2017年9月9日土曜日

想い出のテレンス・トレント・ダービー:『Introducing The Hardline According To TTD』

1989年に就職で東京に出た。
その時のカルチャー・ショックは、釧路から進学で札幌に出た時の比ではなかった。
いろいろ驚いたことはあるが、一番びっくりしたのは「レコード屋がデカイ!」ということだった。
もちろん在庫数が多いということもあるが、カラフルなペンで書かれたポップがいたるところにあって、それまで知らなかったアーティストが解説されているのを読んで、手違いで必修科目を学ばずに世に出てきてしまったような心細さを感じた。
オススメにしたがって、僕は音楽を勉強し直し始めた。

そんなオススメアーティストの中に、Terence Trent D'arby(テレンス・トレント・ダービー)はいた。
ちょうどセカンドの『TTD's Neither Fish Nor Flesh』が売り出されたタイミングで、その横に「奇跡のファースト・アルバム」として置かれていた『Introducing The Hardline According To TTD』の俯いた表情に惹かれ、そちらを手に取った。

まったく知らなかったが、87年発売のそのアルバムは、よく売れたアルバムだったようだ。
確かにカッコいい。
ポップにはジャンルの壁を超え、云々とあったが、確かにロックン・ロールやらファンクやらといった定型に収まっていない気はするが、これは単純に純粋なカッコいいロック・アルバムなんじゃないかと思った。

かなり愛聴していたが、出張にもドライブにも、どこにでも持って行っていたのでいつの間にか見当たらなくなってしまった。
懐かしさだけが心に残っていた。


先日、毎年楽しみにしている「どうしん古本市」が開催されて、いつもように仕事が終わった後急いで駆けつけ無心でエサ箱を漁っていて、最後の箱の一番最後に、この『Introducing The Hardline According To TTD』を見つけた時は嬉しかったな。
真っ先に磨いて、ターンテーブルに置いた。



87年だからまだLPとCDが併売されていた時代だ。
これは輸入盤で9ドル98セントの値札が貼られ、石丸電気の袋に入っていた。
例の真ん中がへこんだ米国コロンビア盤。
以前、ブルース・スプリングスティーンの輸入ライブ盤でご紹介したことがある。

当時はパイオニアのアンプにLDとのコンパチプレーヤーで、オンキヨーの小型スピーカー。寮の六畳間で聴いていたのだから音質比較などできないが、リバーブの端まで聴こえるほど分離がよく、コーラスにドゥー・ワップ的なものを入れていたり、パーカッションにアフリカ的な音があったり、ギターにジャズ・ブルーズ的なニュアンスがあったりとこれは確かにジャンル・オーバー・フローな快作だ。
歌いまわしやサウンドメイキングの随所に、後のレニー・クラヴィッツに与えた影響の大きさを感じさせる。

そして、完全アカペラで歌われる『AS YET UNTITLED』はまさに魂の歌。
あの頃、この歌の良さはまったくわからなかった。
僕にも、世間にも、きっと彼の音楽は早すぎたのだ。

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