2014年11月7日金曜日

マン・オブ・スティール

スーパーマンのリブートである。
バットマンのリブートで最高の手腕を見せたクリストファー・ノーランの製作で、監督は「オタク監督」で知られるザック・スナイダー。
ゆうきまさみの「鉄腕バーディー」に強い影響を受けたというアクション・シーンが、この監督らしさということか。

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それにしてもこの超人同士の戦闘、人間社会に与える被害が甚大すぎないか。
青年期のクラーク・ケントは石油採掘場で倒れてくる鉄塔を支えてヘリコプター一台を救うが、ゾットとの戦闘ではおそらく万単位の死者を出しているだろう。

しかもこの超人二人、打たれ強すぎて、戦闘そのものが無意味に見えてくる。
頭も使えよ!と思わずにいられなかった。


それでも全体としてはいい映画だと思う。
物語は、ゾット将軍のクーデターから始まる。
政治家の無策から惑星の資源を使い果たし、種族そのものの絶滅をなすすべも無く待つクリプトン星の主導権を軍事力で奪おうとするこのクーデターは、何度も何度も人類が繰り返してきた過ちの、あまりにも直接的なメタファーだ。

最後の希望として逃されるカル=エルは、若い太陽を持つ、かつてのクリプトンの植民地「地球」に送られた。カル=クラーク・ケント=スーパーマンは、その若い太陽の力をエネルギー源として超人の力を発揮する。

日本の戦争も含め近代の戦争の多くは、エネルギーの周辺で起きてきた。
埋蔵された有限の地下資源をあてにして暮らしていくのはやめて、新しい考え方に基づいた社会を構築すべき時期が来ているのではないか。
クリストファー・ノーランにとってのスーパーマンは、そのような考え方の象徴としてこの映画の<良心>を支えているのである。

だからこそ、クラーク・ケントは、青年期にかけて自分探しの旅をしている。
強すぎる力は、人を助けることもできるが、恐怖の源泉にもなる。
そもそも考えてみれば、美しい花も愛玩動物も自分を襲ってこないから愛情を注げるのである。
人は、 自分が“殺せる”ものしか愛することは出来ないのだ。
クラークを保留なしで愛してくれるのは生みの親と育ての親だけだった。
そしてクラーク・ケントは、自分探しの旅の最後に自分を理解し、愛してくれるレインを見つけた。
この手続を経てはじめて、スーパーマンは人類の未来を象徴する<良心>として機能できるというわけだ。

数多く製作されているリブーテッド・ヒーローたちは、みな苦悩するヒーローとして描かれている。
善か悪かのストレートな二分法で語れない現代の反映として。
力のレベルが異次元にあるスーパーマンの苦悩は、だから最大級に大きい。
愛は彼を救うのか。
愛は地球を救うのか。
その答えはまだ描かれていない。

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