2017年5月31日水曜日

あんまりフュージョンを聴かない僕も、未だにT-SQUAREという名前には違和感があるくらいお馴染みのTHE SQUAREの登場ですよ

お待たせしました。
みんな大好き、ザ・スクエアです。
今朝磨いたアルバムは84年の『ADVENTURES』




このアルバムの収録曲がサントリーホワイトのCFに使われ、サックス奏者の伊東たけしが、リリコンという電子サックスを吹いて出演したことで一般の認知度が急上昇したアルバムだそうです。
そのリリコンってのがこれです。


扱いにくい楽器だったようで、発売元も倒産していて今は入手できないようですが、その特許はヤマハが買い取ってウィンド・シンセの市場を作っていきました。

アルバムを聴いてみると、これぞフュージョン!という感じの、どこにも歪みのない端正なサウンドが聴こえてきます。
ミュージシャンのエゴを超えて、聴く側の楽しさとか切なさに寄り添ってくる音楽。
テクニカルな演奏でキメの多いフュージョンは、合奏の楽しさを知る楽器演奏者に強い感銘を与えますが、思えば、リスナーには日常的に楽器を弾かない人のほうが圧倒的に多いわけです。
超絶テクニックでは唸らせない、ひたすら完成度の高いインストゥルメンタル・ポップの需要は昔からあったはずで、この路線の結実として例のF1のテーマ曲としてまさに一世を風靡した感のある『TRUTH』に彼らがたどり着いたのは慧眼であり、必然だったと思います。

このバンド、今ではもうT-SQUAREという名前のほうが定着していますが、88年に『TRUTH』を全米発売する際、アメリカにSQUARESというバンドが先行してあったため「T」を付けたそうです。何のTなのかはわかりませんでした。TRUTHのTかなあ。
そもそものスクエアの由来も、地下鉄で名前を考えているとき、目に入った「マディソン・スクエア・バッグ」から発想したらしいです。
流行ったよね、マジソンバッグ。


さて、今回このアルバムを入手する以前から、知人からもらって83年までのベスト盤を持っていました。


二枚のアルバムを通して聴くと、それまでも平明なメロディラインという美点を持っているものの、『ADVENTURES』からサウンドの安定感のようなものがグッと増して、いい意味でのGood BGMという仕上がりになっているのがわかります。
で、このベスト盤に収録曲が無く、『ADVENTURES』の発売前に出た、狭間のアルバムに『打ち水にRainbow』というのがあります。

うち水にRainbow
うち水にRainbow
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THE SQUARE
ヴィレッジ・レコード (2001-11-14)
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当時スクエアがツアーでのバックバンドをつとめていた松任谷由実さんがトータル・コーディネーターとして参加されています。
このポップの完成度にこだわる偉大なアーティストとの経験が、次作 『ADVENTURES』の質感に影響を与えたことは間違いないでしょう。

『打ち水にRainbow』収録でユーミンさん作曲の「黄昏で見えない」は、のちにユーミン自身が作詞して「幻の魚たち」というタイトルで小林麻美さんが歌っているそうです。

ANTHURIUM~媚薬
ANTHURIUM~媚薬
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小林麻美

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この『ANTHURIUM~媚薬』というアルバムに入っているようですが、現在は廃盤…
そっちも聴いてみたい!


ADVENTURES
ADVENTURES
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THE SQUARE
ヴィレッジ・レコード (2001-12-12)
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2017年5月30日火曜日

あんまりフュージョンを聴かない僕が、ナニワ・エキスプレスの『MODERN BEAT』で思い出すのは

ナニワ・エキスプレスと東原力哉の名前は昔から知っていた。
仲間ウチでどんなドラマーがいいかという話になると、ジャズ方面の人から必ず名前のあがる人(バンド)だった。
チラと音も聴かせてもらったことがあるが、確かにドラムはスゴいが音楽はちょっと好みじゃないかな、と思った記憶だけがあった。

今回戴いたLPレコードの中に、84年の4thアルバム『MODERN BEAT』が入っていたので、今の自分にナニワ・エキスプレスの音楽がどう聴こえるのか楽しみしていて、今朝磨いて聴いた。


