レコードやCDを選ぶとき、針を落とす前から「これは絶対に名盤だ」と確信させてくれるジャケットに出会うことがある。
いわゆる「ジャケ買い」。
あらかじめアーティストの魅力を知っている場合、それを「純粋なジャケ買い」と呼んでいいのかは些か議論の余地があるかもしれない。しかし、そんな理屈がどうでも良くなる作品が、1980年代の小泉今日子のアルバムには存在する。
同時代のアイドル作品群の中でも一味違う輝きを放つ、小泉今日子さんの秀逸なジャケット2品をご紹介してみる。
1. 時代の空気をハダカにする快作『HIPPIES』
まず外せないのが、1987年にリリースされたアルバム『HIPPIES』。
サイケデリックでありながらどこか洗練された、この『HIPPIES』のジャケット。一度目にしただけで網膜に焼き付くようなポップさと、80年代後半の尖ったストリートの空気感が絶妙に同居しています。
なぜ、キョンキョンのジャケットは「一味違う」のか?
当時の女性アイドルのジャケットといえば、本人のバストアップ写真に綺麗なフォントでタイトルを添えるような、いわゆる「タレント写真」としての側面が強いものが主流だったと思う。
この『HIPPIES』は、小泉にとって初のハーフ・セルフプロデュース作品。そしてジャケットデザインは、当時新鋭の最先端音楽カルチャー誌だった『PATi PATi』(CBS・ソニー出版)のデザイナーチームへ直々に依頼されたものだった。
アイドルという枠組みを自ら飛び越え、第一線のクリエイターたちと「おもしろいアートを作ろう」と企むタフな姿勢。それこそが、単なるアイドル歌謡の枠に収まらない、時代をリードするエッジの効いたデザインを生み出した理由なのだろう。
Hippies +2(紙ジャケット仕様)

2. 有名作家たちをも魅了した、静謐な名ジャケット『Ballad Classics』
もう一枚、小泉今日子さんのジャケットデザインの卓越性を語る上で外せないのが、1987年のバラードベストアルバム『Ballad Classics』。
シックで絵画のような陰影、そして大人の女性へと変貌していく小泉の表情を捉えたこのジャケットは、まさに「飾っておきたくなるアート」そのもの。この美意識に射抜かれたのは、市井のファンだけではなかった。
村上龍と村上春樹を繋いだカセットテープのエピソード
1980年代半ば、作家の村上龍さんが、イタリア・ローマに滞在していた村上春樹さんを訪ねる際のこと。春樹さんから「日本語の歌のカセットテープを持ってきてほしい」と頼まれた龍さんが、お土産として選んだのがまさにこの小泉今日子さんの作品だったそうだ。
村上龍という日本の文学界を代表する知性が選ぶ記号的魅力とクオリティが、このジャケットと音楽には確かに宿っていたんだろう。
つまりジャケ買いだったんだよね、きっと。


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