2015年3月23日月曜日

政治への不信こそが頭脳犯罪の温床なのだ〜キャプテン・フューチャー第四巻「脅威!不死密売団」

キャプテン・フューチャーの第四巻は「脅威!不死密売団」

本作での敵役は「生命王(ライフロード)」
飲むだけで若返りを果たす秘薬だが、一定期間を過ぎると急速な老化が始まりすぐに命を落とす恐ろしい毒薬である。

太陽系政府も事態を把握しており、全惑星、衛星に通達を出しているのだが、セールスマンに「ああ、それは政府の嘘なんですよ」と言われるとコロッと信じてしまう。
もちろん、人は信じたいものを信じる生き物であり、どうしても若い肉体を手に入れたい事情がある者は騙されやすいということもあるだろう。

しかし近代以降、政府は嘘を吐くものである、という疑いが民衆の心のなかに拭い難く巣食っていることが根底にあることは否定出来ないと思う。
マックス・ウェーバーも、官僚制的行政は知識によって大衆を支配し、専門的知識と実務知識を秘匿することで優越性を確保するのだと言っている。
いかに正当な理由があっても秘匿された知識が露見すれば、政府は嘘を吐いたと思われるのに、政治家個人の利益のために権利が濫用された結果であることがほとんどなわけだから、民衆を責めるわけにもいくまい。

そしてこのような不実な政治と民衆との間にある軋轢の間隙を縫って、頭脳犯罪は横行する。
我々の社会は本当に進化しているのだろうか。


それにしてもジョオン。


なぜ貴方はいつもいつも、事件が起きる度に敵の手に落ちるのか!
しかし、貴方が敵の手に落ちてくれないと、カーティスが本気にならないってとこはあるよね。
そう考えると意外と事件解決に貢献してるってことになるんだろうか。
いずれにせよ敵の手に落ちる美女が活劇的ヒロインの類型であることは間違いない。


さて、スペースオペラの中に本格ミステリの構図を持ち込むのもキャプテン・フューチャーの十八番だが、巻を追うごとに洗練されてくる。
伏線も巧みに張ってあるし、今回もけっこう犯人は意外な人ですよ。


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