2014年7月28日月曜日

纐纈歩美「Brooklyn Purple」のレコードが素晴らしい

最近出る輸入盤のアナログレコードのクオリティは、ハイクオリティを謳っているレーベルのものは良いが、廉価な復刻版は尽く全滅だ。
指紋がベタベタついているし、爪で引っ掻いたような傷も大抵の場合はついている。
2分の1の確率で周辺部には反りがあり、再生できないこともある。

外盤については、まだレコード製作のクオリティが高かった頃に作られた盤を中古で買うことにしていた。
しかし、日本で製作されたものはどれも傷一つなく、ピカピカ。もちろん反りなどない。さすがジャパン・クオリティ。

それで日本のジャズレコードの新譜を探していた。
最近の日本ジャズではオルガニストのKANKAWAさんが、復刻で高音質盤をリリースされていて注目されたが、あとは上原ひろみさんや山中千尋さんなどの女性陣が圧倒的に売れている。

で、ちょいとへそ曲がりの僕は、そうでない選択肢を探すわけだが、アイドルみたいな綺麗な子のレコードの音はなぜか毒にも薬にもならないようなエレベーター・ミュージックばかり。
その中で、お、と思う演奏を聴かせるサキソフォンがいた。

纐纈(こうけつ)歩美。
変わった苗字だが、森博嗣のミステリに出てきたことがあるので憶えていた。

彼女のサキソフォンは、昔のジャズメンの少し揺らいだ音を持っていて、リズムに対して少し遅れ気味の隙を見せる。古くて懐かしいジャズの音。
しかし、吹き姿を見ると、生真面目な姿勢であくまでも一生懸命吹いている。
きっと彼女は偉大な先輩ジャズメンの演奏を、遊びや揺らぎまで含めて一生懸命再現しようとしているのだろう。

探してみると、THINK! RECORDというレーベルから最新盤がレコード化されていたので買ってみた。


ブルックリン・パープル Brooklyn Purple [Analog]
纐纈歩美 Ayumi Koketsu
THINK! REOCRDS (2014-05-21)
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なかなか美しいジャケット。昔のレコードの方が盤の作りはいいが、ジャケットの印刷の美しさは現代の作品に完全にかなわない。
で、テレビなんかでみると纐纈歩美というアーティストはもっと地味で純朴な感じの子なので、これはアートワークの勝利ですな。いい仕事してます。
で、なぜかCDみたいな帯がついてて興ざめ。
レコード盤は別の厚紙ジャケットに収められていて、このあたりはよく分かっている感じ。一部のコレクターはこのような別の白ジャケを買って収納して、本ジャケへのダメージを極力少なくしているくらいだから、最初から製品もそうなっているのは合理的と言える。
裏ジャケ。いい写真だ。

肝心のレコードは、まさにカンペキのジャパン・クオリティ。今まで買ったレコードの中で最も美しい盤質。昔のレコードのようなツヤが素晴らしい。最近のは少しくすんでるもんね。

演奏は、テレビを見て感じたとおりのコルトレーン・マナーの細かいヴィブラートの利いたフレージングがいい。繊細なリズムの揺れは進化していて、この方向で自分の音楽を磨いていこうという意思のみえる演奏だ。

そのコルトレーンの曲を2曲カバーしている。
1曲目はKenny Burrell & John ColtraneのオープニングチューンのFreight Trane。
原曲よりも短く切り詰めて、ここからコルトレーン吹きますよ、という挨拶としてここに置いたように思える。

Kenny Burrell & John Coltrane (Reis)
Kenny Burrell
Prestige (2006-06-15)
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そして、この曲をイントロ代わりに、いよいよあの曲が吹かれる。
コルトレーン・ジャズのひとつの側面を代表する名盤Balladsから、It's Easy To Remember。
この曲は、コルトレーンのアルバムの中では箸休め的に吹かれた小品といった感触だが、纐纈はこの曲をA面ラストという重要な位置に置いて拡大し、充分に感情を載せたメロディを聴かせる。
名演と思う。

Ballads (Reis) (Rstr) (Dig)
Ballads (Reis) (Rstr) (Dig)
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John Coltrane
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音質のために、CDよりも二曲少ない収録になっているが、それでも外周部のカットがきつい。そのくらい音質重視のカッティングになっている。針を落とすのが難しいが、企画者の情熱に応えるべく、気合を入れて針を落とすしかない。
うまく針が入ったら、もうあとは長い歴史を持つモダンジャズの末裔のサウンドに身を任せればいい。


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