針が落ちて音楽が始まる。
確かにドラムのミックスが大きめになっているが、あれ?と思うほどスムースなジャズ。

1st『ノー・フューズ』の帯には
やわなフュージョンはもうたくさん
2nd『大宇宙無限力神』が
スーパー・ハード・ロック・ウルトラ・ジャズ・バンド
3rd『ワインド・アップ』には
このスピード、テクニックは世界のトップ・クラス
と書かれている。煽るねえ。

この4枚目の帯には、
パワフルでジャジィーなナニワ・エキスプレスの80年代サウンド
と書いてあって、おそらくこの80年代サウンドというところが本作のコンセプトなのかな、と思って聴き進めていく。

と、A3の「ORIENTAL MAKIN' LOVE」で、イメージしていた東原力哉の音がやっと聴こえてきた。ハイスピードなバスドラム。16ビートのダイナミックなフィル。後半に行くほど盛り上がって手数が増えていく。これこれ、これだよー。

はい、この人が東原力哉さんです。
まあでもごめんなさい。
やっぱり、音楽的には好みではなかったようです。
機会があれば他のアルバムも聴いてみたいです。
果たして煽り文句の通りのサウンドなのでしょうか。

それでも東原力哉さんの名前を見ると反応してしまうのは、同じサークル出身のシンガー・ソングライター松崎真人さんが組んでいたBirthday Suitというユニットのアルバムでドラムを叩いていたからなんでしょう。



「見てみたい」というジャジーな曲での参加ですが、8分超えの長尺曲の後半でAJAでのスティーブ・ガッドみたいなテクニカルで激しいプレイが聴けます。ギターの岩見さんもナニワ・エキスプレスの方ですね。
この『R.』というアルバム、大好きな『天使について』も収録されて名曲揃いの名盤なんですが、参加ミュージシャンもとても豪華で、鈴木茂さんや根岸孝旨さん、西本明さんや古田たかしさんなんかの名前も見えます。

R.
R.
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Birthday Suit
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で、関係ないんですが、ナニワ・エキスプレスのほうのアルバムライナーに気になるスピーカーの写真が。


80年代、日本のオーディオブランドがこぞって開発していた平面スピーカーのひとつで、SONYのAPM-55Wと思われます。スタジオのモニターにも使われてたんですねえ。



2017年5月29日月曜日

あんまりフュージョンを聴かない僕も、カシオペアにはグッとくるんだ

カシオペアの音楽を聴くと、フォークソング研究会という音楽サークルにいた大学時代を思い出す。
授業と部室スタジオでの練習の合間に、よく僕らはたまり場にしていた大学生協の二階でタバコを吸いながら時間を潰していた。
そこにはだいたいいつも誰かのエレキギターが一本や二本はあって、そこであまりギターが上手くない僕は本職のギタリスト諸氏にカシオペアの『ASAYAKE』のリフを教えてもらったりしたんだ。
そういえば、昔ザ・ベストテンに吉川晃司が出た時、ギターが上手いという証明に『ASAYAKE』のリフを弾いていたっけ。

1989年に就職して東京に出た時、初めてのクルマを買った。
黒い、いすゞのジェミニ1600GT“Handling by Lotus”だったけど、仕事が忙しく、乗るのはいつも会社の寮があった川崎の、深夜の多摩川沿いだった。

遠くに東京の灯りが見える漆黒の川崎の空いた夜道には、なぜかフュージョンがよく似合った。
サンボーンにジョー・サンプルに、今ではちょっと恥ずかしいケニー・Gとか。
で、どんな曲をかけても、不思議に大学生協二階の光景が頭に浮かんだから、それはきっと頭にカシオペアのサウンドが刻み込まれていたんだろう。
じゃあカシオペアも一枚積んでおこうと選んだのが『Mint Jams』だった。

