2012年10月15日月曜日

僕がアナログレコードを聴き続ける理由、そしてDENON DP-500MとMMカートリッジを偏愛する理由。

確かにCDの音はずいぶん良くなったと思う。
別に不満があるというわけじゃない。それでもアナログレコードをかけると、いつも「鮮烈さ」のようなものを感じる。

昔懐かしいレコードを聴いているのだから、ノスタルジーも手伝ってレコードの音を味わい深く感じているだけではないか、と疑わなくもないが、僕は新譜も可能ならばアナログで買うことにしていて、新しいサウンドの音楽もレコードで聴くとやっぱり鮮やかでカラフルな印象を受けるので、それだけでもないだろうと思う。

このCDとレコードの音の関係について、なるほど、そういう理由かと腑に落ちた事件があった。
僕は自分のオーディオに疑問を持ったことはほとんどなく、必要になった時、その時持っている予算で最も自分の好きな音を奏でてくれる機械を買って、しばらくあれこれ納得いくまでセッティングを詰めたら、何度聴いても、ああいい音だなあ、と思えてしまう幸せな男だ。
だからオーディオ店の試聴会なんてのには行ったことがなかったのだが、今年の夏に前の会社の先輩に、札幌で一番大きなオーディオ専門店であるCAVIN大阪屋の試聴会イベントに誘われて、もちろんオーディオは大好きなのでウキウキしながら出かけていった。
そこで心底驚くようなデモンストレーションを聴いてしまったのだ。

それはCDプレーヤーにマスター・クロック・ジェネレーターを加えると音がどう変化するのか、というものだった。と、言われても何のことだかわからない人も多いと思う。
なるべく簡単に説明しよう。

音は空気の振動だから、「波」のカタチをしている。
これをそのままビニール盤に刻み込んだのがレコードだが、CDはデジタルだから、この波を細かく切り分けてその回数だけ信号を読み込んで再生することになる。
その回数をサンプリングレートといって、現在のCDの規格では44.1kHz、つまり1秒間に4万4100回信号を読み取っている。
この4万4100分の1秒を測る時計をクロックと言っている。

普通のCDプレーヤーに搭載されているクロックは2~3ヶ月に1秒狂うくらいの精度のものだが、その精度を高めていくために外部から高精度のクロック信号を送る機器をマスター・クロック・ジェネレーターと呼んでいるのである。

さて、今回のデモで見たエソテリック社の新鋭マスター・クロック・ジェネレーターは10年に1秒の誤差、という精度のもの。
我々の感覚ではそれがどういう差なのかはちょっと判然としないが、出てくる音はまったくの別物だった。
まるで深い森の中に迷い込んだような濃密な空気感が突然音楽に纏わりついたような感じ。うまく言葉ではいえないが、それは確かに音楽再生の技術がひとつ高いステージに飛び込んだことを確信させる音質変化だった。

しかしこの機械、なんとお値段141万7500円也。
私の愛用しているCDプレーヤーは16万8000円である。なんという高価なグレードアップか。

そして、これはレコードプレーヤーに置き換えると「ターンテーブルの回転精度を上げる」ということに相当する。
モーターの回転精度を上げるなんていうのは、もう程々に「枯れた」技術で、大抵の中級機なら相当に高い精度で回ってくれるし、今回のCDにクロックを足したような驚愕の変化はたぶん現れようがない。


つまり、アナログレコードの再生システムと同等の音を出そうとした時の、CD再生にかかるコストは相当に高く付くということだ。
クロックのデモは、音がどこまで良くなるのかという限界点はもしかしたらデジタルの方が高いのではないかと思わせるに足るものだったが、無限の予算がない以上、僕はアナログの方を選ぶ。


同じように、CDプレーヤーは10年も回しているとピックアップが読み取りエラーを出すようになる。これを交換するとなると面倒だし、結構なコストもかかるから、それなら新技術の投入されたニューモデルが欲しくなるだろう。
何れにしても結構な出費だ。

アナログでは針を交換してしまえば、音がフレッシュになる。僕のカートリッジの交換針は2000円弱だから、毎年交換しても全然平気だ。
事実毎年正月に針を交換するのを習慣としている。


近年、またアナログ関連の商品は息を吹き返してきていて、プレーヤーもオーソドックスなスタイルのものからアバンギャルドなデザインのものまで様々な新製品が店頭に並んでいる。

それらの多くは音質的に有利とされるストレートアームを備え、簡単にカートリッジを外すことが出来ない。
私の使っているプレーヤーは今ではとんと見なくなったユニバーサルアームというのがついていて、簡単にカートリッジを外すことができるので、毎日レコードを聴いた後必ずテクニカのスタイラスクリーナーで針を掃除している。

このクリーナーの薬剤が針に(正確に言うと針を支えているカンチレバーやそれを支えているダンパーに)悪いというので、あまり頻繁には掃除をしないほうがいいという説があるが、それはまったくその通りなのだが、私の場合はそんな影響が出てくる前に針を交換してしまうのでぜーんぜん関係ないのだ。





そのようなわけで、僕はオーディオファイルの皆さんが見向きもしない、初心者用プレーヤーDENON DP500Mを使い、頑固にも付属のオーディオテクニカのOEM品であるMMカートリッジを使っているのである。
いや、これが本当にいい音するんですよ。信じないかもしれませんが。


3 件のコメント:

  1. 昨年DP-M500を中古で購入しました。
    私もそんなに高価なオーディオを揃えたいとは思って無いので、ジラソールさんの考えに近いです。最初から着いていたカートリッジで十分です。ただ、針が少し(最初から)傾いていたので、買い換えなきゃといつも思ってます。MCに換えようかな…と思ったこともありますが、MMでも充分かなと。
    この場合、針だけを交換すればいいんですか?教えてください。

    osamshi

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    1. コメントありがとうございます!
      だいたい針を交換するだけで治りますが、シェルとカートリッジの接合がうまくいってないことも考えられますので、一応チェックしてみてくださいね。

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    2. ジラソールさん、ありがとうございました🎵針だけ交換しました。充分に良い音になりました。カートリッジとシェルの接合…なるほどなるほど。具体的にはどうチェックしてよいか分かりません(;´д`)ポイント教えてください!

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