますが、こんなところで。
この奇人たちの中でも内田裕也の存在感が凄い。


そんな中で、掃き溜めの鶴を演じるのが、夏純子さん。
例のパーマネントブルーにも出てるらしい。
ますます観たくなるじゃないか。


かなり濃い目の面々を揃えたものの、事件そのものはわりと普通で、そのギャップがこの物語を成立させていると言えなくもないわけですが、特に探偵役の造形があまりに薄いので、犯人当てに興じるよりは、容疑者たちの振る舞いを楽しむのが吉と思います。
ただこの探偵いいこと言うんだよなあ。
この殺人事件は「不連続」だ、とか、「心理の足跡」とか。
キャスティングによっては化けたかもしれないですね。

さて、音楽についてですが、やはり70年代の邦画は音楽が凝ってます。
この映画では冒頭から強くひずんだエレクトリックギターがプログレチックなフレーズを奏でて、いやが上にも盛り上がるわけですが、名古屋を中心に活動したコスモス・ファクトリーというバンドが担当しているそうです。
知らないなあ・・でもなかなかいいですよ。

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2016年8月29日月曜日

水谷豊&原田美枝子が演じた中上健次の衝動の青春~映画『青春の殺人者』はマジ必見だわ

エラリー・クイーンが原作で、長く暮らした釧路も舞台に使われているということで観た「配達されない三通の手紙」という映画で、若いころの竹下景子さんの可愛らしさにヤラれていたら、それなら「ブルー・クリスマス」のほうがスゴいぜ、と言われて観てみたら、こちらの竹下景子さんがマジ天使。
この頃の日本映画の独特の台詞廻しや、どこか懐かしく温かい風景、とてもよくできたデザインの古い国産車などに、どんどん惹かれていった。

で、古い日本映画を探していたらこんなの見つけた。
『青春の殺人者』


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水谷豊と原田美枝子さんの主演である。


原作は中上健次の短編『邪淫』で、実際に千葉であった殺人事件を描いたものだ。

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映画は実際に事件が起きた現場で撮影されている。
芥川賞受賞作『岬』でも、その続編である代表作『枯木灘』でも、血族の葛藤と突発的な衝動による殺人を、自らの経験をもとに描いている作者にとって、捨て置けない素材だったのだろう。


舞台はまだ住民との闘争が続いていた成田空港近く。
ここに父親の支援でスナックを開いた男と、そこで働く幼なじみの女という設定。
とはいえ、裕福な家の息子というわけではなく、アイスクリーム売りから身を立てて、トラックのタイヤ交換を生業としてなんとか暮らしていけるようになった一家の、なけなしの貯金を息子の将来に賭けての起業である。

その息子は高校時代に自主制作の映画『磔刑』を撮っていて、親や学校の支配から自由を勝ち取る闘いを描いたものだ。当時、全国の高校でこのような闘争があったと聞く。



 親は、当時大学で起きていた学生紛争を見て、我が子が大学に進学するのを阻止したという負い目もあった。


このような時代性も語られてはいるのだが、破綻も悲劇もほんのちょっとした衝動によって動き出してしまう。
そこにこの物語のリアリティがあると思う。
知ったフリの解釈を拒むところがこの映画にはあって、それがこの映画を輝かせている。
いい映画だ。本当に。


大事なことを最後に書く。
音楽が素晴らしすぎる。
冒頭、タイトルバックの後ろに流れてきた英語の歌が、ホントにカッコよくて、なんじゃこれは!と映画を一時停止して調べ始めたくらいだが、わかってビックリ、ゴダイゴだった。
使われている楽曲はゴダイゴのアルバム『新創世紀』と、タケカワユキヒデの1stアルバム『走り去るロマン』にフル・ヴァージョンが収録されているそうで、ぜひ聴いてみたい。
その他のインスト曲もミッキー吉野さんが作曲しているそうだ。

ウィキペディアによれば、この『新創世紀』は、タケカワユキヒデの2ndとしてはじまったレコーディングが、バンド形態に発展していったものだそうで、てっきりミッキー吉野がタケカワユキヒデを誘って作ったバンドだと思っていたので、驚いた。

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2016年8月28日日曜日

盛夏の札幌〜豊平川から宮の森まで Nikomat EL + Zoom Nikkor 43-86mm

台風の合間、夏らしい空が広がった休日にカメラを持って自転車で出かけました。
友人が豊平川でのサイクリングを薦めてくれたので。

 


途中、中島公園に寄り道してボート池の鴨を撮ったり、川で遊ぶ子どもたちを撮ったりしました。
橋を渡った時、大きな鳥が飛んでいたので咄嗟にカメラを向けて確かに捉えた、と思ったのですが現像が上がってみるとどこにも見えず。
どういうことなんだろう。


 


翌朝、晴天が続いていたので早起きして、近所の彫刻美術館へ。
もちろん開館前ですが、庭にあるいくつかの彫像をパチリ。



美術館近くの交差点にもこのような彫像がありました。

そこから坂を登って行くと大倉山に出ます。
さすがに山登りまでの時間はないかと思い、引き返そうと振り返ると・・・


札幌の街が見えました。
さすがの高級住宅街。
このあたりに住めるといいなあ。

【Anthologies #1】心に澱が積もる夜には|大貫妙子『ライブラリー』

 還暦を過ぎ、いつの間にか貪欲に新しい音楽を探すことはなくなった。 それでも、日々を生きていれば音楽に頼りたくなることはあるものだ。そんなとき聴きたくなるのは、アーティストたちの人生が垣間見える<アンソロジー>で、いくつか愛聴盤がある。 誰かの心無い言葉や、諍いに心に澱が募るよう...