そのサークルの先輩から最近戴いたLPレコードの山の中にはかなりの量のフュージョンが含まれていて、懐かしい『Mint Jams』もあったので、聴いてみた。


カシオペアはアルファだったんですね。
アルファは現在ソニーに販売権を移したので、CDは子会社のヴィレッジから出ています。

イギリスCBSのプロデューサーがカシオペアの大阪公演を観て感動して、このライブの素晴らしさを詰め込んだアルバムをヨーロッパで売りたい!と言ったのが、このアルバム制作のきっかけだったとか。
ヨーロッパで人気の出そうな曲、ということでセレクトしたのがこの初期の楽曲群で、印象的なテーマメロディを持つ曲が多いですね。
今回も聴いてみて、やっぱりタイムトリップしてしまいました。

その後に出た、『ジャイブ・ジャイブ』

このメンバーの顔イラストはギタリスト野呂一生氏の作とか。
ディランより上手いかも。

セルフ・ポートレイト(紙ジャケット仕様)
ボブ・ディラン
SMJ (2014-04-23)
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このアルバムはとにかく音が太いです。
特にドラムスの音がいい。
ロンドン録音で、それぞれのドラムへのオンマイクに加え、上方から二本のアンビエント・マイクを設置したそうで、 そういう効果が出ているのでしょう。
ずっと前にテレビ番組で、村上ポンタ秀一氏がアシスタントに、
そんな軽い音じゃダメだ!神保彰じゃないんだから…
と冗談めかして言っていましたが、確かにイメージは繊細でスクエアなドラミングというイメージだったので、このアルバムの音には驚きました。
迫力あります。

そして、『HALLE』ですね。


かなり後半のアルバムですが、テクニックが脂のっててコッテコテです。
キメキメです。
フュージョンって聴いてて、こういう「合奏の楽しみ」みたいなものがあるなあ、って思うんですよね。
でもこういうのって、やっぱり分かる人と分からない人が出てきちゃうから、 もしかしたら、逆にそういうところがフュージョンファンとそうでない人たちの壁なのかもしれなくて、Mr.Childrenの桜井さんなんかは、アルバム『Q』収録の『Surrender』という曲の中で、
大キライなフュージョンで 泣けそうな自分が嫌 イヤ
と歌ってたりします。

Q
Q
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Mr.Children
トイズファクトリー (2000-09-27)
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別に桜井さんがフュージョン嫌いっていうんじゃなくて、フュージョンには「泣けない音楽」っていうパブリックイメージがあるってことなんだと思うんですが、つまりそれって、「泣ける音楽」がいい音楽っていう認識が、その裏側にあるってことなんでしょう。

まあ、そういう一般論はどうでもよくて、自分自身にはフュージョン・ミュージックに、人生のある時期と強く結びついた思い出があって、 どこまでも音楽的愉悦を追求したようなカシオペアの楽曲でも懐かしい気持ちに心が動いて、今回もちょっと目が潤んだりしましたよ。

MINT JAMS
MINT JAMS
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カシオペア
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2017年5月22日月曜日

ジェントル・ジャイアント『ジェントル・ジャイアント』:あんまりプログレを聴かない僕がジェントル・ジャイアントを聴いたら

プログレのレコードは凝りジャケが多いが、 一度見たら忘れられないアルバムアートワークの筆頭がこれじゃないだろうか。
ジェントル・ジャイアントのデビュー・アルバム『ジェントル・ジャイアント』

今回実物を入手してはじめて知ったが、裏面と併せて一枚の絵になっている。


音は今回はじめて聴いたが、これはいいぞ。
美しいコーラスワーク。
プログレバンドに必須な変拍子やクラシカルな重厚さはもちろんあるし、そのうえポップセンスを感じるメロディラインに、アコースティックを楽器も多用され、トラッドフォークの匂いもする。
あと声質とギターのセンスがロックだ。

プログレッシブ・ロックっぽい、と感じる要素は、時にロックらしさを希薄にすることがある。このバンドでは、それが高い次元でバランスしているような気がする。

それらが結実した彼らの代表盤が、1972年の4thアルバム『オクトパス』
イエスの時にご紹介した幻想画家ロジャー・ディーンが手がけたアートワークも素晴らしい。
残念ながらLPは未所有である。

オクトパス
オクトパス
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ジェントル・ジャイアント
USMジャパン (2010-12-22)
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のちにポップな部分を前面に打ちだしたアルバムを発表し、アメリカのヒットチャートにも登場したりする。もちろん古いファンには賛否両論となったことだろう。
それがこの『ザ・ミッシング・ピース』

