【島田荘司・御手洗潔シリーズ考察】『屋上の道化たち』書評|御手洗潔シリーズ50作目の魅力と「救い」の眼差し

島田荘司先生の御手洗潔シリーズ記念すべき50作目、『屋上の道化たち』を読みました。前作の大作『星籠(せいろ)の海』に続く、ファン待望の新作です。


私は普段、本の重さやページをめくる手触りにこだわり、文庫化されるまでじっくり待つ「頑固な文庫派」です。ハードカバーは読書への没入を妨げることがあるから……というのが建前ですが、島田先生の作品だけは完全に別格。発売された瞬間に、居ても立ってもいられず単行本を手に取ってしまいます。なぜなら、島田作品の圧倒的なリーダビリティ(読みやすさ)の前では、本の体裁など些細な問題になり、一瞬で物語の世界へ引き込まれてしまうからです。

読者を惹きつける「謎の提示」とリアルな人間模様


島田作品の最大の魅力は、なんといっても物語の幕開けに用意される「強烈な謎の提示」にあります。
本作で描かれるのは、「絶対に自殺などしそうにない人々が、次々と飛び降りてしまう不可解な屋上」という不気味な謎。一見シンプルに見える状況の裏に、一体どんな真相が隠されているのか。その答えが知りたくて、ページをめくる手が止まらなくなります。
また、事件の背景に描かれる市井の人々のリアルな描写も、物語に深い説得力を与えています。
予期せぬ不運のサイクルに巻き込まれ、もがいても抜け出せない人
組織の同調圧力や空気に飲まれ、流されていく人
彼らの姿は決して他人事とは思えず、「僕たちもきっと、そんな『道化』の一員なんだ」と、どこか身に覚えのある光景に強く感情移入してしまいます。

探偵・御手洗潔が放つ「温かい視線」


『屋上の道化たち』の素晴らしさは、こうした「時代」や社会の歪みに翻弄される人々を、作者が安易に批判も擁護もしない点にあります。
探偵・御手洗潔は、社会のルールや固定観念に縛られることなく、ただ目の前の「人間」を真っ直ぐに見つめます。そして、鮮やかに謎だけを解き明かしていく。その振る舞いからは、ミステリーという文学ジャンルが持つべき「大切な役割」や救いのようなものを強く感じます。
スケールの大きな『星籠の海』も名作ですが、個人的にはこの『屋上の道化たち』のような中規模の作品にこそ、御手洗潔というキャラクターが持つ「人間の弱さに対する視線の温かさ」が色濃く現れていて、深く心に刺さりました。

ファン必携!巻末の「全作品ガイド」も必見


なお、今回の単行本にはシリーズ50作目を記念して、「御手洗潔シリーズ全作品ガイド」が巻末にまるごと収録されています。
これまでの歴史を振り返る公式ガイドとしてのクオリティが高く、この特典部分だけでも十分に購入する価値がある、ファン必携の一冊です。

屋上の道化たち
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島田 荘司
講談社
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