あらゆる放送チャンネルに割り込んで、太陽系に迫る暗黒星の危機を警告した謎の怪人ザロ博士は、暗黒星の接近を防ぐ未知の力線を支配している自分に全太陽系の支配権を渡せと要求した!
天文学者たちは、暗黒星を調べ、そのあまりの質量の小ささに危険はないと保証し、政府はそれを発表し市民の動揺を抑えようとするが、天文学者たちが次々と失踪したため、彼らが逃げ出したものと見なした市民たちは政府への不信をつのらせ、暴動に発展。
太陽系政府首席はこの危機にキャプテン・フューチャーに出動を要請する。
失踪した天文学者を追っているうち、地球人のように見えていたザロ博士の手下の正体が毛むくじゃらの未知の人類と判明し、その姿を誤認させる未知のテクノロジーが冥王星由来のものであると突き止める。
舞台は冥王星に移り、ついに未知の文明を持つ種族を発見する。
前作と同様、今回も犯人は扇動者であった。
映像と錯覚を使って大衆をコントロールする犯罪はあまりに現代的で、予言的だ。
権威であるはずの科学者の言葉も簡単に無効化されてしまう。
思えば、僕らも水俣や石綿、放射能に至るまで「ただちに健康に影響はありません」という言説がひっくり返っていくのを目の当たりにしてきた。
もし現代にザロ博士が現れてとして、その煽動を一笑に付すことが出来ないどころか、政府発表につきまとう「騙されている」感への反発というカタチで自ら暴動に加わってしまうかもしれない。
本作でザロ博士に協力してしまう種族も、次々に惑星や衛星に植民していく地球という勢力への恐怖からのことだった。
文明の衝突は、いつも相手がこちらを誤解しているのだ、という「誤解」からはじまる。
この屈折した誤解は、自分自身への理解が足りていないことから生じるものだ。
だからいつも「無私」の境地にいるカーティスの言葉だけが、他者に届く。
残念ながら、どのような言葉で猜疑心に満ちたステュクスたちを太陽系連合に迎えられたのか、詳細は語られていないが、きっとそういうことなのだと思う。
本作には、宇宙時代を拓いたパイオニア、マーク・カルーが登場するが、次作で重要な設定が付加されて、単発の活劇だったキャプテン・フューチャーがその名の通りの「未来史」になるために重要な役割を果たすことを付記しておく。
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