もちろんフィクションだが、世界がアフリカを搾取しているのは疑いようのない現実だ。
僕はコーヒー豆を焙煎し、コーヒーを淹れることを生業とする者である。
コーヒー豆はエチオピアのアビシニア高原を原産地とし、赤道から南北にそれぞれ緯度で10度の幅で広がる“コーヒーベルト”で広く栽培され、国家的な産業となっている。
しかし彼らの生活は貧しい。
BBCが製作したドキュメンタリーを映画化した「おいしいコーヒーの現実」という映画を観ただろうか。
ウルグアイ・ラウンドで、貿易交渉を細かく細分化して、交渉団に人数を割けないアフリカ勢に対して西欧諸国は一国200名近い役人を投入して、いわば状況的欠席裁判を作り出した様子が描かれている。
不満を述べるアフリカ勢に「君たちにはよくわかっていないのだ」と言って聞く耳を持たない先進国の代表たちの姿には、本当に恥ずかしい気持ちになった。
アップリンク (2008-12-05)
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地図がもしあればアフリカの地図を見て欲しい。
いたるところ直線的な国境で区切られている。
西欧列強の都合で、地図の上に引かれた「線」だ。
地形的な境界で形作られる文化的な民族区分を無視した資源のための線引。
その資源の中には「人」そのものも入っている。
労働力のことを言っているのではない。
奴隷として人身そのものを貿易していたのである。
奴隷貿易のような非人道的な行いがそう長く続くはずがない。
長い時間がかかったが奴隷貿易は廃止され、植民地経営も傾いた。
アフリカの各国は相次いで独立するが、不自然な国境は内戦を呼んだ。
映画でもこうした搾取されるアフリカの悲劇をテーマにしたものは多い。
「ホテルルワンダ」ではベルギー植民地時代に管理上分離されたフツとツチが、独立後の経済悪化で対立し、ジェノサイドを引き起こした事件を描いてる。
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そしてシエラレオネの内戦で紛争ダイヤモンドの存在が戦火を拡大している状況を描いた「ブラッド・ダイヤモンド」。
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音楽家たちも搾取され貧困にあえぐアフリカを救おうと動いた。
1984年のバンドエイド(英)、1985年のUSA for Africa(米)はそれぞれチャリティソングヒットさせ、85年夏、英米同時開催の大規模なチャリティ・コンサート「ライブ・エイド」に結実する。
この2つのプロジェクトから、ライブ・エイド・トラストという基金が立ち上げられ、継続的なアフリカ支援を行ってきた。
このプロジェクトを精神的に率いてきたといえるボブ・ゲルドフは、USA for AfricaのWe Are The Worldのレコーディングにも立ち会っているが、あまりにもお祭り騒ぎ的なムードに激怒し、集まったアメリカのトップスターたちにアフリカの惨状を延々と語り、全員の眼の色を変えたという。
レコーディングの様子を収めた映像を見れば、それぞれのアーティストたちがその日特別なオーラを放っていたのがわかる。
ボブ・ゲルドフはバンドエイド・トラストが稼働していてもなかなか改善されないアフリカの現状を憂い、2005年にも大きなイベント「ライブ8」を実施する。
素晴らしいイベント。
挨拶に立ったボブ・ゲルドフが、「これは音楽が世界に勝利した瞬間だ」と述べるシーンには何度も泣かされた。
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2001年にル・カレによって書かれた「ナイロビの蜂」が、映画化されたのが、このイベントと同じ2005年だった。
それから、また10年が経とうとしている。
アフリカは未だ民主化の大きなうねりの中を正しい道を探しあぐねて彷徨っているように見える。
経済の成功で存在感を大きくしている中国が、マラウイやシエラレオネに大きな影響力を行使しはじめていることは、かの国々にどのような影響を及ぼすのだろうか。
前出の「おいしいコーヒーの真実」には、ODAなどの支援になによりまず<学校>を作って欲しいと住民たちが訴えているにもかかわらず、ODAのカネを自国の企業の利益に還元したい先進国が井戸か橋しか作らないという現実も記録されている。
政治の問題は民主化された世界では国民自身の問題である。
こうしている間にも、アフリカから搾取し還元されてきた豊かさを我々自身が享受しているのだ。
「ナイロビの蜂」の冒頭、レイチェル・ワイズ扮するテッサが、「なんのために国連を作ったのか」とイギリスの外交官に詰め寄るが、これは自身が活動家で、奮闘するほどに募る徒労感ゆえだった。
無関心な大多数がいるかぎり、すべての負担が活動家に集中し、結果アフリカは、グローバル経済がいっそうドライブする国益至上主義の犠牲になり続けるだろう。
主権者のひとりとして、世界に関心を持ち、正しく影響力を行使できるよう努めていきたいと思う。
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