ジェネシスは好きでけっこう持っているが、イエスとキング・クリムゾンは代表作をいくつか、EL&Pに至っては『展覧会の絵』しか持っていない。
そんな僕に、大学時代の先輩がたくさんの洋楽レコードをくださって、その中にけっこうな数のプログレが含まれていた。
ピンク・フロイドの『おせっかい』が入っていたので聴いてみる。
ピンクフロイドは今まで『狂気』(SACD Multi-ch)と、活動再開後に出した『ザ・ウォール』のライブしか持っていなくて、この『おせっかい』については、実は今までジャケットすら見たことがなかった。
ヒプノシスが手がけたジャケットは幻想的で、アルバムタイトルが入っていないが、原題は『MEDDLE』という。「やっかいもの」くらいの意味か。
開くと大きな耳になる、というデザインらしいが、水に棲むラクダにしか見えない。
どうしたヒプノシス。何があった。
本作は有名曲『吹けよ風、呼べよ嵐』で幕をあける。
知ってる。知ってる。アブドラ・ザ・ブッチャーの登場曲よね。
こうしてあらためて音源だけで聴いてみると、ブルーザー・ブロディが使っていたZEPの『移民の歌』に較べるといくぶん地味で、わかりやすい盛り上がりには欠ける。
きっと較べちゃいけないんだろうけど、しかしそのぶん、サウンドが多彩で特に後半の折り重なるギターのフレーズには聴き飽きない魅力がある。
さすがにロックバンドのインスト曲として異例のシングルヒットとなっただけのことはある。
そして穏やかな曲想の『ピロウ・オブ・ウィンズ』 に続く。
A面ラストの『シーマスのブルース』まで、プログレッシブ・ロックのパブリック・イメージである変拍子も長尺の曲もない。
歌声もどちらかと言えば優しく、メランコリック。
ここだけ取り出して聴けばナイーヴな英国フォーク・ロックのバンドと言っても不思議ではない。
普通によく出来たロック・アルバム。
だがB面にひっくり返してみると、一曲しか入っていないではないか。
長尺キタ━(゚∀゚)━!
と、慣れない顔文字など使ってみますた。
B面すべてを使った23分超えの大曲『エコーズ』
しかし導入部はA面からの流れを引き継いで、穏やかでメランコリック。
コード進行に近親長調への部分転調を含んで、あくまでもロック・イディオムの中で起伏をつけていくスタンス。
だが徐々にドラムスが激しさを増し、ギターの印象的なインスト部が続く。
ふとリズムが止まり、不穏な和音が奏でられる。
ドラマティックな展開を予感させるコード進行に乗ったミュート・ギター。
そして延々続いたこのブリッジは、また静かな歌唱部に戻っていった後、クロマティックなフレーズで上下する歪んだギターと激しいドラミングで、待ちに待ったカタルシスに到達するのであった。
終わってみると、歌だけはどこまでも穏やかであったことに思い至る。
そしてギルモアのギターの音色がとにかく艷やかで素晴らしい。
結局このアルバムには変拍子はなかった。
これはロック・アルバムの名盤。
プログレッシブという但し書きはこのアルバムには必要ないだろう。
ピンク・フロイド
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