2017年5月17日水曜日

スティーリー・ダン『エイジャ』:ドナルド・フェイゲンがもう褒めるな、と言うくらい褒められすぎな名盤の話

冒頭から「説明不要の名盤」などと書くと、じゃあなんで書くんだという話になりますが、それでも書かずにいられないほどの名盤っていうのもあると思うんです。
スティーリー・ダンの6thアルバム『エイジャ』もそういうレコードのひとつでしょう。

アナログ盤を入手したので、手持ちのCDと音質比較をしてみようと思います。


オリジナルの国内盤は、光沢のあるジャケット。
妖艶な東洋美女は、日本人モデルの山口小夜子さんです。
抗いがたい魅力を放つ被写体。
動いている彼女が見たくて、田原総一朗さん原作の『原子力戦争』という映画も観ました。

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映画でもジャケットのまんまの感じで、動いているのに動きのひとつひとつが写真みたいにバシッと決まる。そういう人でした。
撮影も日本人カメラマンで、藤井秀樹さん。日芸の写真科を出て秋山庄太郎さんに師事、後に広告写真家協会の会長になって、日本写真芸術専門学校の校長も歴任されたので、専門学校の募集広告を作っていた僕は、勝手にほんのり薄いご縁を感じたりして。


演奏に関しては、全編ハイライトなわけでとにかく聴くしかないです。
その全編ハイライト感が、最初に聴いた時ちょっとトゥーマッチな感じで、僕は7thアルバムの『ガウチョ』推しになるんですが、そんな僕に音楽に超詳しい友人が、とにかく表題曲『エイジャ』の後半、ウェイン・ショーターのサキソフォンとスティーブ・ガッドのモーレツな掛け合いを聴け、ボリューム上げて聴け、と言うんで聴いてみたら、なるほど、最高のミュージシャンを集めて最高の楽曲を作るというシンプルにして究極なこのアルバムのコンセプトを象徴的に表現していますね。

さて、私の所有するCDですが、2006年に勤めていた会社を辞めた時に同僚がお店に飾ってくださいと買ってくれた「でかジャケCD」というやつです。
LPサイズのジャケットにCDが入ってます。



これがとにかく音質がよく、それまで持っていた輸入盤CDは即売り払ってしまいました。
ジャケットはオリジナルとは違いマット仕上げ。
CDはLPサイズの厚紙にビニールのケースが貼り付けてあるという仕様で、簡単に取り出して、はい再生とはいかない。
アナログレコードも同様な手間がかかりますが、その作業はもうカラダが覚えていて、それ自体がすでに楽しいという域に達しているわけで、そういう意味ではでかジャケのほうが再生に至るまでの心理的なハードルが高いような気がします。

肝心な音ですが、特にドラムスの音質に関して、でかジャケの質感が圧倒的に優れています。スネアの音にリミッターがかかって得られるロックな感じがくっきりとした輪郭を持って迫ってきます。
初期のスティーリー・ダンが持っていたわずかにルーツよりな楽想ならレコードの質感がジャストフィットだったでしょうが、このアルバムの音楽はどこを切ってもスティーリー・ダンのオリジナリティが凝縮されていて、そのような『緩み」を許しません。

と、つい興奮気味になってしまうのはこの音楽があまりに素晴らしいからですが、このまま書き進めていくわけにはいかないのです。
だってこの「でかジャケ」リマスタ盤に寄せて、ドナルド・フェイゲンご自身が、この『エイジャ』についてはすでに百万語が費やされて過大評価ギリギリのところまで来ている、と述べて、これ以上の褒めすぎを厳に慎めと言っているのですから。
では、ここらで少しリラックスしたアナログの音を少し音量を下げて聴いてみましょう。

そうしたら、ドゥービー・ブラザーズに移籍したマイケル・マクドナルドとの声のブレンド具合が、以前のどのレコードより入念に調整されているのに気付いた。
いくらフェイゲン氏に褒め過ぎをたしなめられても、やはり聴く度に発見のあるアルバムですな。

※現在入手可能ななかで最高音質と思われるSACD盤。
廉価版です。
これは残っているうちに買うしかない。
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