このアルバムからボーカルのデイヴィッド・パーマー(前作のライナーではデヴィッド・パルマー表記)が脱退して、以降ほぼすべての楽曲をドナルド・フェイゲンが歌う(2003年の『エブリシング・マスト・ゴー』で1曲だけウォルター・ベッカーがリード・ボーカルをとっている)ことになる。
短時間のレコーディングとは言え、本作では豪華なゲストを迎えている。
前作でもパーカッションを叩いていたヴィクター・フェルドマンは、ジャズファンなら知らない人のないヴィブラフォンの名手で、本作では本職のヴァイブを叩いている。フェルドマンの紹介だろうか、大物ジャズベーシストのレイ・ブラウンがウッドベースを弾いている。
また、シングル曲『ショウ・ビズ・キッズ(Show Biz Kids)』ではリック・デリンジャーがギターを弾いている。
しかし、いずれも彼らの本領発揮とはいえないプレイで、どこにこんな大物たちを呼ぶ必要があったのかちょっとわからない。
むしろこのアルバムの聴きどころは楽曲そのものの出来の良さだと思う。
オープニングの『菩薩(Bodhisattova)』は、インド哲学科出身の自分には無視できないタイトルだが、当時のアメリカで多くの若者が神秘的な東洋思想にかぶれている様子を皮肉っている歌だ。ディランの歌詞をアルバムタイトルに戴いてシーンに出てきたバンドらしい楽曲じゃないか。
間奏部の掛け合いも楽しい。
フェイゲン/ベッカーが、「はじめてヒットを狙って書いた」と言う、シングルの『ショウ・ビズ・キッズ(Show Biz Kids)』は、B面曲『レイザー・ボーイ(Razor Boy)』も含めパッとしない。ヒットを狙ったという発言自体が彼ら一流のジョークだったんだろう。
続いて出したシングルの『マイ・オールド・スクール(My Old School)』が、スティーリー・ダンらしいヒット曲の公式に当てはまった佳曲だが、カップリングの『ヴレ・ヴ(Perl Of The Quarter)』こそが本作のハイライト。
西海岸に拠点を置きながら、東海岸の匂いをプンプンさせるこのバンドが、時々書く南部リスペクトの楽曲が僕は本当に好きだ。
スティーリー・ダン
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