裏ジャケに例の顔がジグソーになって一枚ピースが欠けている。
そして表に失われたピースが。


実際に聴いてみると、この重層的なアレンジとハイテクニックなキーボードプレイをフィーチャーしたサウンドを「普通の」ロックンロールと呼ぶことはできないが、プログレとも言えないような気がする。
その意味で、これがジェントル・ジャイアントの到達点と言えなくもないわけだが、発表から40年経った今、ジェントル・ジャイアントのアルバムとして聴きたいと思うのはやはりファーストアルバムの方だと思う。
あくまでもプログレをあんまり聴かないリスナーの個人的な判断にすぎないが。

このアルバムの後、ポップ路線を継承した『ジャイアント・フォー・ア・デイ!』をリリースする。こちらもLPで所有している。
おなじみの巨人さんまでがポップなイラストタッチになっているが、しかもこれ、切り抜いてお面にしろと書いてある。
ご丁寧に、ジャケ裏には使用例が。
さらにご丁寧に、レコードの収納袋にモノクロのお面までついている。
 優しい巨人というより、お茶目な巨人である。


ジェントル・ジャイアント
ジェントル・ジャイアント
USMジャパン (2010-12-22)
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2017年5月20日土曜日

イエス『究極〜GOING FOR THE ONE』(1977):プログレをあんまり聴かない僕がイエスを聴いたら

先日先輩から戴いた100枚超のレコードコレクションには、イエスも一枚含まれていた。
『究極〜GOING FOR THE ONE』(1977)


イエスといえば、幻想画家ロジャー・ディーンというイメージがあるが、本作のジャケはヒプノシス。
レーベルもヒプノシスによるカスタム。
B1に収録されたコンパクトな『不思議なお話を』という曲がトップ10ヒットになったようだ。

イエスのアルバムは『イエスソングス』を持っているきりだったプログレ素人の僕には、各楽曲の出来を云々する鑑識眼はないから、このアルバムを聴いていても、安定のイエス・サウンド、くらいの感想しか湧いてこないが、それがジョン・アンダーソンというヴォーカリストの特別さが支えているものだということはわかる。

イエスソングス アトランティック70周年記念(紙ジャケット仕様)
イエス
ワーナーミュージック・ジャパン (2017-02-22)
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フロイド、ELPと聴いてきて、イエスの演奏のまさに「一糸乱れぬ」という感じの安定感が際立っているように感じる。
名盤として知られる『こわれもの』が、レコーディング時のバンドの状態から命名された(ウェイクマン談)というエピソードからは想像もつかないが、不和からのメンバー交代が多く、本作も脱退していたリック・ウェイクマンが復帰しての作品というから、どうやらイエスというバンドは仲良しバンドではないようで、だとするとこの安定感や一体感は、それぞれのプレイヤーの力量がきちんとバランスしているのが要因ということなのだろうか。

戴いたレコードの中にはリック・ウェイクマンのソロ時代の作品も含まれていたので、併せて聴いてみた。
『地底探検』(1974)である。


地底探険<デラックス・エディション>(紙ジャケット仕様)(DVD付)
リック・ウェイクマン
ユニバーサル ミュージック (2016-06-08)
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ジュール・ベルヌの同名小説を楽劇化したもので、ロンドンフィルとの共演。
リック・ウェイクマンのソロには、こうした文芸の楽劇化が多いらしい。
イエス屈指の傑作として知られる『危機』も、ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』からの着想で構成されたアルバムで、 ジョン・アンダーソンにもこうした文芸指向はあったようだ。


AB面各2曲ずつを配した全4曲。
歌詞と語り、そして大部分を占める音楽で物語を構成している。
要領よくまとめられたブックレットがそれを補っていて、パッケージ商品として非常に練られたものになっていて、今回ここに一番感心した。




究極
究極
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イエス
ワーナーミュージック・ジャパン (2016-02-24)
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2017年5月19日金曜日

