中学校を卒業する時、仲間に連れて行かれたジャズ喫茶で生演奏に遭遇し、その「熱さ」にやられた主人公が、お兄さんが36回ローンで買ってくれたセルマーのテナーサックスを毎日河原で吹いて、いつか世界一のジャズ・ミュージシャンになるぜっていうお話。
石塚 真一
小学館 (2013-11-29)
小学館 (2013-11-29)
同級生のロックバンドのヤツが、ジャズなんて大人のオシャレ系の音楽なんかやりやがって、っていう偏見から、彼に恥をかかせてやろうと、文化祭の自分のステージの前座の場を与えるんですね。
そこで彼が吹くのがコルトレーンの「カウントダウン」という曲。
なるほどこれしかない、っていう選曲ですね。
彼は一人で吹くわけだし、カンペキなアウェーの中で、最初からサックスの凄さでグッと掴まなきゃいけない。
2分半の短い曲で、しかも前半2分間マシンガンのように一人で吹きまくって、最後の最後にドラマチックな大きなメロディーに決着するこの曲はこのシチュエーションに最適だと思います。
ジャイアント・ステップスというアルバムの三曲目に入ってます。
これは、コルトレーンがだんだんカリスマっぽくなっていく転換点のアルバムで、シーツ・オブ・サウンドの追求とジャズという音楽の美しい部分との融合がうまくバランスしている良作だと思います。
ご関心があればぜひ。
ジョン・コルトレーン
ワーナーミュージック・ジャパン (2009-05-27)
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その昔、ジャズを題材にした漫画ってのは珍しくて、 専門誌の企画以外では細野不二彦先生のブロウアップ!くらいしかなかったんじゃないかなあ。
音楽漫画ってのが、昔から好きでした。
記憶にある一番古い音楽漫画は六田登先生の「その名もあがろう」ってやつ。
少年サンデーに連載されていたギャグ漫画で、歌を歌うとその衝撃で周囲のものを破壊してしまうというファンタジー設定がなんともはやなんだが、演奏シーンがとにかくかっちょいい。
もう現物が手元になく、お見せできなくて申し訳ありません。
主人公の「森あがろう(=もりあがろう、ね)」の使ってるギターがストラトキャスターなんだけど、その絵が本当にリアルにかっこいい。
素人同然の状態から、情熱と場数でいい演奏になっていく感じには、子供心にも音楽っていいなあ、と思わせて忘れられない作品です。
次に記憶にあるのが、やっぱTO-Yでしょう。
これもサンデーっすね。
こういう音楽漫画の扱い方のあたりがサンデー派とジャンプ派を分かつ部分だったかもしれませんな。
もろ吉川晃司の哀川陽司とか、サンプラザ中野くんをモデルにした桃ちゃんとか、現実の芸能界を意識した構成で、どちらかというと音楽漫画というよりは腐敗した芸能界を描いた漫画って感じだったかもしれない。
でもやっぱり最初期のアマチュア時代のGASPでのライブシーンにはぞくっとしましたね。
少年漫画系の音楽モノで忘れてはいけないのが、コータローまかりとおる!の、第6部。
コミックスでは36巻から41巻にあたります。(KCスペシャルでは19-22)
極端流道場に居候することになった超絶ギタリストのスティーブ・パイwが、コータローのリズムセンスに気付き、バンドを組むことに・・という無理矢理な設定なのですが、バトルともうまく絡んで、実に面白いのです。
音楽漫画は少女漫画にもいい作品がたくさんあって、槇村さとる先生の「ダイヤモンド・パラダイス」好きだったなあ。
槇村 さとる
集英社
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女性ボーカルのバンドにふらりと身元不明の男が近づいてきて、最初ローディーとして働くが、風邪で高音が出なくなったボーカリストを助けて、信じられないくらい見事なハーモニーを披露して、バンドにもぐりこむ。
そのツインボーカルの魅力でバンドの人気が出てのし上がっていくが実は・・というお話。
楽器とかが精密に書かれているわけではないんだけど、バンド内の確執とか、あるあるーって感じでリアル。
練習風景とかで、作曲者がドラムにリズム教えるんだけど「うぱら、うぱら、たた、ちーちー」とか言いながら教えてて、でもそんなんじゃ伝わらないのね。
これホント、よくわかる。作曲者のひとりよがりなイメージってのは伝わらんのですよ。
それにもし伝わったとしても、それでいい曲になるとは限らない。
結局まかせちゃって、そうきたかー、とかやってるほうが結果的に絶対楽しいし、仕上がりもいい。
あと、少女漫画はだいたい、作家さんが書いたオリジナルの歌詞が出てきて、要するにポエムなんだけどけっこうこれが音の鳴らない漫画という表現に音楽の情景を載せるのに貢献してると思うんですよね。
