この頃深刻になっていたメンバー間の確執を微塵も感じさせない傑作ライブ盤『Rock
Of Ages』、ロックンロール回帰の『Moondog Matinee』、ディランのライブ『Before The
Flood』への参加を経てリリースされた75年作7thアルバム『南十字星』である。
キャピトル・レーベル。ロゴが新しくなっている。
結局のところザ・バンドの素晴らしさは三人の個性的な歌い手にある、とは昔友人に聞いたことだが、それを最大限に活かすソングライティングの妙と、ロビー・ロバートソンの唯一無二のギターと、変幻自在のガース・ハドソンのキーボードの技が見事に溶け合ってできているのだろう。
このアルバムには、そのザ・バンドの魅力が最大限に表現されている、と僕は思う。
アルバムに針を落とすと聴こえてくるあのアーミングの音。
『禁断の木の実』でのロビー・ロバートソンのギターは、このアルバムの唯一性を冒頭から決定付けている。
リチャード・マニュエルの唄う『ホーボー・ジャングル』は数ある彼の名唱の中でも一際滋味深く、『オフェリア』でのリヴォン・ヘルムの歌唱は、音楽の楽しさを体現するという意味においてザ・ウェイトの名演すら凌いでいるように思える。
リック・ダンコの歌唱にはいつも涙を禁じ得ないが、本アルバムで唄われる『同じことさ!』は、その集大成ではないか。
続く『ジュピターの谷』でのガース・ハドソンの多彩でポップなキーボードプレイは、ルーツ寄りの音楽性を、単なる懐古趣味でない独自性として際立たせている。
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