59歳。
早すぎるよね。
TOTOのアルバムでレコードで持っているのは2枚だけ。
ハイドラとファーレンハイト。
ハイドラの名盤っぷりにはもう言葉もなく降参する他ないが、それでもTOTOでどのアルバムが好きか、と訊かれたら少し迷って「アイソレーション」と答えよう。
ファーギー・フレデリクセンというボーカリストが参加した唯一のアルバムで、おそらく最もルカサー色の薄いアルバムというのがその理由だ。
そしてこのアルバムが、マイク・ポーカロがベーシストとしてフル参加した初のアルバムということになる。
たった一枚で脱退してしまったファーギーの後に加入したのがジョセフ・ウィリアムスで、このメンバーで作ったアルバムが「ファーレンハイト」ということになる。
ルカサーはまたバンドの支配力を取り戻し、彼らしいバラードを書いて先行シングルとした。
ジョセフは器用なシンガーで、まるでずっとTOTOのメンバーであったかのように溶け込んだ。
その柔らかいボーカルを聴いて、僕は、今までのTOTOのカラーに抗って叫ぶように歌ったファーギーに惹かれていたのだと気がついた。
だから、そういう「アイソレーション」を経て作られた「ファーレンハイト」にはTOTOらしさが一段先鋭化したカタチで表れている。
それを最後の最後、ゲスト参加したマイルズ・デイヴィスがぶっこわす。
「らしさ」ってのはこういうことだぜ、っていうマイルズのメッセージ。
これが「ファーレンハイト」のハイライトだと思う。
故ジェフ・ポーカロがマイルズのレコーディングに参加した時、TOTOのレコーディングにも来てくださいよ、とお願いして実現したのだというから、さほど深い意図はなかったのだろうが、常にルカサーらしさとTOTOらしさという曖昧さの間を揺蕩うバンドに、で、どうしたいのよ、という問いを彼のトランペットが突きつけている。
Toto
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ジョセフともう一枚アルバムを作った後、ルカサーをリードボーカルに立てたシンプルなハードロックアルバム「キングダム・オブ・デザイアー」を作ったことが彼らの答えだったのだと思う。
これはいいアルバムだった。
そしてこれはジェフ・ポーカロの最後のアルバムでもある。
バンドの背骨だった彼のリズムを喪ってはじめて、TOTOはTOTO自身のあるべき姿を感じたのではないか。
TOTO
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そしてバンドは初代ボーカル、ボビー・キンボールを呼び戻し、「マインドフィールズ」を作るのだ。そして彼らは自由になった、と僕は思う。
ハイドラという初期の傑作を聴いて思うことは、演奏していて楽しい楽曲を作ろうと思ったんだろうなあということだ。
それこそがTOTOらしさだったということなんだろう。
そしてこのアルバムがマイク・ポーカロがフル参加した最後の作品になった。
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思えば、2008年に解散したバンドが再結集したのは、ALSと闘病するマイク・ポーカロを支援するための世界ツアーのためだった。
グラミーアルバムとなった「IV」の後、彼ららしさを見失って迷走する長い旅をベーシストとして支えたマイク・ポーカロを喪ったバンドは今度はどこへ向かうのだろう。
奇しくも「キングダム・オブ・デザイアー」を完成させて、発売直前に亡くなったジェフと同じように、マイクも新しいアルバム「XIV」のリリース直前に逝ってしまった。
マイクの旅の終わりを今は、名手ネイザン・イーストがマイクの代役を務めたこのアルバムを聴いて見届けるしかできることはない。
R.I.P Mike.
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