エマーソン・レイク・アンド・パーマー『恐怖の頭脳改革』:あんまりプログレを聴かない僕がELPについて知っていること

さて今日は、エマーソン・レイク・アンド・パーマーの『恐怖の頭脳改革』を聴く。
まずはこのギーガー作のジャケットだ。

 プログレは凝りジャケ多いですよね。これを開くと、
メデューサが登場する。
と書くと、あたかも中央の丸い窓から見えていたメデューサの口が現れたように思うが、実際には、
このようになっていて窓も右側の扉と一体になっていて、しかも下の絵とは位置がズレている。どうしてこのような仕様になったのかはちょっとわからなかった。
レコードはこのように収納されている。
そして裏面にタイトル。
BRAIN=脳、SALAD=サラダ(ごちゃまぜ、のニュアンスがある。研究社『英和大辞典』より)、SURGERY=外科手術。これを『恐怖の頭脳改革』という邦題にまとめたレコード会社担当者のセンスがスゴいね。
言葉自体は、ドクター・ジョンの『ライト・プレイス・ロング・タイム』(1973)の歌詞から採られたそうだ。

ELP自身が設立したマンティコア・レーベルからの第一作ということになるらしい。
CDでは、この前作にあたる『展覧会の絵』を持っている。
忠実に作られた紙ジャケに収められたCDには、実際にはこの『恐怖の頭脳改革』以降使われるようになったELPの丸ロゴとマンティコア・レーベルのマークが印刷されていた。

しかし僕にとってのキース・エマーソンといえば、やはりこれ。


幻魔大戦 オリジナル・サウンドトラック
サントラ ローズマリー・バトラー
ダブリューイーエー・ジャパン (1998-05-25)
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CDはジャケ違うのね。
サウンドトラックの半分ほどと、テーマ曲『光の天使』をキースが書いている。
その『光の天使』について角川春樹が「賛美歌のようだ」とコメントしていて、さすがの慧眼(耳?)。
『恐怖の頭脳改革』一曲目に収録された『聖地エルサレム』も英国の賛美歌『エルサレム』を編曲したもので、教会音楽には深い造詣があるに違いない。

幻魔大戦という作品が自分にとって特別すぎて、サウンドトラックに参加したキース・エマーソンにも特別な感情を抱いていたわりには、なぜかELP自体にはハマりこんでいかなかったが、 2005年くらいだったと思うが自分のバンドを率いてキース・エマーソンが来日した時には観に行った。

噂には聞いていたが、後半、オルガンを倒して寝転がって弾くキース・エマーソンはまさに狂気。「誰もキースのようには狂えない」と言ったのは誰だったか。

『恐怖の頭脳改革』での歌唱はほぼベースとギターを担当するグレック・レイクによるもので、この人のアツすぎないが圧力のある歌が、キースの熱狂とうまく融け合っているのがこのバンドのいいところなのかも知れない。
で、グレック・レイクといえば、やはりコレでしょう。
今回の「素人が聴くプログレレコード」特集にはキング・クリムゾンが登場しない(アナログレコードを所有していないからです)ので、ここでコラボしてみた。

今日『恐怖の頭脳改革』を聴いたことで、昨日聴いたピンク・フロイドには英国トラッドフォークの影響があったのだと聴き取れるようになった。
ELPはどちらかというとクラシックの匂いがして、それをロックの語法に積極的にコンバートしていこうという指向が見られる。
二曲目の「トッカータ」がアルベルト・ヒナステラ作曲の「ピアノ協奏曲第1番第4楽章」のアレンジというのだから間違いないだろう。
ちなみにヒナステラはアルゼンチンのクラシック作曲者で、若き日のアストラ・ピアソラに音楽を教えた人らしい。
タンゴの枠を超えていったピアソラを育てた人らしく、アレンジの許可をもらいに家まで来たキース・エマーソンの演奏を絶賛したと伝えられる。

このアルバムには、プログレッシブ=進歩的と言いながら、伝統的古典音楽のエッセンスが横溢している。
この倒錯的な現象に、音楽というものの本質が隠れているような気がしてならない。
うまくは言えないが。


恐怖の頭脳改革(K2HD/紙ジャケット仕様)
レイク&パーマー エマーソン
ビクターエンタテインメント (2008-06-25)
売り上げランキング: 209,503