授業と部室スタジオでの練習の合間に、よく僕らはたまり場にしていた大学生協の二階でタバコを吸いながら時間を潰していた。
そこにはだいたいいつも誰かのエレキギターが一本や二本はあって、そこであまりギターが上手くない僕は本職のギタリスト諸氏にカシオペアの『ASAYAKE』のリフを教えてもらったりしたんだ。
そういえば、昔ザ・ベストテンに吉川晃司が出た時、ギターが上手いという証明に『ASAYAKE』のリフを弾いていたっけ。
1989年に就職して東京に出た時、初めてのクルマを買った。
黒い、いすゞのジェミニ1600GT“Handling by Lotus”だったけど、仕事が忙しく、乗るのはいつも会社の寮があった川崎の、深夜の多摩川沿いだった。
遠くに東京の灯りが見える漆黒の川崎の空いた夜道には、なぜかフュージョンがよく似合った。
サンボーンにジョー・サンプルに、今ではちょっと恥ずかしいケニー・Gとか。
で、どんな曲をかけても、不思議に大学生協二階の光景が頭に浮かんだから、それはきっと頭にカシオペアのサウンドが刻み込まれていたんだろう。
じゃあカシオペアも一枚積んでおこうと選んだのが『Mint Jams』だった。
そのサークルの先輩から最近戴いたLPレコードの山の中にはかなりの量のフュージョンが含まれていて、懐かしい『Mint Jams』もあったので、聴いてみた。
カシオペアはアルファだったんですね。
アルファは現在ソニーに販売権を移したので、CDは子会社のヴィレッジから出ています。
イギリスCBSのプロデューサーがカシオペアの大阪公演を観て感動して、このライブの素晴らしさを詰め込んだアルバムをヨーロッパで売りたい!と言ったのが、このアルバム制作のきっかけだったとか。
ヨーロッパで人気の出そうな曲、ということでセレクトしたのがこの初期の楽曲群で、印象的なテーマメロディを持つ曲が多いですね。
今回も聴いてみて、やっぱりタイムトリップしてしまいました。
その後に出た、『ジャイブ・ジャイブ』
このメンバーの顔イラストはギタリスト野呂一生氏の作とか。
ディランより上手いかも。
ボブ・ディラン
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このアルバムはとにかく音が太いです。
特にドラムスの音がいい。
ロンドン録音で、それぞれのドラムへのオンマイクに加え、上方から二本のアンビエント・マイクを設置したそうで、 そういう効果が出ているのでしょう。
ずっと前にテレビ番組で、村上ポンタ秀一氏がアシスタントに、
そんな軽い音じゃダメだ!神保彰じゃないんだから…と冗談めかして言っていましたが、確かにイメージは繊細でスクエアなドラミングというイメージだったので、このアルバムの音には驚きました。
迫力あります。
そして、『HALLE』ですね。
かなり後半のアルバムですが、テクニックが脂のっててコッテコテです。
キメキメです。
フュージョンって聴いてて、こういう「合奏の楽しみ」みたいなものがあるなあ、って思うんですよね。
でもこういうのって、やっぱり分かる人と分からない人が出てきちゃうから、 もしかしたら、逆にそういうところがフュージョンファンとそうでない人たちの壁なのかもしれなくて、Mr.Childrenの桜井さんなんかは、アルバム『Q』収録の『Surrender』という曲の中で、
大キライなフュージョンで 泣けそうな自分が嫌 イヤと歌ってたりします。
Mr.Children
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別に桜井さんがフュージョン嫌いっていうんじゃなくて、フュージョンには「泣けない音楽」っていうパブリックイメージがあるってことなんだと思うんですが、つまりそれって、「泣ける音楽」がいい音楽っていう認識が、その裏側にあるってことなんでしょう。
まあ、そういう一般論はどうでもよくて、自分自身にはフュージョン・ミュージックに、人生のある時期と強く結びついた思い出があって、 どこまでも音楽的愉悦を追求したようなカシオペアの楽曲でも懐かしい気持ちに心が動いて、今回もちょっと目が潤んだりしましたよ。
カシオペア
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