予備校時代、寮に住んでたんだけど、この寮には、誰が始めたのか知りませんが素晴らしい習慣があって、みんな読み終わった漫画雑誌を捨てずに共用の洗面所の棚に置いておくんですよ。
だからこの頃、スピリッツとか、ヤンマガ、ヤンジャンあたりの雑誌は不自由なく読めました。
で、僕はAKIRAが読みたくてヤンマガを楽しみにしてたんです。
それで、同時期連載されていた岡田ユキオ先生の「THE 13thSTREET レディオクラブ」っていうパンクロック漫画に出会ってしまうわけです。
これもかっこよかったなあ。
バンド名がデストロイド・モア・ピストルズとか、おい、って感じなんですけど、ギタリストが有名バンド出身なんだけどそれを隠してるっていう設定で、そうそう、そこがしっかりしてるとバンドってそれだけである程度成立したりするよね、と経験上頷いてみたり。
で、この漫画は青年漫画系にはめずらしく、歌詞ぽえむ連発です。かっこいいです。
作者岡田ユキオさんのこの次の作品「リフレイン」っていうのもストレートなロック漫画じゃないんですが、主人公がギタリストで、彼の音楽的生活ってのを描いてかっこいい漫画でしたね。
現在はちょっと違う方向の漫画をかいていらっしゃるようです。
それとも同姓同名の別人かしら。
で、いよいよ「BECK」の登場となるわけです。
ハロルド作石やっぱ天才や。
単行本34巻にわたる大長編が、遊びのエピソードなく疾走していく。
ハロルド 作石
講談社 (2013-12-12)
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ニューヨーク・マフィアだって出てくるし、レッチリもどきのスーパーグループだって知り合いだ。
ヨシキによく似た男が日本ロック界を牛耳っているし、もちろん恋もある。
でもやっぱりこの物語で一番気になるのはコユキくんの「声」なんですよね。
歌い出しただけで、聴いている全員が釘付けになってしまうのは、いったいどんな声なんだろう。
俺も欲しいなあ、そんな声(真剣)。
この作品はアニメ化されて、つまり実際に音楽が付けられました。
楽曲はヒダカトオルのビート・クルセイダースを中心に充分な数が作られて、2枚のアルバムとなった。
どちらも素晴らしいロック・アルバムになっている。
一聴の価値のあるアルバムと思います。
で、「BECK」以降、ここまでマイナー、または難しいと言われていたこのジャンルは百花繚乱の様相を呈します。
「けいおん!」や「のだめカンタービレ」のヒットで、音楽漫画というジャンルは揺るがぬ主要ジャンルのひとつとなったといえるでしょう。
最近だと映画化も決まった「日々ロック」がBECKの正統的後継漫画と言えるかもしれません。
現在進行中のクラシック系では、なんといっても「四月は君の嘘」が最高。
取り扱うクラシック曲そのものに膨大なエピソードがどっさり乗っかっているわけで、それを引用してつくり上げるストーリーはいろんなところからこちらの涙腺を容赦なく攻撃してきます。
1ページごとに泣けてくる。
まいるなあ。
新川 直司
講談社 (2011-09-16)
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吹奏楽の漫画なんてのもあります。
少年ジャンプからNEXT誌に移ったばかりですが、ソウル・キャッチャーズという作品。
なぜか音がカタチになって見えるという特殊能力を持つ青年が、それゆえに音楽嫌いになっているわけですが、その能力で誰かを救えるという経験を経て、吹奏楽部の指揮者を目指すというお話。
なかなか面白いです。
神海 英雄
集英社 (2013-09-04)
集英社 (2013-09-04)
変わり種では、ウェブ漫画から人気に火がついて出版にこぎつけた木村リノ先生の「あじさいタウン」でしょうか。
→ウェブ版はこちらからご覧いただけます。
大学の音楽サークルでプロになる仲間を探す二人のバンドマン。しかし意外と才能のある奴は少なく絶望しますが、二人で路上ライブをやり、メンバーを募集します。そこで出会ったのが、ちっこくて可愛いが超絶テクの美少女ベーシスト。さっそく彼女をスカウトしてみると、どうしてもあるギタリストと一緒じゃないとバンドには入れないという。
スタジオに連れてきた彼はなんと宇宙人!宇宙的難解フレーズを手に入れてバンドは躍進する!みたいなお話。
超絶面白いです。
もう宇宙人のヌっさんの演奏シーンの奇怪さも、ベース弾くと豹変しちゃう実々子ちゃんの弾き姿も、それを戸惑いながらも包み込んでロックにしてくリツオと正も本当に最高です。
ところが、2012年に1巻が出て以来、待てど暮らせど2巻が出ないんだなー。
待ってますよ!木村先生。
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