2014年11月8日土曜日

スタートレック&スタートレック・イントゥ・ダークネス

子供の頃、特に厳しい家だった記憶はないが、テレビに関しては一日に一プログラムのみと決められていた。僕は迷わず平日の夕方放送されていた「宇宙大作戦」を選んだ。


カーク船長が、エンタープライズ号に「コンピュータ」と話しかけて情報を得たりしているのを観て、これが「未来」だ!と思い、自分でもティッシュの空き箱の側面に「コンピュータ」と書いて、話しかけたりしていた。
もちろん「麻痺」モード付きのフェイザー銃も自作していた。

このTVシリーズと「カーンの逆襲」までの映画、そしてハヤカワから出ていた劇場版のノヴェライゼーションが僕の「宇宙大作戦」体験のすべてだった。

だからJ.J.エイブラムスのスター・トレック・リブートは、カーク船長のエピソードであるというだけで嬉しい。
実際に観てもっとうれしくなったのは、オリジナル(The Original Series)の俳優さんたちの細かい癖を新しい俳優さんたちが実に上手に再現してくれていることだ。
カーク船長のあのちょっと斜めに椅子に腰掛けるところなんか、ほんとうにそっくりでニヤニヤしてしまう。

しかしやはり時代は変わっている。
あの頃、規則第一主義のスポックと自由奔放なカークのやり取りはコメディ以上のものではなかったわけだが、新シリーズでは、この二項対立が<キャプテンの資質>をメタファーとして一貫して問われ続ける。

艦隊の誓いを破ってもスポックを救出するカークの姿。
カークを更迭しながらも自分の副官に据えるパイク。
クリンゴンとの開戦を目論み、密かに軍備を整える提督。
あらゆるものと引き換えに仲間の命を救おうとするカーン。

キャプテンの判断は、それが正しいかどうか、その時がこないとわからないものばかりだ。
そして、この世知辛い現実の世の中を生きる僕らにも、同じようなケースがしばしば現実の問題として付きつけられている。

グローバリゼーションによる競争の激化とコンプライアンス(企業の法令遵守)の狭間で、しわ寄せはいつも<人間>の部分に集まる。
抽象化された概念には弾性がないから。

かくして感情とルールは乖離し、利益と幸福は相反した存在となる。
いつしかトップは、責任を取るだけの存在となり、リーダーシップという言葉は舵取りから管理の意味合いに変わった。
つまらない世界だ。

残念ながら、宇宙=残された最後のフロンティアへ旅に出た彼らもこのような運命から逃れることはできなかったようだ。
つまり本当の意味での最後のフロンティアは自分自身の心にある、そういうことなんだろう。

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